《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

安倍政権下で苦境に追いやられる労働者人民

2014-04-20 22:27:48 | 日本の社会―日本の動きⅢ
安倍政権下で苦境に追いやられる労働者人民

1.労働者人民の生活と労働

【外国人労働者】

◇(2014.2.5) 安倍政権は1月の成長戦略に「外国人受け入れ環境の整備」を明記。①「移民」や「単純労働者」(入国を認めていない)とせずに「低・中レベル技能労働者」に拡大。②「日本が総人口減少にどんな手を打つかに外国人投資家の関心」(経済財政諮問会議民間議員)。③第1弾として建設労働者。型枠・左官などの技能労働者は97年の450万人から100万人減少→「年度内に画次元的な緊急措置を」(官房長官)。技能実習生制度での中国・ベトナムからの建設労働者は年1万5000人程度、「特定活動」で在留資格を付与、法相告示だけでいい。④介護―技能実習制度に加える検討。現在、EPAでインドネシア・フィリピンから介護福祉士候補を累計で1000人以上受け入れ→介護の技能実習生を認めれば「事実上の移民が介護から始まる」の意見。⑤技能実習制度は「国際貢献の一環として日本の技術の移転」だが現実は人手不足の目的外利用、賃金や残業代未払いや旅券取り上げなどの実習生の人権侵害の多発。もともと単純労働者の入国を認めずに外国人労働者で人手不足を解消する「矛盾」。
《コメント》
 日本の入管制度の問題点がここにはある。在日外国人を治安の観点から潜在的内乱勢力として扱ってきた。在日朝鮮・中国人取り締まりの延長上の政策である。一方では高齢化社会と労働力人口減少の人手不足は深刻になった。外国人投資家が高齢化社会への政策に注目しているという指摘は正しい。かといって日本帝国主義は絶対に外国人労働者受け入れを解禁はしない。欧米の帝国主義各国において移民問題があらゆる意味で治安問題化していることをみており、つぎはぎの政策を重ねていき、それが暴発しても分断できればガス抜きとして計算済みなのだ。
 外国人労働者の問題は労働者国際主義の重要な試金石である。現実の不当不法な差別と排外主義との闘いは帝国主義国の労働者の義務である。

【2013年の毎月勤労統計調査】

◇(2014.2.5) 給与総額下げ止まり(5日、厚労省)。①給与総額、月平均31万4150円、横ばい、12年の31万4127円が過去最低。97年の37万7500円のピークからは5万7500円低下。最低水準から抜け出していない。増加は建設・金融・保険・不動産などで、減少は卸売・小売・医療・福祉など。②パート労働者の給与総額、9万6630円、前年比0.6%減、2年ぶりの減少。パート労働者比率は29.41%、過去最高。③所定内給与は0.6%減で8年連続減少。④実質賃金は0.5%減少、3年連続マイナス。
《コメント》
 日経は「給与総額下げ止まり」と見出しを打っているが全くの嘘。実態は給与総額が過去最低の12年比わずか月23円上がっただけをもって「下げ止まり」と強弁している。しかし、物価を加味した実質賃金は3年連続のマイナスで所定内給与(残業代や賞与を除く)は8年連続で減少なのだ。この数字のどこを取って「下げ止まり」などといえるのか。
 ほかに特筆すべきはパート労働者の給与総額が10万円を切っており、減少していること。医療・福祉などの人手不足の職場で給与総額が減少している。医療・福祉の職場の人で不足の原因は低賃金にあるのだ。

【求人情報】

◇(2014.2.9) 厚労省はハローワークに企業から寄せられる求人情報を9月から民間の職業紹介会社、自治体、学校に提供する。民間は職業紹介会社に限定。職業紹介会社には年収が高く正社員希望が多く、ハローワークは半分が非正規雇用。
《コメント》
 日経はハローワークの求人情報を派遣会社などの他の人材サービス会社も受け取れるようにし、公共職業訓練の内容の見直しも要求している。戦後職業紹介を公共に限ったことは戦前の手配師やたこ部屋などへの反省からである。有料の職業紹介が労働者から不当に搾取していないかの検討が必要なのだ。派遣会社は紹介手数料だけでなく派遣労働者が働いている限りピンはねをしている。予備校講師は派遣会社からの給料が派遣先から渡される金額の3分の1だという話を聞いた。商業紹介会社の職業紹介の手数料や派遣のピンはねなどは労働者への搾取を制限する規制の開放でしかない。

【育休】

◇(2014.2.11) 育休中の社員の代替要員を人材派遣などで確保するための経費助成を拡大、現在は中小企業だけに助成、これを大企業に拡大。雇用保険を財源とする「両立支援等助成金」の見直し。育休を終えた社員を元の仕事に戻すことなどを条件に社員1人につき15万円を年間10人まで支援。予算額は1億円で年間800人強へ支給。支給額や支給人数の上限を引き上げた。
《コメント》
 中小企業は派遣では代わりが難しいから使い勝手が悪い。中小企業の使い勝手の悪さの改善ではなく大企業に拡大することで数字だけを上げようというのか。

【保育】

◇(2014.2.14) 2015年度からの保育の新制度で施設あたりの保育士の配置数を増やすなどの措置を一部先送りする。(14日、「子ども・子育会議」)新制度の保育サービス拡充にかかる費用を推計したら17年度時点で最大4000億円の財源不足になるため。17年度で1兆1000億円必要、量の拡充に4000億円、質の拡充に7000億円必要、「社会保障と税の一体改革」から1000億円増加。消費増税で7000億円を充てる。

