続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『宝石』③

2019-01-08 06:50:58 | 美術ノート

 木箱・・・これは棺を連想させる。木目のついた長箱は死んだ人の空間であり、現世に在りながら隔絶された異空間(世界)である。
 日本でも《棺桶に片足突っ込む》という、死ぬかと思った時の言い回しであるが、棺は特別な霊界への媒体である。

 男と鳥は等しく死にかけてる、木箱(棺/霊界)に入った身体の大きさは測れない。しかし、死に逝くもの全ては等しい大きさの生命体として、この現世から消失していくのである。
 見開いた眼は未だ生の証しであり、男の眼差しは諦念(悟り)、鳥の目は驚異かも知れない。つまり男(人間)には死に対する思考(概念)があるが、鳥(人間以外の生物)にはそれが欠如しているということである。
 しかし、にもかかわらずすべての生命体は等しく『宝石』であることは間違いない。

 木箱に把手があるが、決して開けてはならず、また開けることの叶わない把手である。背景のベタは時代を特定せず、常世、永遠に変わらないという意である。


(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)