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BL小説・風のゆくえには~その瞳に・裏話1

2018年03月02日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  その瞳に*R18

「その瞳に」の真木視点です。
本編・裏話、どちらを先に読んでも大丈夫、のつもりで書いております。


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2002年秋


【真木視点】


 幼い頃から、願いが叶わなかったことは、一度もない。

 裕福な家庭で育った上に、この完璧な容姿、人を魅了するオーラ、優れた記憶力・分析力、抜群の運動神経、手先の器用さ、等々、天が二物も三物も与えてくれたおかげで、求めて手に入らないものはなかったのだ。

 だから、彼を「欲しい」と思ったことは、いつものように「手に入る」に繋がるはずだった。絡めとる網を張って、自分の手に落ちてくるように仕掛けたはずだった。

 けれども……


***


 彼との出会いは9月の初め。さして興味のない勉強会に参加したときのことだった。

 開始ギリギリに会場に飛び込んできた彼を見て、思わず「へえ……」と感嘆の声を漏らしてしまった。

(綺麗な子だな……)

 綺麗なだけでなく、人目を引くオーラを放っている。俺と同じだ。

「ここ、空いてるよ」

 座る場所を探している様子の彼に手を挙げて教えてあげると、

「ありがとうございます!」
「………!」

 キラキラキラ………と光が舞ったような笑顔をこちらに向けてきた。息を飲んでしまう。まるで天使だ。

(これは………欲しい)

 こんな子、今まで見たことない。震えるような衝撃が走った。この出会いは運命だ。

 完璧な俺の隣には、彼のような子がふさわしい。
 



 彼……『渋谷慶』は、驚いたことに、卒後3年目の28歳だという。ずいぶん若くみえる。まあ、おれも若くみられるので、実年齢の6歳の差は見た目と合っているかもしれない。

 彼は非常に真面目な青年で、勉強会の最中は、メモを取ったり、資料に印をつけたり、と、ずっと熱心に話を聞いていた。
 中でも、小児アレルギーの小林先生の講義を食い入るように聞いていたので、

「もしかして、小林先生目当てで参加した?」

 終了後にたずねてみたら、彼は恥ずかしそうにうなずいて、

「実は先生の本、何冊も持ってて……」

 頬を赤らめたその様子………かわいすぎるじゃないか。

「……………。俺、小林先生と面識あるから、紹介してあげるよ?」
「え!?」
「おいで?」

 戸惑った様子の彼の肩に手を回す。

(へえ……結構鍛えてるな)

 華奢に見えるけれど、体はガッチリしている。そんなところも、好ましい。

「ご迷惑では……?」
「大丈夫だよ」

 微笑みかけると、彼は大きく瞬きをしてから、

「ありがとうございます。お言葉に甘えます!」

と、ニッコリとした。その物怖じしないところも気に入った。



 知れば知るほど、彼は俺にふさわしい理想的な青年だと思えた。

 医者としてはまだまだ未熟。でも、それを自覚して懸命に取り組んでいるところが良い。少々、空回っているところも微笑ましい。

 勉強会では常に隣に座るようにして、その後、飲みに行ったり、スポーツジムに行ったり……、と、計画通り、この一ヶ月ほどで着々と距離を縮めた。健康的で真っ直ぐな彼が俺に向けてくる視線は、すっかり『頼りになる先輩』だ。込み入った仕事上の悩みを打ち明けてくるくらい、俺に気を許している。


 そろそろ次の段階へ行こうかな………と思っていた矢先のことだった。


「今日は浩介のうちから直接来たので……」
「………そう」

 彼から発せられる『浩介』の言葉に、またか、と思う。一度何かの話題に出たのをキッカケに、彼はよく『浩介』の話をするようになった。高校時代からの『親友』だと言う。高校の社会科の教師をしているバスケ部顧問。その名前を口にするとき、彼の瞳は少し柔らかくなる。

(彼氏……とか?)

 以前、恋人はいるのかと聞いたら、少し間を空けてから「いません」と答えていた。あの間が、同性の恋人を隠すためのものだとしたら、彼も『こちら側』の人間ということになり………話が早くて好都合だ。恋人の有無なんて、俺にとっては何の問題にもならない。

 よし。決めた。

「ねえ、慶君」

 ポンッとその小さくて可愛らしい頭に手をのせる。

「俺、その親友君に会ってみたいなあ」
「え」
「今度一緒に食事でもどう?」
「いいんですか?!」

 ぱあっと目を輝かせ、キラキラ笑顔になった彼。眩し過ぎる。

「おれも是非、真木さんに会っていただきたいって思ってたんです!」
「………」
「わ~嬉しいなあ」

 無邪気な瞳。溢れでる真っ直ぐさ。触りたくなる白皙……

(ああ。欲しい……)

 今すぐ落としてしまいたい。……けれども、まだだ。ゆっくりと、着実に、俺のものにしてやる。




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お読みくださりありがとうございました!
「その瞳に」の1の真木さん視点でございました。
この調子で「その瞳に」の裏話を書き終えてから、あらためて!真木さん主役のお話を書こうと思っております。
なので、真木さんの詳細……家庭環境とかそういったことはその時に。今回は裏話に徹します。

次回もお時間ありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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コメント (2)
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