http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbe000007072006
「市民記者」という言葉を生んだ韓国のニュースサイト「オーマイニュース」の日本版が、ソフトバンクとの合弁事業として8月に日本でも立ち上がる。編集長にはジャーナリストの鳥越俊太郎氏が就任。市民記者の募集準備やシステムの開発作業が佳境に入ってきた。日本でも「市民参加型メディア」は離陸するか。鳥越編集長に思いを聞いた。
――オープンまで2カ月を切りました
8月28日に創刊予定で、7月中には市民記者の募集を始めます。オープンまでに1000人ぐらい、年内には1万人規模の登録を目指しています。韓国では4万人を超える市民記者が登録しており、毎日200本程度の記事を掲載しています。
専属の記者も経験者を中心に既に10名程度リクルートしました。年内には15、6人を集めたいですね。オープン時には専属記者の記事に加え、市民記者の記事もそろえます。
――市民記者の書くニュースとはどのようなものですか
市民記者には身の回りで起こることに対する「喜怒哀楽」を表現してもらいたい。「こんな面白い(ひどい)話があるんだよ、聞いてくださいよ!」というような「ニュース」は誰もが持っているでしょう。従来のメディアが「こんなのニュースじゃないよ」と切り捨てていたようなものにも光をあてていきます。
なかにはとんでもない「鉱脈」に出会うこともあるでしょう。そのときは専属の記者を派遣して事実関係を確認して徹底的な調査報道を行います。
文字だけでなく、画像や動画も駆使します。動画で生中継もやりたい。携帯電話で動画が撮影できる時代です。韓国では既に記者会見の会場から動画中継をするといったことも始まっています。
――オーマイニュースの編集長を引き受けたきっかけは
私は以前から、日本はもっと「参加型社会」になるべきだと主張してきました。オーマイニュースの話が来たとき、私の考えとぴったり重なると思いました。
日本社会の一番の問題点は、納税者としての「義務と権利」に関する意識がとても薄いことです。政治や社会のしくみ作りにもっとかかわるべきなのに「劇場型」、つまり「寝っころがって見ているだけ」が当たり前になっている。
そうではなくて「運動会型」の社会、「参加しないとつまらない」という社会になるべきではないか。オーマイニュースはこの変化を促進してくれると思ったのです。長い戦いになるかもしれません。ただ、もし仮に我々が成功しなくても誰かがやるべき事業です。
――韓国とは国民性やメディア環境も違います
日本にも市民記者の土壌がないわけではない。「お金をもらわなくても自ら情報発信したい」という人はおそらく100万人単位でいると思います。阪神淡路大震災の取材などの経験からも、日本にNPOやボランティアに参加したいという若者がたくさんいることがわかりました。
韓国でオーマイニュースが成功したのは、自由な発言がある程度抑えられた時代が長かったからだとも言われます。確かに日本は言いたいことが言えないという社会ではありません。
しかし言論をコントロールしようという政治からの動きは米国でさえあるわけで、日本でもそういった圧力を感じる場面はあります。
――ブログとの違いは
ブログはあくまで「個人的営み」。テーマも議論の方法も、運営している個人が中心です。書いてある内容のどこまでが本当かを担保できる仕組みはありません。
――記事の内容をどうコントロールするのでしょうか
記事の内容や書き手の視点について細かく指示するつもりはありません。まずは「個人が情報発信する、表現者になる」ということが大切です。「個人の名誉を傷つけない」「事実と異なることは書かない」など最低限のガイドラインは決めますが、基本的には自由に書いてほしい。
つたない文章でもいいんです。方言で書いたっていい。新聞記事は一定の枠内でしか書けないので表現も堅苦しいですよね。私も4年ほど「ブログ」を書いてきましたが、ネットでは筑後弁丸出しです。
――営業の準備は進んでいますか
最初はバナー広告が中心となります。営業担当が準備を始めています。最初から黒字というわけにはいかないでしょうが、大きな利益は出なくてもなんとか回していける形にしたいですね。
鳥越氏はオーマイニュース・インターナショナル(東京・港)のオフィスにほぼ毎日通う
――市民記者の「書きたい」というインセンティブをどう引き出しますか
寄せられた原稿をきちんと評価することが大切です。個人情報を登録してもらった上で、市民記者としての名刺を発行することも考えています。
韓国では、記事として取り上げなかった原稿も日の目を見るような仕組みを取り入れています。市民記者の集いを全国で開いて取材のノウハウを伝えるような場も開いていきたいですね。読んでいて楽しい、多様性のある記事が多く集まることを期待しています。
