
『心臓への一撃』
バラ一輪が雄々しいまでに咲き誇っている。
しかし地面は岩場もしくは不毛の地であるような荒地であり、空は暗雲垂れこめ、不穏さを醸し出している。
水平線は左半分は明確なのに対し、右半分は曖昧にぼやけている。
蜂の一刺しという事件の暴露があったが、愛と美の象徴であるバラにも賛美に隠れた脅威があるのではないか。
バラのトゲが先鋭な短剣に変容しているこの画を差し出し『バラの一撃』と名付けている。
バラは永遠の憧れであり、その神秘は計り知れない魅力に満ちている。即ちそれは正体を掴みえない女に似ている。姿かたちは見えているが、その内実は伺い知ることが出来ない。
半分の真実と半分の曖昧な怪しさは不穏な空気を巻き込み、常時、一撃を隠し持っているのではないか。
『心臓への一撃』は憧憬を覆すかもしれない・・・秘密裏の反撃の刃への恐れである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます