序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

プレーバック劇団芝居屋第41回「七曲り喫茶紫苑」9

2023-09-22 16:42:08 | 演出家

5 同日・夜・二十度

七曲りの皆が応援した淳の試合は見事淳が勝利をおさめました。
万年青での一次会も終わり、紫苑の二次会の為先遣隊として良子と若手が席作りに来ました。

良子 「ソーレソレソレ、お祭りだ」

燥ぎまくった若手がきます。

総司 「勝者矢崎淳!!」

まだ万年青に残ってる老体組と若手合わせて十人分の席をつくります。

良子 「ご苦労さん。来るの何人だっけ」
総司 「僕らを含めて十人ですね」
良子 「じゃ、テーブル動かして席作ろうか」
淳 「ママ、どういう形にしますか」
良子 「そこのソファ席から椅子席のテーブルをこう並べて・・」
総司 「椅子は両サイド置いていいですね」
良子 「ああ、そうだね。京子ちゃん」
京子 「ハイ」
良子 「冷蔵庫からビール出して」
京子 「ハイ、了解」

こういう時の若手はテキパキ働くもんです。
みるみる席がつくられていきます。

総司 「淳君って本当に強いんだね、驚いちゃったよ」
淳 「そんな事ねえよ」」
良子 「そんな事あるわよ、なにせ東日本新人王戦の決勝進出者になったんだから」
総司 「そうだよ、なんせ三ラウンドTKO勝ちだもの」
淳な 「でも駄目すよ、あの程度の相手に左目カットされる様じゃ」
良子 「そういうもんなの」
淳 「なにせ会長から教えて貰ってるボクシングのモットーは、打たせず打つですから。まだまだすよ」
良子 「打たせず打つね。でも会長ってファイターだったんでしょう」
淳 「ええ、会長の時代はそのスタイルが当たり前だったみたいで、打ち合いでお客さんを喜ばせていたそうです。ところがそれが原因でこれからタイトルマッチって時に網膜剥離にかかってチャンスを逃がしたんです。だから俺は打たれない事から教えて貰いました。それなのにこのざまじゃ・・まだまだです」
良子 「むずかしいもんだね、相手のある勝負って」

とかなんとか言ってる内に席は完成です。

総司 「こういう事でいいですか」
良子 「ああ、いいんじゃないかな」
京子 「ママさん、ビールだけでいいんですか、ほかのお酒は?」
良子 「ああ、女将がね、みんないい調子で飲んでるからここは酔いを醒ます場所にしようって。だからチェイサー代わりのビールでいいのよ」
総司 「そういえば、社長も会長も清ママも大喜びでペースが早かったですよね」

大喜びはここにいる人間も同じで興奮冷めやらぬ体です。

京子 「皆さん淳ちゃんが勝ったのがよっぽどうれしかったんだね。あたしもうれしかったけど」
総司 「こういうのを溜飲が下がるっていうんでしょうね」
良子 「そうだよ。久しぶりにスカッとしたんだよ、此の所息の詰まった話しが続いていたからね」
淳 「それじゃ俺ももっと頑張んなきゃな」

そこへ血相を変えた功一が駆け込んできます。

功一 「た、大変だ」
良子 「どうしたの・・・」
功一 「社長がえれえ事になってるんだ」
淳 「社長さんが!」
良子 「社長さんがどうしたのさ」
功一 「すっ転んだ!」

なんせ金蔵は権藤ジムのパトロンであり淳の後援者です。

功一 「あれからこっちに向かおうと万年青出たら、社長年甲斐もなく調子に乗って会長とシャドーボクシング始めたんだよ。女将たちも興に乗って声かけたりしてたんだが、自分じゃ若いつもりだろうがどこから見たって立派な爺さんよ。何かに足取られてすってんころりんだ」
良子 「アラ、嫌だ」
功一 「いや、ひでえ転び方じゃなかったんだよ。なんかぐにゃっと腰砕けで尻餅付いたって感じだったんだが、それからがいけねえや。まるでひっくり返った亀みてえに身動きできなくなってよ、痛え痛え言い出したんだ。今、救急隊員が様子見てる」
良子 「ああ、あの?救急車呼ぶほどなの」
功一 「ああ、社長が自分で救急車呼んでくれって言うほどだから、よっぽどなんだろう」
総司 「僕も行った方がいいですかね」
良子 「様子見てるっていうんだから、二人で一応準備だけはしといて」
京子 「ハイ」

三人が万年青に向かった後、残りの準備をしてる総司と京子でしたが。
ややあって良子と淳が戻ってきます。

京子 「あっ、どうでした」
良子 「入院じゃないかって」
総司 「入院!」
京子 「大丈夫ですかね、社長」
良子 「どうかね、骨折じゃないかって言ってたからね、救急の人」
京子 「どうします?」
良子 「どうしますって?」
京子 「祝勝会」
淳 「そんな気分じゃねえよ」
良子 「中止よ」
総司 「中止ですか、そうですよね」
良子 「はい、中止。片付けて病院行くわよ」


良子 「ハイ、喫茶紫苑でございますが。・・・ああ、会長さん?どうだった、どんな様子。・・・ああ、やっぱり・・・アラ、尾てい骨骨折・・・・江田総合病院、ええ、知ってる。・・・店片付けたら行くって言っといて・・・ハイ、よろしく」
淳 「・・・尾てい骨骨折すか」
良子 「そうだって」
総司 「尾てい骨ってここの尻尾みたいな骨だよね」
京子 「そうね。わあ、いやだ」
淳 「終了」
良子 「さあ、終わったら行くわよ」

とんだ祝勝会になりました。

次に続く。

撮影鏡田伸



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