しまね分かち合いの会・虹

自死遺族自助グループ
『分かち合いのつどい』
と『J交流会』

4月17日(日)朝日新聞島根版に掲載された記事です

2016年04月23日 | その他

自助グループ、体験つづる◆

 自死で家族を失った悲しみに、追い打ちをかけるような知人や僧侶からの心ない言葉。自死遺族の自助グループ「しまね分かち合いの会・虹」が、遺族の受けた差別や偏見の事例を冊子にまとめた。「実態をまず知ってほしい」と、痛みを感じた体験をつづった。

 

 校長の「私の代で、こんなことをされては困る」。知人の「あんたよかったねえ。ようけ子供を産んでおいて」。車内で亡くなった娘の車をその後、愛用していると、友人から「嫌なオーラを感じるのよね」。

 3月に発刊された冊子「自死 聞いてほしい 自死遺族となって出合った苦悩」。県内を中心に18遺族が実際に体験した事例が紹介されている。

 「しまね分かち合いの会・虹」は2008年に発足した。定期的に県内各地で遺族が悩みを分かち合える集いと、年1回のフォーラムを開いている。

 冊子は今回で4冊目。09年に出した1冊目「会いたい」に遺族8人、翌10年の「会いたい 2集」には9人の手記を収めた。

 代表の桑原正好(しょうこ)さん(65)=出雲市=は、県の自殺総合対策連絡協議会にオブザーバーとして参加。12年2月から委員になった。協議会で、「自殺」ではなく「自死」の言葉を使うように要望。翌13年3月、県は全国の自治体で初めて、公文書などでの表記を「自死」とすることを決めた。

 昨年3月、12人の手記を載せた3冊目「わたしたちのまさか~自死遺族の手記より~」を発刊。桑原さんは「まさかと思っている自死は誰にでも起きうると、社会に伝えたかった」。

 桑原さんは06年末、次男大輔さん(当時24)が自死した。四十九日を過ぎた頃、数十年ぶりに知人が訪ねてきた。線香をあげたあと、生年月日と名前を書いてくれと紙を出された。

 理由を聞くと、「息子さんは今、地獄でもがいているので、拝んでひきずり上げます」。ショックで過呼吸のような症状になった。

 2年後、別の知人に「天国から見守っていますよ」と慰められるまで、「息子は地獄にいる」という言葉に悩み、苦しんだ。

 「自分自身の中にも、自死に対する偏見があったからこそ苦しんできた。実態を知ってもらうことで、遺族への差別や偏見をなくしたい」

 

◆僧侶「しっかり布施を」/医師「保険金詐欺で捕まる」◆

 人の最期に関わる僧侶や医師から、心ない言葉を言われた事例がある。

 出雲市の女性(60)は2009年4月、次男(当時28)が自死した。

 寺の僧侶に、「若いのにこんな死に方をすれば、しっかり布施を包まんと成仏できん」と言われた。

 葬儀を終え、四十九日の相談で寺を訪ねると、「あんな死に方をした者はたくさん供養しないといけない。夏用の衣をいただきたい。京都へ発注して、100万円くらいだと思う」。

 女性はあっけにとられた。だが、今後を考え、いくらかの金額を包んだ。

 死亡診断書を書いた医師を訪ねた。生命保険の手続きのためだった。「何の用」と聞かれ、次男の死の経緯を話した。

 淡々と話したつもりだが、「保険金がもらえるようにウソを書けというのか。私も保険金詐欺で捕まりますけん」とまくしたてられた。

 女性は「医師だから話を聞いてくれると、甘えがあったのかも」としつつ、「言葉一つで傷ついたり、救われたりする。大変だったね、と言ってもらえれば、それでよかった」。

 07年、次男は大学で学んだ社会福祉の分野に就職。仕事の負担が集中するなどして、体調を崩し、うつ病の診断を受けた。

 1年ほど休職し、09年3月に退職。4月下旬、職場の前で亡くなった。

 次男に「笑ってる顔が一番好きだわ」と言ったことがある。亡くなる前日の夜。台所にいると、次男が2回、笑顔を見せた。父親には珍しく、「一緒に缶ビール飲まん」と声をかけていた。

 中学、高校は吹奏楽部。大学も応援団で吹奏楽を担当した。読書家で、大学卒業後、実家に段ボール40箱の本を持って帰ってきた。

 女性は冊子に手記を寄せ、研修会で遺族としての思いを語っている。「次男が、これからのこと任せたけん、がんばってよ、と言ってる気がするんですよ」 (一色涼)


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あなたは

大切な家族を 自死で突然失う衝撃 誰にも話せず胸がつぶれそうな日々 一人ではとてもかかえきれない想い このつどいでは 悲しみ苦しみ怒りなどを分かち合っています 涙しています 聴いています あなたのとなりには 同じおもいの自死遺族しかいません 安心して分かち合っています 新しいつながりが きっとあなたを待っています 一度いらしてみませんか (会場等に自死自殺の文字は使用していません安心してお越しください)