山であると同時に翼を広げた鷲に見える、むしろ《鷲》であることを強く知覚することの作用。明らかに《山》であるらしいのに、《鷲》を印象付けてしまう。一つの映像を見て二つを同時に知覚できない。
鷲に見えたら、鷲であることを事実化し、それ以上、反問の余地を失くしてしまう。
鷲の映像の吸引力が、星空の二十六日の月というあり得ない時空を無意識に肯定し、手前に置かれた巣籠の中の卵を、鷲(鳥)の卵であるかの錯覚(連帯)を受け入れてしまう。
視覚の心理作用・・・より強く認識した物は、周囲の事物、現象までをも巻き込んでしまう。強い印象が基準になるからである。
つまり、幻想の術、空想世界への導入は《巨きな虚偽》によって、鑑賞者を洗脳することが可能な領域が成立するということである。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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