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セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

山梨県立美術館 コレクション展/栗田宏一・須田悦弘展

2020年12月30日 | アート

今月初めにドライブがてら、山梨県立美術館に行ってきました。

場所は甲府市の芸術の森公園。設計は東京都美術館を手掛けた前川國男さんです。手前の彫刻はヘンリー・ムーアの「四つに分かれた横たわる人体」を後ろから見たところです。

山梨県立美術館といえばミレーの「種をまく人」で知られていますが、その他にも魅力がたくさんあってすっかりファンになりました。地元の人たちに愛されている美術館であること (県ナンバーの車が多かった)。企画展だけでなく、常設展示が充実していること。

ミレーに端を発してバルビゾン派の作品がコレクションの核となっていますが、山梨県出身の芸術家の所蔵作品も多く、県のアーティストの魅力を発信していること。館内にスタッフを多く配置しているところも好感が持てました。

館内は、ミレー館、常設展示室、萩原英雄記念室、特別展示室の4つのパートで構成されています。まずはミレー館から見て回りました。

 

農村の風景や農民の生活を描いた作品の多いミレーをはじめバルビゾン派の、色彩のトーンを抑えた作品が、展示室の赤い壁によく似合います。美術館のトレードマークでもあるミレーの (左) 種をまく人。そして (右) 落穂拾い、夏。

それぞれオランダのゴッホ美術館、アメリカのセントルイス美術館に貸出していたのがもどってきて、2つ並べて展示されていました。農民の姿が力強く描かれた本作は、発表当時は高く評価されましたが、一方で政治批判と捉えられ、議論を巻き起こしたそうです。

コレクションの中では、山梨出身の画家 佐藤正明さんの「ニューススタンド」シリーズに圧倒されました。多民族・多文化都市であるニューヨークのエネルギーが、細密描写の作品からあふれ出すように伝わってきます。

特別展は「栗田宏一・須田悦弘展 -Contentment in the details-」が開催中でした。お二人とも山梨県出身で、国際的に活躍している現代アーティストです。特別展は、撮影が可能でした。

須田悦弘さんは彫刻家です。木を繊細に彫り出して彩色した作品は、どれもリアリティたっぷり。このスルメイカ?も思わず手を伸ばして確かめたくなりました。

この他、朴の木を薄く薄く削り出して彩色したさまざまな花の彫刻を、それぞれのために特別に用意した空間とともに展示するインスタレーションが印象的でした。

写真はタイサンボク。アメリカではマグノリアとよばれる南部を象徴する花です。弧を描いた白く細長い空間の奥にひっそりと咲いていました。別の空間ではマグノリアの花びらが散り、芯だけが残っていました。

円い池を模したツルツルとした板の上に咲いていた水連。これも木を薄く削って作られています。この他、コンクリートの割れ目から顔をのぞかせる、ツユクサなどの雑草を削りだした彫刻作品も存在感がありました。

栗田宏一さんは土をテーマにしたインスタレーションで知られるアーティスト。日本中そして世界各地の土を採取し、それを乾燥させてふるいをかけることで、それぞれの土が持つ固有の表情を引き出します。

土は湿っている時は茶色ですが、乾かすと思いがけない色が現れるのだそうです。上の写真はどう見てもカレーのスパイスですが^^ これが全て土であることに驚かされます。

日本各地で採取した土のコレクション。四角い和紙の上に四角く均一に広げられていますが、これだけで気が遠くなるような作業です。この作業の過程も作品の一部です。

それにしてもピンクとか紫とか水色とか、ほんとうにこんな色の土があるの?というくらい、それぞれの土が持つ表情の豊かさに驚かされます。

こちらは日本中から集めた土がふるいにかけられ、微小な粒子がそれぞれ試験管のような共通の瓶に納められています。ずらりと並んでいると圧巻で、一見絵を描くパステルのようですが、それぞれにはラベルがつけられ、まるで実験試料のようです。

そういえば山梨県出身のノーベル生理学・医学賞受賞者 大村智博士は、やはり世界各地の土を採取して人体に有効な微生物を集めたことを、以前本を読んで知りましたが、偶然とはいえ栗田氏との不思議なつながりを覚えました。

会場では、栗田宏一さんと須田悦弘さんのインタビュー映像も上映されていましたが、お二人のお人柄も垣間見え、興味深いお話をうかがいました。


ベゾアール(結石) シャルロット・デュマ展

2020年09月13日 | アート

POLAのギャラリーを訪れた後、銀座メゾンエルメス フォーラム で開催中の「ベゾアール(結石) シャルロット・デュマ展」(Bezoar by Charlotte Dumas) を見に行きました。

Yorishiro 依代 2020

シャルロット・デュマは、アムステルダムを拠点にするアーティスト。現代社会における動物と人の関係性をテーマにした写真や映像作品を、20年にわたって発表してきました。

