京都社会保障推進協議会ブログ

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続:京都市立病院PFIについて(3)

2009年06月28日 08時21分22秒 | 資料&情報

 今回、SPCとの解約を決めた高知医療センターの「要因」についての資料提供です。京都市立病院PFI事業の「将来」を見極める上での検証です。


 高知医療センターの場合は、近江八幡市とは違った問題点が浮上しました。オリックスSPCとの契約をめぐり、期待した削減効果が見られず、契約を継続すること事態が巨額の赤字を生み続ける構造になっていたからです。


 そして、今月16日に開催された「高知県・高知市病院企業団議会臨時会」で、企業長は以下の提案を行い、議会に諮り、オリックスSPCとの解約となります。

 「(前略)これまで企業団からは、PFI事業でSPCに支払う諸経費を含めれば、公共が行うよりも割高となっていると指摘してきており、SPCが、材料費や委託料を直ちに削減することが困難であるとする以上『合意によるPFI事業契約の終了』も選択肢の一つと考えています。(後略)」


 解約にいたる経過については、今年2月の「高知県・高知市病院企業団議会」における「附帯決議」に記載されています。


(以下「附帯決議」引用)

 「高知医療センターの経営改善と医療体制の維持向上を求める附帯決議」

 高知医療センターは本年度末、資金ショートを回避するために件・市両構成団体から多額の貸し付けを受けることとなる。
 このような経営危機に対して、早急な回避策を講じるために病院改革プランを策定しようとしたが、改革プランの策定には欠かすことのできない特定目的会社(SPC)高知医療ピーエフアイ株式会社の協力が得られないまま、来年度予算を編成することとなった。
 高知医療センターの運営をPFI事業として採用したのは、VFM効果を生じることが前提であり、公共の費用負担が軽減されるからであった。
 しかし、材料費などの費用が、PSCや応募者提案時より大幅に上回っている現状の中で、今後の協議において、特定目的会社(SPC)の経営改善の協力姿勢に変化が見受けられない場合は、PFI事業を継続しないことで経営改善を図ることを選択せざるをえないことも視野に入れた検討が求められる。
(後段部分は省略)
(注)「PSC」とは、公共側が自ら実施した場合に、事業期間全体を通して、いくらの財政負担になるかを現在の価値に計算してあらわしたものです。



 つまり、病院の「経営危機」の事態にもかかわらず、PFI事業による「VFM効果がなく」、その原因は「材料費などの費用がPSCや応募者提案時より大幅に上回っている」こと、「経営改善のための協力姿勢が見られない」などとしています。




