原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

要証事実とは何なのか?

2011-12-28 | 刑訴法的内容
26日は,修習中にお世話になった関係各所への御礼参りと謝恩会。久しぶりの広島は,実に懐かしい感じがしました。弁護士の某先生にごちそうしていただき,実に楽しい夜でした。謝恩会も終わって,これで広島での修習も全てのイベントが終わったんだなと思うと,ちょっと寂しくもあり…。もっとも,いつまでも修習生気分じゃいかんのは百も承知なので,ぱっと切り替えてやっております。

さて,表題の件です。要証事実というのは,刑事訴訟法に特有の概念ではありませんが,司法試験的には刑事訴訟法において重要ですから,その前提で書きます。

田口先生の教科書(ちょっと古い版ですが,第4版補正板・343頁)の定義は,概要,以下の通りです。

要証事実は,実体法的事実と訴訟法的事実からなる。実体法的事実は,①犯罪事実(構成要件該当性等)と②犯罪事実以外の事実(法律上犯罪の成立を妨げる事実等)からなり,訴訟法的事実は,①訴訟条件たる事実,②訴訟行為の要件事実,③証拠能力・証明力を証明する事実,などからなる。

実務上は,上記に加えて,犯人性(被告人が犯人であるかどうか)を示す事実も重要な要証事実の1つとなります。

これだけではピンと来ないと思うので,百選(第9版)・86事件の解説部分(180~181頁)で補足して説明します。

「要証事実の語は,…略…,ある証拠による直接の立証事項を示すものとして用いる。証拠の要証事実は,一義的には,その取調べを請求する当事者が示す立証趣旨(証拠と証明すべき事実との関係)に沿って把握されるべきであり,このことは,証拠調べの主導権が当事者に委ねられていることからも妥当と思われる。しかし,証拠決定の権限を有する裁判所は,必ずしもその主張に拘束されるものではない。…略…。立証趣旨に従うことが事案の争点との関係で周辺的というべき事項に関わる証拠調べの実施をもたらす場合などには,裁判所は,審理の実質化・充実化を図る観点から,例外的に,立証趣旨に立証趣旨に沿うことなく,審理における争点や証拠の集積状況を踏まえて,当該証拠により実際に立証されるべき事実を把握することも許されよう。」

以上の一般論を踏まえて過去問の検討をすると,理解が深まるかな,と思います。

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1 コメント

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共謀メモ(非伝聞)の分類&②論文への記載 (Unknown)
2012-01-22 21:41:03
はじめまして、今年の合格を目指して三重県で頑張っている受験生です。
①共謀メモ(非伝聞)の分類&②論文への記載について質問があります。

①共謀メモ(非伝聞)の分類
被告人が犯行に加担したことを否認している場合において、犯行計画メモの存在を立証趣旨として、メモに記載された事項と実際に実行された犯行様態が一致する旨を証明することにより、メモ中に被告人と思われる人物の役割分担の記載があることから、被告人の犯行への関与を推認する場合
→メモ記載と犯行様態の一致という事柄を要証事実とした非供述的使用であるとみることができる

↑去年のスタ論の解説から抜粋。
たとえば『Aが1月23日15時に包丁をもって銀行に押し入って金を奪う。Bが銀行の外で金を受けとってマンションに運ぶ。』という内容の共謀メモで、Bが否認している場合。
この場合、今までは共謀メモを物証として使用する場合だと思っていました。
昔何かの参考書で『共謀メモを物証として使用する場合』だと読んだため、それを疑いもなく使っていました。
内容の真実性が問題なのではなく、こんな内容の共謀メモが存在していることが問題になっているため物証という説明だったと思います。
もっとも、今日この場合は書証なのかな?とふと思いました。
そこで、少し考えてみましたが、書証だとしても証拠書類なのか証拠物たる書面なのかが判断できませんでした。
というのも、内容の存在のみが問題となっているのなら証拠書類だと思うのですが・・・
たとえば、きれいな字で清書されているのと殴り書きの場合、殴り書きの方が共謀の過程でメモにしたことが推認されやすいのかなと思い、その場合だと証拠物たる書面だと考えました。
もっとも、今これを書きながら思いましたが、あくまで要証事実はメモ記載と犯行様態の一致なので、書面の内容自体が問題になるのであって証拠書類のような気がしました。
綺麗な字で清書or殴り書きが問題になるのは作成者が共謀の過程でメモを作成したことを要証事実とした場合であって、メモ記載の内容は証拠書類として朗読(305条)ば分かりますよね。。
実際は、この場合には共謀メモはどれになるのでしょうか?

②論文への記載
去年のスタ論ですが、共謀メモを物証として使う場合を書いたら、採点者に『物証?』と書かれ、コメントで『内容の真実性が問題となるので伝聞です。』と書かれてしまいました。
おそらく、伝聞を理解してないから物証と書いたと思われてしまったみたいです。
一番上に書いたように、スタ論の解説にも物証(?)として使う考え方が書いてあったので、考え方としては間違ってないと思います。
もっとも、実務的に見て、また試験的に見てこのような考え方を書いていいものでしょうか???

共謀メモの内容は『Aが1月23日15時に包丁をもって銀行に押し入って金を奪う。Bが銀行の外で金を受けとってマンションに運ぶ。』で、確かにAがAが1月23日15時に包丁をもって銀行に押し入って金を奪った場合、おそらく共謀メモに書いてあるようにBが犯行に関与したんだなと推認できることは分かります。
ただ、実務でこんな考えで通用するのかな?とも思います。

以上2つです。
お時間があるときにでも、よろしくお願いします。



う。Bが銀行の外で金を受けとってマンションに運ぶ。』で、Aが
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