京都社会保障推進協議会ブログ

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4野党共同で「母子加算復活法案」を衆議院に提出!

2009年06月05日 00時04分35秒 | 資料&情報
 「母子加算」廃止についての生健会の記者会見から

 厚生労働省の記者クラブでの会見で、全生連の前田美津恵事務局次長は、「1949年に母子加算(ひとり親家庭に支給)ができて60年目の今年、困難な実態や声も聞かず、厚労省は母子加算を廃止。その理由に『低所得母子世帯の水準と比べ、生活保護の方が高い』というが、貧困な状態にある母子家庭の底上げをすることが求められている。また、ひとり親世帯就労促進費(一時扶助で月1万円または5000円)を07年から創設しているというが、母子世帯の84%は就労しており、母子加算廃止の口実にしかすぎない」と批判しました。


 民主党の「ニュース」報道から

 同法案は、生活保護を受けているひとり親世帯に支給されていた母子加算(月2万3000円程度、父子家庭にも支給)が今年4月から全廃され、約10万世帯、約18万人の子どもたちが、生活費を切り詰めている家庭で食べたいものも食べられず、高校進学や修学旅行を断念するなど、深刻な影響が出ている状況をふまえ、復活を求めるもの。民主党は『民主党政策INDEX2008』において「母子加算の廃止に反対し、ひとり親家庭の子が安心して暮らせるよう、必要な給付額を支給します」と規定し、当初から母子加算廃止に反対し、その復活を主張してきた。
 母子加算の減額が始まる前の2004年度以前の支給額を今年10月から再び支給すると定め、必要な年間経費を約180億円と見積もっている。
 会見で長妻議員は、「与党の国会議員もこれは復活させなければいけないといった趣旨の発言を繰り返しているが動きがない」ため、野党側からの働きかけということで法案提出に至ったと語った。
 母子加算が廃止に至った経緯について長妻議員は、「平成15年8月に専門委員会委員12名で議論があり、厚生労働省によると平成16年12月に『母子加算は廃止するという結論が出た』というが、委員のなかには『そういう結論が出たと認識していない』と発言する方もいる」と指摘した。
 同時に、小泉内閣のもとで示された骨太方針において「社会保障の伸びを年間2200億円抑制する」とされており、平成19年度予算では2200億円の歳出削減の内訳のなかに母子加算の見直しによる63億円削減が計画されており、平成20年度予算の2200億円の歳出削減のなかにも母子加算の見直しによる53億円削減が示されている点を長妻議員は提示。「結局は母子加算の廃止は小泉改革の流れの延長線上のなかで起きてきたことで、与党も野党も小泉政権の施策の見直しの機運があるにもかかわらず未だに尾を引いているものだ」と断じ、母子加算復活の必要性を改めて強調した。
 さらには、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とする憲法25条上も問題であるとも指摘。母子加算の廃止は国家が国民に対して保障する最低限の生活水準であるナショナル・ミニマムを引き下げるという国家判断といえるとした長妻議員は、「説得性のないまま、最も重要な、ナショナル・ミニマムの水準を下げるという国家の判断がなされたことは看過できない」と述べた。
 国会会期が延長されるなか「審議日数がないとは言わせない」との指摘もあり、自民・公明の与党に対して、ひとり親家庭の子どもたちの窮状を救うためにも、早急に審議に応じるよう強く求めていく考えも示された。


 母子加算復活法案(法案)

 母子加算復活法案(要綱)


(以上)




京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(4)

2009年06月04日 07時22分30秒 | 資料&情報

 前回に続き、京都府の「税務共同化」事業の内容を検討します。

3.課税業務の共同化

 「共同化」の中心は徴収業務ですが、徴収や滞納処分を行うためにも、課税業務が集中されます。
 市町村が保有している、地方税である個人住民税、法人関係税、償却資産(固定資産)税等のデーターが、広域連合にある「納税申告センター」に一括して送られ、納税通知書の一括送付が行われます。
 つぎに、指定金融機関等に納付された税金の情報(または納付されなかった情報)が市町村より「未納情報」「督促状発行対象データー」として広域連合にバックデーターされ、広域連合の共同徴収システムに送られます。そして、前回のように、四t行損職員でなく、広域連合の職員が共同で徴収にあたります。
 