 このような事態に至る経過の中で興味ある質疑が、企業団議会を構成する高知市議会で行われています。



(岡田泰司議員)
 私は1年前,PFI事業に反対してきた日本共産党として,高知医療センターは県民,市民の命と健康を守るとりでとしてかけがえのない役割を果たしていることを示しながら,SPCが役割を果たしていないことが赤字の主な要因であり,断固とした態度で臨むべきだと問題提起をしました。そして,同僚議員,また県議会も同じ認識に立ち,決議を上げることとなりました。まさに当初から指摘してきたとおりの事態になっています。問題なのは,決定的な赤字構造でありながら,SPCには5億円のマネジメント料,給与相当分が支出され,取り仕切る委託関係費は同規模内容の病院と比較して約3億円も高い30億円に上ります。おまけに建設資金を貸し付ける割賦金利息も,オリックスに収入として入ります。5億7,000万円,まさに県民,市民の税金が民間企業に吸い上げられると言っても過言ではありません。ところが,12月1日の病院議会では,SPC側は経費削減を株主に説明できないと拒否しました。これのどこがパートナーシップなのでしょうか。人権保障を担う公務と利潤追求が目的の民では,そもそも目的が違う,緊張関係こそが大事と指摘しましたが,まさにそのことが目前であらわれています。
 官と民のパートナーシップと発想自体に問題があったのではないか,何を教訓とするのか伺います。
 よほどの経営改善の見通し,SPC側の決断がない限り,議会としても安易な行政の肩がわりは市民に説明がつかない事態となっています。そんな中で,市長は7億6,000万円の不足資金を出すとマスコミに早々と答えるとはいささか拙速で,無責任ではないかと指摘しておきます。
 SPCの大もとであるオリックスは,企業像として高い能力と謙虚な姿勢を持ち,信頼される企業,社会との調和を図り,尊敬される企業とうたっています。グループ会長の宮内義彦氏は,規制改革・民間開放推進会議の議長としてPFIを推進した責任がありますが,オリックスの役職員行動実践には,社会のためにオリックスが存在するということを強く認識とうたわれています。この立場をきちっと守ってもらわなければなりません。
 12月中に企業団の提案に対し回答があると聞いていますが,結論が出る前に市民の代表,政治家として市長みずからがオリックス本社と交渉に当たるなど,構成団体の長として先頭に立つべきと思いますが,お聞きをいたします。
(岡崎誠也市長)
 次に,医療センターについて,特に官と民のパートナーシップということで御質問をいただきました。
 PFI事業につきましては,一番の大もとになっておりますのは,内閣府が平成19年11月に報告書を出しておりますが,真の意味の官民のパートナーシップの実現に向けてという報告書の中で,PFI事業の着実な実施は,低廉かつ良質な公共サービスの提供,公共サービスの提供における行政のかかわり方が改革されることによる新たな官民パートナーシップの形成,民間の事業機会を創出することを通じた経済の活性化,この3つの成果がもたらされるというのがPFIの一つの目標ということになっております。しかし,PFIは準備段階でも非常に手間がかかりやすく,現実として使いやすい手法となっていないということもこの報告書の中でも少し指摘をされております。また,効果が明確に確認し得ないということも指摘をされておりまして,当初国が想定したことになっていないという指摘がされているところでございます。
 この医療センターにつきまして,私たちも重大な関心を持って臨んでいるわけでございますが,御承知のとおり,医療センターを運営しております病院企業団は,特別地方公共団体でございまして,執行機関,議会ともに独立した組織でございますので,まずはその法律上のたてりの病院企業団の執行というところに留意をしなければならないと認識をしております。
 病院企業団からは,重要な課題につきましては,その都度事前に直接報告を受けておりますが,この病院企業団ではこれまで高知医療ピーエフアイ株式会社に対しまして,経営改革プランで検討している平成23年度の経営収支均衡に向けまして,委託料やSPCの諸経費等を3年間で6億円削減することを求めておりますし,また病院企業団とともに,経営改善に取り組むことをSPCに対して強く要請をしている状況にございます。病院企業団では,去る11月27日にオリックス本社に対しまして,割賦金の企業債への借りかえや,23年度の収支均衡に向けました先ほどの経費削減につきまして,オリックス本社にも強く協力を申し入れているところでございます。
 現在,病院企業団とオリックス本社との協議がこのように行われているところでございますので,まずその病院企業団の執行部としての協議の進捗状況を見てまいらなければなりませんが,設置者として知事と市長という立場から,その状況に応じて知事ともそれぞれ協議をしなければならないというふうに思っております。
 御質問の中で,7億6,000万を支援するというお話が少し出ておりましたが,私が記者会見で申し上げましたのは,医療センターを県民,市民の高度医療機関として守っていかなければならないという趣旨で発言をしたものでございまして,7億6,000万を直接全額支援するということは申し上げておりません。設置者の県,設置者の市,そして運営を執行しております病院企業団,それぞれ協議をした上で,新年度予算編成をどういうふうにしていくか,資金ショートに対して設置者としてどう支援していくかは,今後予算査定の中でも慎重に協議をしていかなければならないというふうに思っておりますので,そこは御理解を賜りたいというふうに思っております。
<平成20年12月15日 定例会議事録より>


(以上 つづく)