京都社会保障推進協議会ブログ

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疑問だらけの「新しい要介護認定」-(1)

2009年04月01日 17時05分39秒 | 資料&情報
 テキスト作成に三菱UFJ関連企業が関与



 前回、4月から始まる予定の新しい要介護認定基準の問題点を掲載しましたが、参議院予算委員会で新たな「疑惑」が明らかになりました。

参議院予算委員会質疑で日本共産党小池晃議員の質問に、厚生労働大臣が答弁した内容です。

<以下 しんぶん赤旗の報道記事>

要介護度切り下げの新認定方式 大銀行系シンクタンク関与

 「利用者の実態を無視した認定が増える」と批判を浴びている介護保険制度の新しい要介護認定方式。この推進に、大銀行系シンクタンクが中心的に関与していたことが日本共産党の小池晃参院議員の調べなどで二十日までにわかりました。
 このシンクタンクは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社です。認定方式改変の経緯を追うと、利用者と介護者の視点の欠落が浮かび上がります。
 重度の寝たきりの人の「移動・移乗」を「自立」と判断するなどで反発を呼んでいる新たな認定調査員テキスト。これを同コンサルティング社が作成したことは、十八日の参院予算委員会で小池氏の質問に舛添要一厚労相が認めました。同社が主体となったテキスト作成検討会の外部メンバー六人は行政関係者や研究者ばかり。利用者と介護者の代表は一人も入っていません。
 同社は、厚労省から二〇〇七年度の「要介護認定適正化事業」を委託され、認定の「適正化」を目的に各地の認定審査会に「技術的助言」を与えました。
 認定方式改変を議論した、厚労省の「第四回要介護認定調査検討会」(〇八年五月)にも、同社の副主任研究員(現在は主任)が出席。「火の不始末」などの重要な調査項目の削除を主張し、新方式に取り入れられました。同検討会にも利用者の代表は入っていません。
 同社が実施した「要介護認定適正化事業」などについて〇八年に厚労省が作成した「実績評価書」は、介護費用が増えてきたため、「真に必要なサービスに対して給付が行われるよう、給付の効率化・重点化を行ってきた」と記しています。
 認定の「適正化」や認定方式改変の根底に、介護費用抑制の狙いがあることを示しています。
 小池議員の調査で、〇六年度の「高齢者介護実態調査事業」は、みずほ情報総研、「要介護認定ソフト開発・導入事業」はNEC(〇七年度)と東芝ソリューション(〇八年度)に委託するなど、大企業への丸投げの実態も分かりました。(以上)



