原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

刑事裁判の判決から学ぶ

2012-04-09 | 刑訴法的内容
刑事裁判の判決,実際にはこんなふうに言い渡されます。刑事訴訟法の短答対策です。

==判決例==

「被告人,証言台の前に立ってください。では,あなたに対する判決を言い渡します。」

「主文。被告人を懲役2年6月に処する。」

「理由。被告人は,~~という理由から,××をしたものであり,その責任は重い。公判において,反省の言葉を述べているものの,被害者に対して直接謝罪の意を示さず,また,本件犯行に及んだ動機は身勝手極まりないものであり,酌量の余地はない。よって,主文の通りに判決する。」

「なお,この裁判に不服がある時は,今日を含めて15日以内に,控訴することができます。その場合は,控訴申立書をこの裁判所に差し出してください。以上で,被告人の裁判を終わります。」

==判決例おわり==

さて,まず,判決主文と理由のどちらを先に言うかですが,法に規定はありません。一般的には,主文→理由の順でしょうか。死刑判決の場合にはまず理由から読んで,最後に主文が言い渡されると言われます(私自身は死刑判決に立ち会ったことがないので本当のところはわからないのですが…)。ただ,ポリシーとして,常に理由から先に述べる裁判官(裁判長)もいるようです。私が修習中に出会った裁判官はそうでした。結論として,どちらからでも構わない,というのが正解です。

そして,最後の「なお,この裁判に不服がある時は,①今日を含めて15日以内に,控訴することができます。その場合は,控訴申立書を②この裁判所に差し出してください。以上で,被告人の裁判を終わります。」に注目してください。

控訴期間は14日では?と思う方もいるでしょう。その通りです(373条)。ただ,刑訴も初日不算入ですので(55Ⅰ本文),判決の日からカウントすると,15日以内に控訴すればよい,ということになります。気の利いた裁判官は,このように,「今日も含めて15日以内」と言ってくれます。

また,控訴申立書は,東京高裁に持って行ってはいけません。静岡地裁に出します(第1審が静岡地裁の場合)。これ,弁護士になってみるとありがたい規定です。もし,高等裁判所に出さなければいけないなら,(静岡の弁護士は)自ら東京高裁に行くか,郵送するか,という方法を採らねばなりませんが,それはちょっと…。行くのは負担だし,郵送では心配だし…。最寄りの静岡地裁に出せばいいのであれば,直接出して,その場で控えに受付印も押してもらえるので安心です(押してくださいと言えば,押してもらえる)。

今日は,ここ数年の司法試験で流行りの,「実務を知ればすぐわかる」事柄についてちょっと書いてみました。実務家になってみると,刑訴(民訴)の短答は,非常に簡単に感じるものです(そう感じる問題が多い)。司法試験は実務家登用試験なんだなぁ,ということを実感します。



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