玉砕は許さず殺られるまで生きていろ 黒蝿の大群死体は2倍に膨張す 切断のペニスが口に吊るされし 50ヶ所以上の刺し傷敵なのか 憎しみを超えた憎しみ撃ち続く 撃ちし後ボロッと家族の写真かな 日本兵を殺め米兵を殺めけり 殺戮の果ての錯乱空歪む モルヒネは効かず錯乱を抹殺す 100メートルの火炎の先にある無音 *NHKスペシャル【狂気の戦場 ペリリュー~”忘れられた島”の記録】より
猛暑の日幸福の黄色いハンカチぼろ衣に 長崎を知らぬ市長にまた炎天 平和の二文字戦争の二文字酷似せり 土屋正忠に聞く平和を破るもの 平和記念公園誰も拾わぬ骨ばかり 無縁仏たらんとニッポンの気骨持つ 捨て鉢の平和防毒マスクたち おのが娘を慰安婦に襤褸の父がいる 信じるな戦争も平和も信じるな 批判者の心の隙に髭の男 21世紀の戦争と平和逆転す サブリミナルのコロセ戦争は死語となり
夏夕焼包帯の男語りだす 本土決戦気が付いたら腕が無い 死ぬまでの耳鳴り迷宮を蝉鳴けり 両眼でもう太陽は拝めない 太腿のような腕「今夜切ってやろう」 看護婦へお母ちゃーん「気が付いたようですね」 終戦日残った指で「死に損なったよ」 ニューギニア置き去りけんけん少年めく 恩給廃止2円50銭の食事のみ 終戦一転かつぎ屋で食いつなぐ 生き残りもう一度死ぬ戦傷者 両眼失明兵隊さん危ない!と遮断せる 凍る指点字が読めず耳澄ます(戦後GHQの援助打ち切り) 恩給復活自分のために生きてゆく 生きるとは大したもの能動作業義手 脳一歩手前で鉛弾叫びをり 肉体ごと焼かれ砲弾はこのあたり 子に当たる!学校で義手は使わない(戦後僻地での教育に尽力した藤谷良男氏) 名誉の負傷や日本傷痍軍人会 *NHKETV特集『戦傷病者の長い戦後』より
滴りのいつからの空透き通る 母はいつも働きずくめ夕端居 草笛の名手か草笛光子といふ女優 ショーケンの「祭囃子が聞こえる」挫折あり なめくじを潰して空虚の意味を知る 山姥に子を捨てし過去蛍飛ぶ どこにでもある真暗がりにかたつむり ここまではニッポン天使魚放つなり
バタバタと音立てて死ぬ久保山忌(9月23日。第五福竜丸無線長久保山愛吉氏) 秋立つや日本母親大会開催す(1955年平塚らいてうの呼びかけで開催。今年で60回を数える) 母の忌の夢醒ますべく滝の音 この街の虹でありたい明鴉 宇宙よりの吉報初夏の巨大蟻 言霊の幸(さちわ)ふ国に蝉鳴けり 蟻と蚊の転生前の騒がしさ ゲゲゲの女房年金不適格者の夫(つま)持てり かーんかーんと待たれし者の再臨す 稲妻はプラズマ愛犬の騒ぎ出す 夏衣と寸分違わぬわが身かな 父と母の炎の寄る辺なき盆迎え カトリーナ到来少年の掌の泥まみれ(2005年米南部を襲った史上最大のハリケーン)