【行政不服審査法改正案】

◇(2014.2.21) 行政不服審査法改正案を今国会に提出(総務省)。内容、①申し立て期間を2ヶ月から3ヵ月に延長、②処分に関係していない職員(審査員、住民税や生活保護では課税額や支給額を決定する職員が不服審査に関わっている)が審査する、③申し立てる人は担当部署が持つ関係書類を閲覧、コピーできる、④審査結果を監視する第三者機関の設置など。不服申し立て件数 11年度で国と自治体を合わせて4万8000件、年金受給額、所得税、情報公開、労災認定、交通違反、難民認定、地方税、介護認定、生活保護など。
《コメント》
 「使いやすく」が狙いなどと言うが全く不十分。同じ行政の職員が不服審査をすることでどうして公平性が保障できるのか。関係書類を閲覧・コピーできるのはわずかな前進か。

【求職者支援制度】

◇(2014.2.18) 総務省が厚労省に求職者支援制度で家族が勤務先から受け取る交通費を生活保護と同じように世帯収入とみなさないように求めた。求職者支援制度は雇用保険が受けられない人が対象。

2.年金・介護・医療など社会保障の現状

【診療報酬改定】

◇(2014.2.5) 初診料120円引き上げ2820円、再診料30円上げ720円、200床以上の病院の外来診療料を30円、歯科の初診料を160円、再診料を30円、調剤基本料を10円引き上げを決定(5日、中央社会保険医療協議会・中医協)
 これには日経も批判記事を出している。論点は、①医療機関の保険医療は消費税の対象外で、消費税は納めていない。にもかかわらず医療機関の仕入れる器材などのモノに消費税がかかるのでその補填をと医師会は要求する。医師が診察などでモノを使わなくても消費税分のコストとして報酬を上乗せできる。支払い側は消費税のコスト負担が大きい項目を特定して転嫁を求めたが厚労省は不公平が生じるとして退けた。増税分(3%)を上回る引き上げ(初診料は4.4%上げ)を平然と求める医療関係者の「感覚の鈍さは否めない」。②入院料が高い「重症患者向け」ベッドを減らすために回復中を「地域包括ケア病棟」として高めの入院料を認める(06年診療報酬改定で重症患者のベット削減を計画したら逆に入院料の高い重症患者ベットが10倍に増えた失敗の繰り返し)。 ③診療報酬とは別に税財源で900億円の「基金」を都道府県に新設し、病院の設備費や人件費を補助する。
◇(2014.2.13) 診療報酬の2014年度改定が決定(12日)。中医協が厚労相に答申。これ以下で急増する医療ニーズの受け皿を在宅を中心に作るとして様々な施策、それには重症患者の受け入れに偏った病院のあり方や患者が軽い症状でも大病院を受診する現状の是正が大前提。

【地域における医療・介護の総合的な確保を推進するための関係法案】

◇(2014.2.11) 12日に閣議決定、今国会で成立へ。1.現役世代の税と保険料からの給付費は医療で35兆円、介護で8兆円→医療・介護制度の見直し。2.介護の自己負担引き上げ―年金生活者で税金を引く前の収入額が「年280万円」以上は2割負担、個人単位、利用者(500万人)の1割(50万人)に適用。3.給付抑制―特養老人ホームで預貯金が夫婦で2000万円(個人で1000万円)以上は食費や部屋代の補助金5万円前後を打ち切る。4.年1430億円の削減、軽度の要支援サービスは国から市町村に移す予定を反発を考慮し事業を当初計画から絞り込む。
《コメント》
 いつもながら分かりにくい法律の名称である。所得の多い高齢者からより多くの負担をという論理はいずれ低所得者も、という負担引き上げのための前哨戦なのだ。制度の運営の根本問題もあるが今の運用の無駄や不公平をなくす議論は必要。

【国民年金基金】

◇(2014.2.16) 医師や弁護士、自営業を対象とする公的年金制度の国民年金基金は4月以降に新規に加入する人の保険料を7%程度引き上げ、予定利回りを引き下げる。国民年金基金は全国47の地域型国民年金基金と医師やクリーニング業などの職種ごとの職能型国民年金基金がある。加入者は49万人、受給者は39万人。

【介護保険】

◇(2014.2.21) 厚労省は在宅介護のための住宅改修事業で施行業者の登録制度をつくる。①業者とのトラブル多発。自治体の研修受講が条件。改修費の9割は自治体が直接業者支払い、利用者は立替払いは必要なくなる。14年度から市町村の自主的な登録制度と市、3年後に法制化。現行の対象は手すり設置、段差解消、滑り防止などの床材変更、様式便器の交換など、上限は18万円。②施設介護から在宅介護への移行の一環。11年度の住宅改修は44万件、給付(自己負担除く)410億円。介護保険給付比が14年度の9.3兆円から25年度には20兆円超に。
《コメント》
 介護保険の住宅改修で立替負担が解消するのはありがたい。もうひとつの狙いは施設会議から在宅介護への移行にある。在宅介護は現在の労働者の給料や労働条件を改善しない限り無理である。現実は介護疲れで在宅介護が難しい。施設の建設・運営で税金から巨額の利権を保証した介護施設建設を促進させた行政こそ責任を取らなければならない。 

2014年3月3日
博多のアイアンバタフライ
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