 参議院予算委員会での質疑が「会議録」で公表されています。



<09年3月18日参議院予算委員会から>

○小池晃君(前略)今もお話ありましたけれども、認定調査のときのテキストも問題になっていて、これも次の二枚目に書きましたけれども、重度の寝たきりの人が今までは全介助だったのが自立だとか、点滴だけで口から御飯食べていない人は全介助だったのが自立だとか。髪の毛のない人の整髪というのが今までは能力を総合的に判断としていたのに、これは自立となっているんですね。
 結局、こんなテキスト使ってこんなソフトでやったら要介護度低くなるんじゃないかって現場の人みんな思っている。当然じゃないですか。
○国務大臣(舛添要一君) だから役所が作るとそういうことになるんで、こういう自立(介助されていない)なんて書いて、分かりゃしないから書き換えさせます。自立なんてこんな訳の分からぬ言葉はやめさせる。介助されていないという、二つ書くことはないんですよ、介助されていないと最初から書けばいい。そして、介助されていない、されていなくてぽおんと一週間もほったらかされているんですよ。そこで、褥瘡になっている、それは介助必要でしょうと、なっているから必要ですといったら、今までされていないことに新たなものが加わっていくということですから、こういうのがいっぱいある。
 ですから、私も二十四時間しかありません。一つの体です。雇用の問題から何からやっていると細かいテキストまで自分で見れない。だけれども、ここでいろんな御意見いただいたのを全部チェックして、どう考えてもこれはおかしいというのは変えます。ですから、こういう自立なんていう言葉は使わせません。
○小池晃君 自立って言葉を換えても、それを介助していないってなっただけで基準時間に影響ないんですよ、同じことになるんですよ、これソフト変わらないんだから。
 大体、実施直前になって見直すって後期高齢者のとき同じようなことをやって、それで結局大問題起こったこと忘れちゃったんですか。私は、こういう付け焼き刃でもう直前になって中途半端な見直しする、こういうことはやめるべきでね、やっぱりこれ四月からやるの中止してもう一回検証し直すべきですよ。そうじゃないと駄目だ。
○国務大臣(舛添要一君) 私が全部厚生労働省のもう課長レベルがやることまで見れませんから、ある程度部下を信頼してきちんとやらせて外の研究員にも委託させてそうなってきたけれども、余りにも最近声が高いんで私自身も検討し、もう一遍見直しをやる必要がある。ただ、市町村は全部準備進めていますし、だからテキストを全部改訂しろ、間に合うように改訂しろと。そして、最初、四月から始めて、まあ二、三か月後に検証結果というか現実どうなったか出てきますから、それで必要ならまた必要な改訂を行います。
 だから、さっきのことで言うと自立云々で見れないんじゃないんです。何度も言うように調査員が恣意的で、小池先生が例えば寝ておられると。褥瘡が出ているのにそれ書かないでほったらかされたらかわいそうじゃないですか、小池先生。ですから、私が調査員で、褥瘡出ている、これは介護せぬと駄目ですよと言ったら介護出てくるんで、必要な介護をちゃんとやるためにという善意でやっている。
 しかし、それがみんなが御懸念なさっているように、軽度に軽度になるようであればこれは急に御負担は増えるし、それから大河原さんがおっしゃったのかな、現場の人が苦労するんですよ。決められてやって、あなた減りますよと、要介護度三が今日から二ですよというようになったときにその御苦労が大変多いんで、そういうことがないように全力を挙げて皆さん方の御批判にきちんと堪えられるように見直しをしていただきますので、今日の小池委員の意見も大変貴重な意見として賜って、更なる改善の努力を続けさせていただきます。
○小池晃君 だから見切り発車をすべきじゃない、やっぱりきちっと検証しなきゃ駄目だ、だからいったん中止して検証し直すべきだと。どうですか。
○国務大臣(舛添要一君) いや、まあこれも市町村は全部ソフトの改訂から何からいろいろ苦労をしておりますから、おっしゃることはよく分かりますけど、とにかく四月一日に実施して、それまでに変えられるところは変えます。そして、いろんな問題が起これば、これは直ちにまた変えていくということなんで、是非よろしくお願いしたいと思います。
○小池晃君 方針がぐらぐら変わる方がよっぽど大変です、現場は。役所がやったって言うけど、この要介護認定の見直しに関連した事業はどこに委託しましたか。
○国務大臣(舛添要一君) 一つは役所がやり、もう一つはですね、ちょっと待ってくださいよ。──失礼しました。たくさんの質問があるので、ごめんなさい。
 まず、審査会のこのデータですけれども、まず、モデル事業の方は厚生労働省自らが行ったと。それから
もう一つの認定調査方法の見直しについては、平成十九年度、社団法人日本病院管理研究協会が厚労省から補助を受けて検証を行ったということであります。
 それから、平成二十年度においては三菱UFJリサーチ・アンド・コンサルティング株式会社が厚生労働省から補助を受けた研究事業で実施し、その中で認定調査方法の見直し内容について自治体からの意見を募り、これを基に認定調査員テキストの作成を行った
ということでございます。
○小池晃君 みずほ情報総研、NEC、東芝ソリューション、三菱UFJ総研、そういったところに委託してやっているんですね。この今のテキストを直すというやつだって、これは三菱UFJ総研なんですね。こんなのやめたらどうかと、もう。これ七百億円大体掛かっているというんですよ、要介護認定に。やめたらどうですか。
○国務大臣(舛添要一君) いや、これは例えば三菱UFJリサーチ・コンサルティングは補助額は千六百万円、それから社団法人日本病院管理研究協会は約六百二十万円というふうになっております。
 ただ、だからやはり検証はどこかがやらないといけないんで、それはどこかにきちんとやらせる。それがきちんとなっているかどうかはそれはフォローアップが必要だと思いますけど、何もしないで勝手に厚生労働省だけでどうだこうだと決めるのも、またそれはそれで問題あると思いますから、必要な研究はやっていると、そういうことです。
○小池晃君 この要介護認定ですが、介護保険が始まってケアマネジャーという専門家が生まれたわけですね。今現場に十万人いるわけですよ。私は、一番家族のことも本人のこともよく知っているのはケアマネジャーなんだから、その専門家に任せてその人たちが必要なケアプランを作る、そしてそれを審査会で認定していくような仕組みにする方がよっぽど理にかなっているのではないか。こういう、本当に問題だらけのコンピューターとか三菱UFJに作らせたテキストで、実施直前になってばたばた変えるとか、もうこんなことが一番やっぱり現場の本当に混乱を生むんだというふうに思います。
 後期高齢者医療制度でうば捨て山だという批判が上がったと。今度は介護保険で寝たきりの人からまで介護を奪うと。こういう問題だらけの要介護認定の見直しは私はいったん凍結をすると、そして検証をすると、当たり前のことをすべきだということを申し上げて、質問を終わります。


 三菱UFJリサーチ・アンド・コンサルティング株式会社は三菱UFJフィナンシャルグループのシンクタンクです。介護保険分野では、「介護認定実態調査等介護保険制度が定着する中、より公正で適正な要介護認定を実施するために、要介護認定適正化事業評価調査、要介護認定実態調査事業等、要介護認定に関する事業を多く行なってきております。」と、厚労省や自治体の介護保険関連の調査・研究と政策提言を行うなど、介護分野での「民間参入」を行ってきました。

 そして介護分野でのコンサルティングをてがけ「介護ビジネスとは、介護保険制度下のサービス(狭義の介護ビジネス)とその周辺サービス存在します。利用者のニーズを満足させ、利便性を向上することを目的に様々なサービスを組合せて提供することが重要です。また事業所としても各サービス間でのシナジーを高めることで、効率的なサービス提供が可能となります。」「利用者、競合事業所、経営資源等の状況を分析し、事業所のコンセプト立案、戦略策定を行います。グループの強みは何か、利用者に訴求する特性は何か。強み・特性を生かしたサービス提供しているか。グループ内の各サービス提供事業所への資源配分は適切か、グループで充足すべきサービス提供体制は万全か。併せて、立案したコンセプト、戦略にもとづく実行プランの策定を行います。 」と、周辺サービスも含む経営戦略と効率化を追求することを目的としています。そこには、高齢者の尊厳も、利用者・家族等の介護実態の深刻さもありません。


 三井辨雄衆議院議員の質問主意書「要介護認定に関する質問主意書(08年5月22日)」に対する政府答弁でも、
 「平成十八年度の高齢者介護実態調査に要した費用は、二億五十五万円であり、同種の調査における実績や業務遂行体制等から見て、当該調査を最も適切に遂行できると考えられたみずほ情報総研株式会社に調査を委託した。」としています。

 介護保険認定に係る実態調査やモデル調査、テキストの作成等が、民間シンクタンクによって作成されてきた歴史が見えてきました。



(つづく)