[2006年7月7日/IT PLUS]
「市民記者」という言葉を生んだ韓国のニュースサイト「オーマイニュース」の日本版が、ソフトバンクとの合弁事業として8月に日本でも立ち上がる。編集長にはジャーナリストの鳥越俊太郎氏が就任。市民記者の募集準備やシステムの開発作業が佳境に入ってきた。日本でも「市民参加型メディア」は離陸するか。鳥越編集長に思いを聞いた。
――オープンまで2カ月を切りました
8月28日に創刊予定で、7月中には市民記者の募集を始めます。オープンまでに1000人ぐらい、年内には1万人規模の登録を目指しています。韓国では4万人を超える市民記者が登録しており、毎日200本程度の記事を掲載しています。
専属の記者も経験者を中心に既に10名程度リクルートしました。年内には15、6人を集めたいですね。オープン時には専属記者の記事に加え、市民記者の記事もそろえます。
――市民記者の書くニュースとはどのようなものですか
市民記者には身の回りで起こることに対する「喜怒哀楽」を表現してもらいたい。「こんな面白い(ひどい)話があるんだよ、聞いてくださいよ!」というような「ニュース」は誰もが持っているでしょう。従来のメディアが「こんなのニュースじゃないよ」と切り捨てていたようなものにも光をあてていきます。
なかにはとんでもない「鉱脈」に出会うこともあるでしょう。そのときは専属の記者を派遣して事実関係を確認して徹底的な調査報道を行います。
文字だけでなく、画像や動画も駆使します。動画で生中継もやりたい。携帯電話で動画が撮影できる時代です。韓国では既に記者会見の会場から動画中継をするといったことも始まっています。
――オーマイニュースの編集長を引き受けたきっかけは
私は以前から、日本はもっと「参加型社会」になるべきだと主張してきました。オーマイニュースの話が来たとき、私の考えとぴったり重なると思いました。
日本社会の一番の問題点は、納税者としての「義務と権利」に関する意識がとても薄いことです。政治や社会のしくみ作りにもっとかかわるべきなのに「劇場型」、つまり「寝っころがって見ているだけ」が当たり前になっている。
そうではなくて「運動会型」の社会、「参加しないとつまらない」という社会になるべきではないか。オーマイニュースはこの変化を促進してくれると思ったのです。長い戦いになるかもしれません。ただ、もし仮に我々が成功しなくても誰かがやるべき事業です。
――韓国とは国民性やメディア環境も違います
日本にも市民記者の土壌がないわけではない。「お金をもらわなくても自ら情報発信したい」という人はおそらく100万人単位でいると思います。阪神淡路大震災の取材などの経験からも、日本にNPOやボランティアに参加したいという若者がたくさんいることがわかりました。
韓国でオーマイニュースが成功したのは、自由な発言がある程度抑えられた時代が長かったからだとも言われます。確かに日本は言いたいことが言えないという社会ではありません。
しかし言論をコントロールしようという政治からの動きは米国でさえあるわけで、日本でもそういった圧力を感じる場面はあります。
――ブログとの違いは
ブログはあくまで「個人的営み」。テーマも議論の方法も、運営している個人が中心です。書いてある内容のどこまでが本当かを担保できる仕組みはありません。
――記事の内容をどうコントロールするのでしょうか
記事の内容や書き手の視点について細かく指示するつもりはありません。まずは「個人が情報発信する、表現者になる」ということが大切です。「個人の名誉を傷つけない」「事実と異なることは書かない」など最低限のガイドラインは決めますが、基本的には自由に書いてほしい。
つたない文章でもいいんです。方言で書いたっていい。新聞記事は一定の枠内でしか書けないので表現も堅苦しいですよね。私も4年ほど「ブログ」を書いてきましたが、ネットでは筑後弁丸出しです。
――営業の準備は進んでいますか
最初はバナー広告が中心となります。営業担当が準備を始めています。最初から黒字というわけにはいかないでしょうが、大きな利益は出なくてもなんとか回していける形にしたいですね。
鳥越氏はオーマイニュース・インターナショナル(東京・港)のオフィスにほぼ毎日通う
――市民記者の「書きたい」というインセンティブをどう引き出しますか
寄せられた原稿をきちんと評価することが大切です。個人情報を登録してもらった上で、市民記者としての名刺を発行することも考えています。
韓国では、記事として取り上げなかった原稿も日の目を見るような仕組みを取り入れています。市民記者の集いを全国で開いて取材のノウハウを伝えるような場も開いていきたいですね。読んでいて楽しい、多様性のある記事が多く集まることを期待しています。
[2006年7月7日/IT PLUS]