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創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

ある平凡な主婦の、少しの追憶⑥

2007年06月01日 10時29分51秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
それから、何もない今まで通りの日々が過ぎていった。

ただ、彼との思い出がふいに体中を駆けめぐり、息が苦しくなることが多くなった。

でも、これは夏のせいなのかもしれない。

10年前の夏、彼から告白されてつき合うことになった。
9年前の夏、石垣島に旅行に行った。このまま時が止まればいいと思うくらい楽しかった。
そして8年前の夏。別れを告げられた。

夏の思い出から解放されると、今度は罪悪感でいっぱいになる。
夫に申し訳ない。子供達にも申し訳ない。
どうして、今ある大切な家族のことを忘れてしまうほど、強い思い出に心が捕らわれてしまうんだろう。


夫との結婚生活はあと数ヶ月で丸7年になる。
今、幸せだとは思うけれど、まったく不満がないといえば嘘になる。

夫は家事育児に協力的ではない。
それでいて、私に妻としての役目を求めてくる。
それが、ものすごく負担なのだ。

一日、2人の子供の面倒を見て、ようやくみんな寝付いて一息つける、
とホッとするのもつかの間、今度は夫の相手をしなくてはならない。
私が私でいる時間はまったくといっていいほどなかった。


でも、今日は思いがけない自由時間を得た。

友人の出産祝いに行くことになったのだ。
友人宅は電車で2時間近くかかるところにあるので、実家の両親が子供達を預かってくれた。

でも、友人宅に向かっている最中、電話が入った。
上の子供が発熱してしまったので、今回はキャンセルしてほしいという。

そのことを両親に言ったところ、両親は子供達をつれて姉の家に遊びにきたところなので、夕方まで帰らないという。


それならば・・・
これも運命なのかもしれない、と自分に言い訳をして、お台場に足をのばしてみた。


実は今日は、私にとって特別な日だった。

10年の今日、お台場で彼に告白されて私たちはつき合うことになった。
場所は海の見える公園だった。

10年前とは面変わりしてしまったお台場。
でも海の色だけは当時と変わらない・・・
懐かしさでいっぱいになりながら、歩いていたら・・・

「・・・え?」

我が目を疑った。
その思い出の場所に・・・彼の姿があった。
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