続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『アルンハイムの地所』

2017-09-05 07:06:51 | 美術ノート

 『アルンハイムの地所』

 二十六日くらいの月が南中、満天の星月夜…この月が南中する時刻は昼であり、そのころに星は見えない、つまりは架空に設定された時空ということである。
 幻想の月明りに白く輝く三つの卵は、翼を広げた鷲の頭部を持つ山稜に関連して視覚に納まる。鷲の卵という想像は、誕生・成鳥・(死)の連鎖に変わる。

 鷲は鷲の形態に酷似した山稜(岩石/無機質)であり、生命(有機質)を持つものではない。にもかかわらず、ここに生命の連鎖を見てしまうイメージの確信。
 まったく異なる時空のものの合体構成は、奇想の空間を提示する。

『アルンハイムの地所』とは物理的条件を根本から覆し、(何かある)という《イメージの確信》を拓く時空への開眼、アルンハイム(任意の命名)という精神(妄想)の領域への場所の提示ではないか。
 山稜(自然/無機)・石積み(ブロック/人口)・卵(有機)・空間を転倒させたのか大地が転倒しているのか判別不能な天空(夜空)…物理的条件(観念)をことごとく外した展開は、解放された自由なイメージの世界であり、そういう魔界である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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