京都社会保障推進協議会ブログ

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京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(9)

2009年06月15日 00時00分00秒 | 資料&情報

 前回の掲載で、第1回あんしん医療制度研究会で配布された資料を掲載(ここから)していますが、具体的な内容について検証していきます。

 「研究会」が行う調査研究の課題として
①調査研究を行うデーターが不足であるとしてレセプトデーターの管理が必要。
②保健医療に関係する主体が市町村・府県・国に分散しており、一体的な施策の実施ができない。
③市町村国保が保険者機能を発揮できなくなっている。
の3点を挙げています。

1.レセプトデーターの管理とは

 課題の一番目に挙がっているレセプトデーターの管理とは、医療機関に受診した際の医療行為(診察や検査や入院治療など)を、医療機関が保険者に診療報酬にもとづいて請求する「請求書」のことです。請求先は市町村国保や組合国保、協会けんぽ、組合健保などの保険者であり、保険の種類によって相手が変わります。
 レセプトには、氏名、生年月日、病名、受診日、診療行為などが詳細に記載され、診療報酬の点数が計算されています。ただ「請求書」であるため、カルテ(診療の記録)でなく患者さんの訴えや医師の判断などは当然記載されていません。
 そこで問題なのは、
①レセプトは個人が特定できる指名等の情報が記載され、病名等のプライバシーにかかわる重要な個人情報であること。個人情報保護法では、個人情報の利用に当たっては本人の承諾く無しに行ってはならないとされて入り、、医療機関でも「個人情報保護の方針」を患者に明示しなければならないとされています。
 すこし、京都の医療機関の個人情報の取扱いについてみてみます。


 第一日赤病院「個人情報のとりあつかいについて」

1. 個人の情報は明示された目的のためにのみ使用します。
個人情報をお聞きする場合には、必ず利用目的を明示し、皆様ご自身の意思のもとに情報を提供していただきます。また、ご本人の承諾がない限り、利用目的以外に個人情報を使用することはありません。
2. 個人の情報は第三者に提供いたしません。
個人情報は、ご本人の承諾がない限り、第三者に提供することはありません。
3. 個人の情報はいつでも開示、訂正、追加又は削除します
お申し出があった時は、ご本人であることを確認し、登録された情報の開示、訂正、追加又は削除を行います。
4. 適用除外について
日本赤十字社では、皆様の個人情報を上記のとおり取り扱いますが、(1)法令に定めがあるとき、(2)本人又は第三者の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、緊急かつやむを得ないときのいずれかに該当するときは、上記の取り扱いを適用しない場合があります。

 京都市立病院「個人情報保護方針」(病院長あいさつの下段)

個人情報の利用及び提供について
 当院は,患者の個人情報の利用につきましては,以下の場合を除き,本来の利用目的の範囲を超えての使用いたしません。
  (1)個人識別できない状態にした場合(注1)
  (2)法令に定めがある場合
  (3)患者の同意を得た場合
  (4)出版,報道等により公にされている場合
  (5)個人の生命,身体又は財産の安全を守るため,緊急かつやむを得ないと認められる場合
  (6)公益上特に必要があり,かつ,本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合
また,法令の定める場合や緊急の場合等を除き,患者の許可なく,その情報を第三者(注2)に提供いたしません。


 多くを見ても同様の「個人情報取扱い」が各医療機関で公表され、患者の同意(掲示等も含む)が取られています。レセプトの扱いは「病院が請求上必要なもの」として同意との扱いであるが、「使用目的以外(請求のため)に利用しない」よう保護された情報となっています。問題は違いますが、レセプトインライン請求義務化に反対の保団連の主張でも、「患者・国民のプライバシーにとっても問題ある」とし、患者情報保護の立場からもレセプトの扱いに懸念を表明しています。
 また、第1回「研究会」では、委員から「レセプトは全ての医療情報が記載されたものではない。レセプトのみで医療保険政策の現状は分析できない」との意見が出されています。
 保険者でない京都府がレセプトデーターを管理することが妥当なのか、問題があるといえます。

2.主体が市町村・府県・国に分散しており、一体的な施策の実施ができないとは、都道府県単位の「国保一元化」「診療報酬への権限移譲」などのために必要とのことです。

3.問題は「市町村国保が立ち行かなくなっている」事態です。
 市町村国保が果たしてきた役割りについては、この連載でももべてきました。国民健康保険法により市町村は住民の健康やいのちを守るための様々な施策を行ってきています。ところが国は1984年に老人保険制度が新設されたことを理由に、これまでの国庫負担率約45%を38.5%に引き下げ、全国の国保財政を一気に悪化させました。日本の社会保障制度の特徴である国民皆保険制度として、必要な運営財源は国や都道府県、市町村が十分な手当てをするのが当然です。
 今回、「国保一元化」がすすむとしても京都府が「国保財政の赤字」をまかなうわけでないことは明らかです。国の責任を明らかにしないままでの「国保一元化」は、財政的裏づけのないまま、結局は非保険者負担(保険料の増額)でしか対処できません。
 「医療費適正化計画」による医療抑制、診療報酬上のコントロール、公平な負担の名による保健用負担増などが、このままでは「あんしん医療制度」の中味になることは明らかではないでしょうか。


 「あんしん医療制度研究会」の結論が、データー分析の結果、結局は住民へのしわ寄せにならないよう、審議内容に注目をしていきたいと思います。


(つづく)