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BL小説・風のゆくえには~その瞳に・裏話3

2018年03月09日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  その瞳に*R18


「………痛っ」
 目覚めた途端、首の後ろのズキズキする痛み、腹のあたりの鈍い痛み、吐き気、床の固い感触……、とにかく、ありとあらゆる不快なものに襲われた。

「………なんだ?」
 ぼんやりと天井を見上げる。今、俺は床に転がっていて……ここは俺の滞在するホテルの一室で。ベッドルームとリビングルームの境目あたりで……

「………?」
 思考を遮るように、ピンポーンと呑気な感じのインターフォンが遠くから聞こえてきた。誰か来たのか……?
 壁に掴まりながら立ち上がり………、リビングルームのテレビに繋がれたビデオの線が視界に入って、ハッとした。

(そうだ。ビデオをみせてあげて、それで……)

 記憶を辿っていく。あの時、彼とソファに並んで座って、15分ほどの映像を一緒にみて、その話を少しして、それから……



「こっちがベッドルームになってるんだよ」

 そう言って誘導すると、彼は「へえ~~」と感心したような声を上げて、

「あ、この仕切りの先が寝室なんですね? すごいなあ。こんな大きなホテルの部屋、初めてきました」
「そうなんだ?」
「こんな風に部屋が分かれてるなんて……、わ!すっげー大きいベッド!」

 スライドドアの先の、通常のキングサイズよりもさらに大きめのベッドを見て、はしゃいだように言った彼。子供みたいで可愛い。

「ここで一人で寝るなんて、贅沢ですねえ」
「うん。だから今日は慶君も一緒に、ね?」
「あー、いやいやいや」

 あはは、と笑いながら手を振った彼。

「だから、そこまで甘えられませんって」
「甘えてよ」
「え」

 振っている手をギュッとつかむと、彼が、きょとん、とした表情をした。

「真木さん?」
「全部、俺にゆだねて?」
「え?」

 そのキレイな瞳が何度か瞬いた。
 期待してここに来たくせに……。そんな駆け引き、面倒くさいからいらないよ。

「君は本当に美しい。君こそ、俺の隣にふさわしい」
「え……と、あの?」

 彼が戸惑ったように、一歩後ろに退いた。空いた分の距離を即座に詰める。

「慶君……」
「……わっ」
「え」

 顔を寄せようとしたのに、しゃがみこまれて、空振ってしまった。おいおい……

「慶君?」
「え?! いや、あの……何を言われているのか……」

 頭を抱えている彼。そんなカマトトぶらなくても……同級生の親友君とやることやってんだろ?という言葉は胸にしまって、ニッコリと微笑みかけてやる。

「ねえ………、慶君って、ドライでイッたことある?」
「は?え?」

 彼はしゃがみこんで頭を抱えたままこちらを振り仰いだ。その上目遣い、そそられる。

「経験ない、よね?」
「…………」

 ジッと見かえしてくる瞳。少し開いた唇。ああ、おいしそう……

「君の知らない快楽、俺が教えてあげる」
「………」
「出さないでイかせて……」
「あのー……」

 彼はゆっくりと立ち上がると、はい、と手をあげた。

「真木さんって………、おれのことそういう対象としてみてたんですか?」
「そういうって?」
「性的……対象?」

 言いながら、上がっていた手が力なく下ろされた。
 今更、なんの確認だ?

「そうだよ? 君もそうだろ?」
「え?」
「隠さなくていいよ」

 そっとその白皙に触れる。………瑞々しい。吸い付くような肌……想像以上だ。見返してくる瞳も湖のように綺麗で………

「君は本当に美しい。俺だけの天使……」
「……………」
「慶……」
「!」

 ビクッと震えた手を掴み、そっとその愛らしい唇に……………



「……………。それから、何があった?」

 再び鳴らされたインターフォンの音に記憶の旅を邪魔された。けれども、何とか記憶を繋いでいく。それから……それから……

 ………思い出した。

「っざけんな!」

 彼の鋭い声。次の瞬間、鳩尾に痛みが走り、身を折ったところで、首の後ろにゴッと衝撃が………


 …………………。


 彼にやられた、ということか?
 ここまで的確に、人の急所を狙えるなんて、どんだけ喧嘩慣れしてるんだ。あんな可愛い顔して……

「………くそっ」

 痛みに顔が歪んでしまう。

「あのクソガキ……っ」

 この俺をコケにするとは良い度胸だ。どうしてくれよう……………

 そう思いながら、3度目のインターフォンの音に、ドアスコープから外をのぞいて………ハッとした。

(………慶!)

 彼が、立ってる。謝りにきたのか? そうだよな。驚いて条件反射的にあんなことしたんだよな? そうか、そうか………

 内心、安心しつつも、怒っている風に顔を作って、ドアをあけ………


 ……………。

 ……………。

 ……………。


「……………なんだ」

 そこに佇んでいる人物を見て、盛大にため息をついてしまった。

 ドアの先にいたのは、天使のような彼ではなく………

「何か用? チヒロ君」

 ビー玉みたいな目をしたチヒロだった。




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お読みくださりありがとうございました!
「その瞳に」の3の真木さん視点。

慶君、人懐っこいのも大概にしないと勘違いされちゃうよ~?というお話でした(ん?そうなの?)。

次回裏話最終話になります。
それをあげたら、諸事情により2週間ほどお休みをいただこうと思っております。

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コメント (2)
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