原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

<学習用>国籍確認請求事件(最判平成27年3月10日)

2016-02-24 | 憲法的内容

【判例紹介】最判平成27年3月10日(国籍確認請求事件)

 

*受験向けにコンパクトにまとめてみました。

 

<国籍法の内容の紹介>

(12条)

出生により外国の国籍を取得した日本国民で「国外で」生まれた者は,戸籍法の定めるところにより日本国籍を留保する意思表示をしなければ,その出生の時にさかのぼって日本国籍を失う。

(17条)

12条の規定により日本国籍を失った者で20歳未満の者は,日本に住所を有するときは,法務大臣に届け出ることによって日本の国籍を取得することができる。

 

<事案の概要>

日本国籍を有する父とフィリピン国籍を有する母との間に出生した嫡出子として,フィリピンで出生し,フィリピン国籍を取得したXらが,出生後3か月以内に父母等によって日本国籍を留保する意思表示がされず,国籍法12条の規定によりその出生の時から日本国籍を有しないことになったため,同条の規定は憲法14条1項に違反し無効であると主張した事件。要するに,国内で生まれた子と国外で生まれた子とで差別されているとの主張がなされた。

 

<判旨要約>

 合憲性の判断基準は,いわゆる合理的関連性の基準。

 目的は,実体を伴わない形骸化した日本国籍の発生の防止,重国籍の回避でこれには合理的根拠がある。

 手段として,①出生の届出をすべき父母等による国籍留保の意思表示をもって我が国との密接な結びつきの徴表とみることができること,②その意思表示の期間も3か月と配慮されていること,③3か月以内に国籍留保の意思表示がなされなかったとしても日本に住所があれば20歳に達するまでに法務大臣に対する届出により日本国籍を取得することができるとされていること(国籍法17条1項・3項),からすると手段も不合理とはいえず,立法府の合理的裁量を超えるものではない。

 よって,合憲であり,請求棄却。

 

<コメント>

 憲法10条は,「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」としており,いかなる者を日本国民として国籍を付与するかは,立法裁量事項である。それゆえ,一般論として,14条違反以外の構成は難しく,また,合憲性判定基準は,厳格な基準を採用しにくい。

 基本的に国籍は,我が国と強い結びつきを有する者に与えられる。父又は母が日本国民であっても,国外で生まれた場合は,一般的に我が国との結びつきは弱くならざるを得ない。そうであっても,国籍法は比較的容易な方法で国籍を付与する仕組みをとっており(国籍法12条,17条),これらの事情を考えた場合,やはり合憲判断になるか。

 


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