 このように、住民の生活そのものである「個人情報」を広域連合がすべて捕捉し、共同システムを活用して、「各構成団体における滞納データーを広域連合の共同徴収支援システムに取り込み、名寄せ、債権管理を行いながら催告等の納税折衝、財産調査、滞納処分等を実施」するのです。「催告センター」での電話催告、文書催告の集中実施や、滞納金額別に「特別機動担当」「大口担当」「地域担当」などのメンバーが、専門的に納税折衝、財産調査、滞納処分等を行います。

 まるで●●業者を連想させる内容としかおもえません。


 「税務共同化」が行う「国保料」問題


 次に、共同化の内容に含まれる国保料(税)問題についてです。

 前回の「設立準備委員会資料」の中にある、「京都地方税機構(仮称)規約(案)」では、第4条に「地方税法に基づき構成団体が賦課した地方税及び国民健康保険法に基づき市町村が保険者として賦課した国民健康保険料に係る滞納事案のうち、構成団体が広域連合への移管の手続きを行った事案に係る滞納処分及びこれに関する事務」を処理するとしています。
 つまり、広域連合(仮称「京都地方税機構」)の「共同徴収支援システム」に国保料滞納情報が移管され、国保料の滞納者に対しても他の税金と一体となって徴収・滞納処分が科せられることになります。京都府のサンプル調査では、国保料と一般税との滞納の重なりは国保料滞納者の約4割であり、共同徴収により国保料の徴収率アップが見込まれるとしています。

 京都府内の市町村は、「国保料」と「国保税」に分かれていることはご存じだと思います。
 国民健康保険法では、第76条で「保険者は、国民健康保険事業に要する費用に充てるため、世帯主又は組合員から保険料を徴収しなければならない。ただし、地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。」と定めており、「保険料」を基本とし、「保険税」はただし条項として例外的に位置付けています。
 では、なぜ「国保税」を賦課する市町村があるのか、それは、「保険税」方式を採用した方が、徴収権の時効(消滅時効)が長くなることや滞納処分の優先順位が高くなる等の理由によるものです。事実、「国保料」と「国保税」とは様々な違いがあります。

〇消滅時効
 国保料=2年
 国保税=5年
〇処分の優先順位
 国保料=税に劣後
 国保税=国税と同順位、債権・公課に優先

〇更生等の制限期限
 国保料=2年
 国保税=3年
〇徴収者
 国保料=会計職員(吏員以外可)
 国保料=徴税吏員
〇不服申立
 国保料=国民健康保険審査会
 国保料=市町村長
(以上、京都府の会議資料より)


 京都市を除く、京都府内市町村別の「国保料」「国保税」実施状況は以下のとおりです。

☆「国保料」方式
綾部市、宇治市、亀岡市、向日市、長岡京市、福知山市、舞鶴市、城陽市
☆「国保税」方式
宮津市、八幡市、京田辺市、木津川市、京丹後市、南丹市、井出町、宇治田原町、笠置町、京丹波町、伊根町、精華町、和束町、久御山町、大山崎町、与謝野町、南山城村


 情報では、宇治市、亀岡市、向日市、南丹市、綾部市、舞鶴市の6市が、「税務共同化」事業の中の「国保料」の徴収・滞納処分には参加しないと聞いています。当然の結論で、もし、滞納処分の中で国保料を税務一般と一緒に扱えば、優先順位が法律により税金にあり、国保料は後に回されてしまうからです。長岡京市、城陽市の動向が注目されます。

 では、国保税の場合はどうなるのでしょうか。


(以上 つづく)




京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(3)

2009年06月03日 12時59分47秒 | 資料&情報

 前回で、京都府後期高齢者医療協議会で委員が述べた「被保険者には個別的な対応が必要」で、「個々の滞納者の状況を勘案するには職員の能力が問われ」る。つまり、その世帯の生活実態を踏まえて、資格証明書交付の判断はなされなくてはならない。」との発言を紹介しました。また、委員の意見に対し、広域連合長が「徴収率の目標を掲げ、近づくように努力する。正直ものが馬鹿を見る社会をつくってはならない。払うのは当たり前。京都府の提唱による「税の共同化」が徴税業務からスタートする。来年12月に組織を立ち上げ、何百人の組織となる。当然、各市町村が同じような考え方で、納税する人の立場にも配慮しやっていく。また、生活の指導も必要だと思う。金が入ってきたら借金にまわし、公的な支払いは後回し。また、ばくち的なことをする。そういうことは、高齢者にも言える。だからこそ、相談に乗り、結果的に資格証明書を交付しなくて済むように、きめ細やかにやっていく必要があるだろう。」と答弁し、「国民健康保険や後期高齢者医療の徴収担当者にも広げていき、最終的には水道料やその他の保険料も含めた総合徴収の促進を各市町村足並みそろえてやっていきたい」と述べていたことを紹介しました。
 
