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『博学な樹』
白いポールから枝葉が伸び茂っている。木化したカーテン、変形し覗き穴の開いたドアらしきもの、二つの眼がランダムに付着したベージュの箱(衝立)、ピンクの地平、空を思わせる淡いブルー・・・これらが『博学な樹』の条件である。
これらは少なくとも現世を否定するものであり、予想不可の来世の想像図である。
命を絶たれたはずのポール(ピルボケ)から樹が生える不条理、即ち復活である。
ピンクの地平はわずかに球体を暗示している、即ち、来世での温和な新天地である。
カーテンから、ドアの覗き穴から、衝立(壁)から・・・あらゆるものを押しのけて現世を覗き見、観察しているに違いない来世(冥府)の魂。
重ねた時空に収集された情報の数多、現世へは決して戻ることのできない死者の宿命。しかし、彼は知っているに違いない。
垣間見た真実、しかし、彼は語ることはない。
この時空の亀裂は未来永劫埋まることはないかもしれないが、確かに現世を見守る『博学な樹』は生育を続けてる。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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