原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

少年事件手続について

2011-01-26 | 刑訴法的内容
今日は,何と2度寝(涙)9:30までに登庁にもかかわらず,8:45に起床。急いで支度をして家裁に向かい,何とか時間には間に合ったものの,ベルトを忘れて今日はベルトなしの1日(涙)午前中は,離婚調停と少年審判の傍聴。午後は,調査官事務に関する講義。その後,明日提出の起案(少年事件の処分起案)と確定申告のための領収書整理,夕飯食べて,つい先ほど帰宅。

さて,今日は表題の通り。刑事系の短答でちょろっと出る,少年法(少年事件の手続)。まとまった時間をとって勉強する人は,ほとんどいないでしょう。条文を素読するのがいいとは思いますが,それをしてもあまりイメージがわかないでしょうから,今日は,試験対策上,これだけ読めば大丈夫「だろう」ということを趣旨として,少年事件の手続を具体的に書いてみます。条数は,特に断らない場合,少年法を指します。

まず,少年審判の対象となる少年は,刑事事件を犯した少年に限られません。犯罪少年(行為時に14歳以上で刑罰法令に違反した者),触法少年(行為時に14歳未満で刑罰法令に違反した者),それから,「ぐ犯少年」(保護者の正当な監督に服しない者,将来犯罪を犯すおそれのある者)です(3条)。この「ぐ犯少年」の存在は押えてください。

事件の端緒は,通常の刑事事件と大筋において,同じです。警察が逮捕して,検察官に送致して,という流れを経ます。ここで,少年法の1つの特徴である,「家裁全件送致」(42条)の場面となります。検察官は終局処分をすることができず,全て家裁に送致せねばなりません。検察官だけでなく,司法警察員から直接送致される場合もあります(41条)。なお,少年事件では起訴状一本主義に相当する規律はありませんので,一件記録がどーんと送られてきます。

そのようにして家裁に送致された事件は,「調査」が始まります。裁判官が行う「法的調査」,調査官が行う「社会調査」です。後者ですが,少年が事件を起こした経緯や,家庭環境,反省の程度などを調査します。

(主に)重大な事件の場合,警察が逮捕した時から,大人と同じく,身柄が取られている場合があります。家裁が事件を受理して以降の身柄の確保,大人の場合の勾留にあたるものが,観護措置(17条)。大人と同じく,罪証隠滅・逃亡防止等のための身柄の確保の目的もありますが,少年事件の観護措置では,少年の行動を観察し心身の鑑別を行う,という目的もあります。この観護措置に用いられる施設が,鑑別所です。原則2週間の収容ですが,一定の場合は更新ができます。観護措置を行う場合は,供述拒否権の告知をせなばなりません。身柄をとるわけですから,それはそうですよね。

さて,調査の結果,非行事実の存在が認められないとか,要保護性(少年に対して保護処分を行う必要性)が認められない場合は,審判不開始の決定がされます(19条)。軽微事件,十分に反省している,などの場合に,「もう審判に付さなくてもよかろう」といった場合です。大人で言うところの,不起訴のようなイメージです。

そうではない場合(調査の結果,審判条件,非行事実,要保護性の蓋然性が認められるとき),審判過程に入ります。審判は,非公開で行われ(22条),人定質問や供述拒否権の告知,非行事実の要旨の告知といった手続は,大人の場合と同じように進められます。その冒頭手続類似の手続が終わると,要保護性の審理です。「どうしてそんなことをやったのか」「自分がやった行為はなぜいけないか」「これからどうしていけばこのような過ちを繰り返さないか」などの質問がされ,それを踏まえて,即日,処分の言渡しがあります。

その終局処分処分ですが,軽いものから順に主なものを挙げると,①不処分,②保護処分,③検察官送致,が主なものです。②保護処分には。保護観察,児童自立支援施設送致,少年院送致,があります。③検察官送致は,法定刑が禁固刑以上で,刑事処分相当と判断される場合です。いわゆる「逆送(家裁に送致された事件を,検察に送致し返す)」と呼ばれるものです。なお,16歳以上の者が故意に人を死亡させた場合は,原則として逆送しなくてはなりません(20条)。逆送された事件については,検察官は原則として起訴しなくてはいけません(45条5項。強制起訴)。

流れとしては,こんなところでしょうか。あと,細かい点を確認すると,少年事件も当然,弁護人(少年事件では「付添人」という)を付すことができます。国選付添人制度もあります。そして,少年審判は当事者主義的構造を取らず,職権主義的に進められます。それゆえ,伝聞法則の適用もないとされています。他方,自白法則の適用はあるとされます。保護処分をするには非行事実の認定をせねばならず,それにあたっては,自白法則の趣旨が妥当するのです。

このあたりまで押えておけば,司法試験対策としては十分であると思います!

<参考文献>

澤登俊雄「少年法入門<第4版>」(有斐閣ブックス)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
羨ましいです~ (かわうち)
2011-01-28 15:06:50
少年事件の傍聴、羨ましいです。
私は少年法好きです(笑)学部の頃かなり楽しく勉強して、教授のところに通いつめました(笑)
だいぶ前に読んだ井垣康弘さんの「少年裁判官ノオト」が面白かったです。
司法試験の勉強にはなりませんが・・・!
いつか留岡幸助の作った北海道の児童自立支援施設に行ってみたいです(入所したいと言うわけではないです)
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Unknown (はら)
2011-01-28 21:48:31
羨ましいでしょ~(笑)

「少年裁判官ノオト」というやつは知らないのですが,今回の家裁修習を通じて,大いに興味をもったので,ちょっと色々な本でも読んでみようかな,と。

児童自立支援施設,残念ながら年齢的に入所は不可能ですなぁ。ただ,選択修習の中で,少年院や児童自立支援施設の見学ができるので,その時を楽しみにしておくべきでしょう。そういう機会でもないと,中には入れないもんだと思います。

少年法を勉強してあると,家裁修習の時には非常に大きなアドバンテージです。修習生は,少年法をほとんど知らない状態で家庭裁判所に乗り込みました(笑)
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