京都社会保障推進協議会ブログ

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続:京都市立病院PFIについて(4)

2009年06月29日 08時01分15秒 | 資料&情報

 高知医療センターの検証の続きです。


  PFIの本質は「VFMが生じなかっても長期にわたって委託料が支払われる」


 前回に引用した高知市議会での論議は、岡田議員が指摘しているように「問題なのは,決定的な赤字構造でありながら,SPCには5億円のマネジメント料,給与相当分が支出され,取り仕切る委託関係費は同規模内容の病院と比較して約3億円も高い30億円に上ります。おまけに建設資金を貸し付ける割賦金利息も,オリックスに収入として入ります。5億7,000万円,まさに県民,市民の税金が民間企業に吸い上げられると言っても過言ではありません」という、病院の収支(赤字・黒字)に関係なく、長期間にわたってSPCに委託料等が支払われるしくみにあります。委託料等の固定的経費は、医療機関の経営構造(2年に一回の診療報酬の改定や薬価の変動、患者動態など絶えず変化する収益構造)に多大の影響を与えます。診療報酬そのものが政府・厚労省の政策的誘導に使われ、ましてや「都道府県単位の診療報酬制」が浮上している中で、「いかに固定的費用を削減するか」(柔軟に医療環境に対応できるか)が必要なことは言うまでもありません。

 オリックスSPCはPFI事業に参入するときに、多額のVFMを試算していますが、30年にわたる運営的経費削減の中心は医療材料費の民間手法による削減効果です。ところが、当初提案の削減効果が実行されないばかりか、企業団が試算したPSC(前回の注を参照)をも上回る材料費となり、この、材料費の割高が病院経営を圧迫し、資金ショート直前まで追い込むことになったのです。


   「まぼろしのVFM」


 気になるのは、オリックスSPCは
①PFI事業に応募したときの提案(VFMの計算)は、応募をするときの提案であり、契約内容とは異なるとしている。
②VFMは長期にわたって(契約期間をつうじて)効果が現れるものであり、数年間で判断するものでない。

 応募時の提案には具体的な経営貢献度が数値としても示されますが(応募時提出文書で詳細な提案内容(
京都市立病院PFI事業「提案仕様書」を参照)が審査され、SPC業者が確定される仕組になっています。
 ところが「提案」は「契約」ではないというSPC業者の言い分が主張できるのがPFIの本質です。また、「長期にわたってVFMの効果」があればよいとは、PFI事業の特徴である民間業者との長期契約がもつ「避けられない矛盾点」をついたSPCの主張といえます。


 同時に、議会答弁で市長は「PFIは準備段階でも非常に手間がかかりやすく,現実として使いやすい手法となっていないということもこの報告書の中でも少し指摘をされております。また,効果が明確に確認し得ないということも指摘をされておりまして,当初国が想定したことになっていないという指摘がされているところでございます。」と発言しています。
 PFI事業が全国で「民間の智恵を生かす。VFMを生み出す」と導入されましたが、実施される中で多くの問題点が浮かび上がり、特に、近江八幡市民病院や高知医療センターが頓挫する中で内閣府のPFI推進委員会は「軌道修正」を余儀なくされます。(平成19年11月15日
付「推進委員会報告概要版」)


 この情勢の中でも強引に市立病院のPFI事業を推進しているのが京都市です。


 高知市長答弁では、もう一つ京都市立病院PFIにとって重要な点を指摘しています。それは、「医療センターを運営しております病院企業団は,特別地方公共団体でございまして,執行機関,議会ともに独立した組織でございますので,まずはその法律上のたてりの病院企業団の執行というところに留意をしなければならないと認識をしております。」ということです。高知医療センターは京都県立病院と高知市立病院の統合(新築・移転)により建設されましたが、統合に際し特別地方公共団体を設立し「病院企業団」としたことです。
 したがって県民・府民の健康やいのちを預かる財産ですが、直接的には県議会や市議会が関与できない(県民・市民の声やチェック機能が働かない)仕組になっていることです。
 京都市は、京都市立病院の独立地方行政法人化をすすめていますが、まったく同様の事態を引き起こすことが考えられます。


(以上 つづく)





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