京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

またしても「医師の偏在」論-本質を見ない財政制度等審議会の論議

2009年04月24日 07時51分21秒 | 資料&情報

 4月21日開催の財政制度等審議会財政制度分科会財政構造改革部会(財務省)で、またまた「医師偏在」論に基づく、とんでもない論議がされています。医師不足は医師養成を抑えつづけた政府の責任です。「臨床研修医」や「医師偏在」「医師給与格差」等に「原因」を求めるのでなく、税金の使い道を転換し、社会保障費の大幅な増額こそ解決の道です。

 財政構造改革部会の内容はマスコミでいっせいに報道されました。

 「地方で不足、医師数格差4・6倍  財務省、診療報酬見直しも-共同通信」


 記事にもあるように、都道府県毎の医師数の全国平均を1として、面積当たりの医師数と人口当たりの医師数を指数化したものです。その結果、都道府県毎の医師数格差が4.6倍となっていると結論付けています。

 財務省の狙いは明らかです。
 ひとつは、「医師数の偏在」を強調し、医師数の絶対的不足を「偏在」に理由があるとする論調に誘導することです。かって、政府・厚労省も「医師不足は医師の偏在にある」としてきました。

 平成19年4月17日提出の赤嶺衆議院議員「
医師不足問題に関する質問主意書」に対する政府「答弁書」では、「医師の需給の不均衡は解消の方向に向かうものと認識しているが、医師が地域間で偏在していることにより、一部の地域において医師の不足が深刻となっている現下の状況にかんがみ、新医師確保総合対策に基づき、医師の地域間の偏在に対応するための様々な対策を講じているところである。」「各都道府県内でみても、県庁所在地等を含む二次医療圏では医師数が相対的に多い一方で、山間部等を含む二次医療圏では医師数が相対的に少ない状況にある。厚生労働省としては、このような状況を踏まえ、地域間で医師が偏在している状況にあると認識しているもの」と、偏在こそが問題であるとの認識を持っていました。

 もともと日本の医師数は、人口千人あたり2.0人(04年)で経済協力開発機構(OECD)加盟30ヵ国中27位とOECD加盟国平均から17万人も不足をしています。

 そして「医療崩壊」の深刻な実態が明らかになる中で、従来の「偏在」論をとりさげ「絶対的に医師数が不足している」との見解を閣議決定として示さざるを得なくなります。

 平成20年2月12日提出の山井衆議院議員の「
質問主意書」にたいする「答弁書」では、「医師数は総数としても充足している状況にはないものと認識している。」「現在の医師不足問題の背景には、大学医学部の医師派遣機能の低下、病院勤務医の過重労働、出産、育児等による女性医師の離職、医療に係る紛争の増加に対する懸念等の複合的な要因があるものと考える。」との認識を示しました。

 全国の医療関係者・住民の声と運動の成果と言えます。財務省が持ち出した「偏在」論は明らかにながれに逆行するものです。

 もうひとつは、記事に紹介されている「財務省は、医師が不足しがちな地域への診療報酬を手厚く配分することで偏在を是正する見直し策検討」していることです。これも、とんでもない話です。医師数が相対的に「多い」都道府県でも、医師体制の不足や医療設備・ベット不足等で、救急患者の受け入れが出来ない事態が常態化しています。東京であろうと大阪であろうと京都でも、産科医不足、小児科医不足がおこり、現に京都府の京丹後地域では脳神経外科医がゼロで、「死ぬしかない」状態になっているのです。
 診療報酬上の格差をつける論議でなく、すべての都道府県で「充足した医師の配置」が求められるのです。

 財政制度等審議会では、社会保障費を消費税でまかなうとする資料が提出され、消費税率6%アップが必要との試算をしています。医師問題や社会保障費問題の決着を消費税増税で行おうとする財務省のねらいが見えてきます。

 財政制度審議会での説明資料

  社会保障Ⅰ(説明資料)
  社会保障Ⅱ(説明資料)


(以上)