 上記の発言で一番問題になるのは、「国民健康保険料や後期高齢者医療保険料」も含めた「税務共同徴収」を提案していることです。

  後期高齢者医療制度の保険料は、法律(高齢者の医療の確保に関する法律)により以下のように規定されています。


 
第百四条(保険料)
 市町村は、後期高齢者医療に要する費用(財政安定化基金拠出金及び第百十七条第二項の規定による拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、保険料を徴収しなければならない。
 2 前項の保険料は、後期高齢者医療広域連合が被保険者に対し、後期高齢者医療広域連合の全区域にわたつて均一の保険料率であることその他の政令で定める基準に従い後期高齢者医療広域連合の条例で定めるところにより算定された保険料率によつて算定された保険料額によつて課する。ただし、当該後期高齢者医療広域連合の区域のうち、離島その他の医療の確保が著しく困難である地域であつて厚生労働大臣が定める基準に該当するものに住所を有する被保険者の保険料については、政令で定める基準に従い別に後期高齢者医療広域連合の条例で定めるところにより算定された保険料率によつて算定された保険料額によつて課することができる。

 つまり、後期高齢者医療制度の保険料は「税金」ではありません。「税務共同化」などという場合には、府民からいただくお金についての性格を明確にするのが当然です。



 本題の「税務共同化」について検討します。


 「税務共同化」構想とはどういうものか


 まず、今年4月9日に開催された「京都府・市町村税務共同化組織設立準備委員会」の資料を見てください。準備委員会には京都市を除くすべての市町村と京都府副知事が参加し、資料のとおりの内容を決定しています。


 「京都府・市町村税務共同化組織設立準備委員会」資料


 当日配布の資料について検討をしていきます。(資料のP21以降についている配布資料を参照してください)

1.税務の共同化の目的・効果

 まず、目的・効果について税務行政の充実と徴収率の向上をうたっています。平成19年度で京都府全体で98.0%、京都市を除く市町村平均で93.4%と示していますが、市町村によって徴収率は大きな差が生じています。たとえば伊根町は99.0%、舞鶴市96.2%、精華町95.8%、大山崎町95.7%などの市町村もあれば、笠置町71.6%、京丹波町86.5%、宇治田原町89.4%、南山城村89.6%など(いずれも平成18年度徴収実績)、市町村による差があります。問題はこれらの「差」をどうとらえるかです。もちろん悪質な滞納者にたいし厳しく徴収業務を行うのは当然ですが、税金の「滞納者」=「すべて悪質」でないことは明らかです。徴収率の高い市町村は「顔の見える徴収業務」が効果を表していると考えられます。そうすると、市町村職員からはずれた「広域連合」職員では、住民の生活実態を踏まえたきめ細かい徴収業務が出来ないことになるといえます。そのことは、次の項目でも示されています。

2.税務共同化の内容

 税務共同化の内容=「徴収業務(滞納整理)の共同化」です。
 府職員と市町村職員が共同して行うとしていますが、「組織体制」案では、京都府内を9つの区域に分け、それぞれに徴収職員を配置するとなっています。京都市以外では「相楽=木津総合庁舎」「山城中部=城南勤労者福祉会館」「乙訓=乙訓総合庁舎」「中部=亀岡総合庁舎」「中丹=福知山大江支所」「丹後=京丹後市大宮庁舎」とされています。「効率化」や「運営コストの圧縮」の名のもとに、これらの組織機構が税金の徴収に当たるのですから、とうてい「身近な職員」といえないのは明らかです。
 「断固たる滞納処分の実施」を内容に掲げる広域連合職員が住民の暮らしの実態や地域的条件をも考慮した業務にはふさわしくない、住民のためにならないことは明白です。また、市町村が行う保育料等との調整、生活困窮者への生活保護相談・申請などに総合的に対応できるのでしょうか。まったくの疑問です。


(以上 つづく)