2014年からは、北海道、長野、与那国島などを巡り、日本の在来馬の撮影を続けているそうです。本展では、デュマの3つの映像作品を中心に、馬に関連する史料や写真、オブジェなどが展示されていました。

パリの馬具工房からはじまったという、エルメスならではの企画展です。

エレベーターで8階ギャラリーに上ると、黄金の馬がお出迎え。デュマが、パリのエミール・エルメス・コレクションを初めて訪れた時、たちまち心奪われたオブジェだそうです。東洋の仏教寺院のために作られた?という馬は、ずんぐりとしていかにも働き者といった風情です。

壁伝いに、馬にまつわる写真や道具が展示されていました。

右は、かつて日本で馬に履かせていたという馬沓(うまぐつ)。今は蹄鉄に変わってしまいましたが、新潟県で作り方を知っているという職人さんが見つかったそうです。藁沓はすぐにダメになるので、旅の際には履き潰した沓の数で、およその道のりを知ることができたそうです。

左は、かつて使われていたという馬のお腹に巻く帯。保護と装飾を兼ねたものでしたが、現代では廃れてしまいました。デュマは、沖縄在住のテキスタイルデザイナー、キッタ・ユウコさんとともに現代的な帯を考案し、映像作品に登場させました。

映像は、デュマが与那国島で撮影した「潮」という作品。沖縄生まれの少女”ゆず”と、与那国島で生きる馬たちの物語です。セリフはほとんどありませんが、人間の原点の生活がここにある、という思いを抱きました。

上でたなびいているのは、前述のキッタ・ユウコさんが琉球藍で染めたという36枚のテキスタイルです。沖縄の青い海を思わせる琉球藍。室内のわずかな空気の流れに揺れ動き、寄せては返す波のようでした。

今回は、9階にも展示がありました。手前にあるのは馬の頭蓋骨。向こうに見えるのは、本展のタイトルにもなっている結石(ベゾアール)です。結石は動物の胃の中に形成される凝固物。草といっしょに飲み込まれた小石にカルシウムが付着してできるそうです。

特に水分が不足すると石は巨大化し、死に至ることもあるようです。馬の体内でこんなにすべすべで美しい丸い石ができるというのはなんとも神秘的ですが、かつて世界各地でお守りや雨乞いに使われたというのも納得です。

9階から見る8階の展示室。


Takahiro Matsuo 「INTENSITY」

2020年09月12日 | アート

銀座の POLA MUSEUM ANNEX で開催されている Takahiro Matsuo 「INTENSITY」を見に行きました。

会期が9月22日まで延長されています。またコロナ対策のため、入場には事前予約が必要です。詳しくはホームページをご確認ください。

本展は、光を使ったインスタレーションで知られる、松尾高弘さんの作品展です。タイトルの INTENSITY は「強度」という意味。光と映像、照明、水をそれぞれ組み合わせた3つの作品が展示されていました。

いつもは真っ白なPOLAのギャラリーが、今回は黒い幕に覆われ、さらに3つの空間に仕切られています。3つの作品をそれぞれ別の空間で鑑賞するという趣向ですが、真っ暗で何も見えないので、移動するのもおそるおそるです。アトラクションのような感覚で楽しめました。

私は1つめの映像作品を後から見ることにして、まずは2つめの部屋に入りました。

FLARE(フレア)

真っ黒な空間に咲き誇る巨大な白い花。光とプリズムを使ったライティングオブジェクトです。遠くから見ると矢車草のように見えましたが

虹色に分光された花びらがキラキラ輝いてとってもきれい。冷たく輝く花びらは、結晶のようにも、ガラスの破片のようにも見えました。

SPECTRA(スペクトラ)

一番奥の部屋にあった新作は、光と水のインスタレーション。上から幾筋もの水がまっすぐに落ちていますが、まるで閃光のようにまばゆく輝いています。

最初は水なのか、光なのかわからず、思わず手を伸ばして確かめたくなりました。(触るのは厳禁) 幻想的な人工の滝です。

Phenomenon(フェノメノン)

一番手前の部屋にあった、映像作品。横に細長いパネルを、左から右へ、数百万もの黄金の粒子が流れるように形を変えながら移動していきます。12分20秒をかけて全てが移動し終えると、やがて真っ黒な静寂が訪れます

心を無にしていつまでも見つめていたくなる、不思議でスピリチュアルな作品でした。


没後15年 心の絆 ロバート・ハインデル展

2020年09月06日 | アート

代官山ヒルサイドフォーラムで開催された「没後15年 ―心の絆― ロバート・ハインデル展 Let Art Heal Your Soul」を見に行きました。(8月30日にて終了)

「美術手帖」のサイトで知ったこちらの展覧会。ロバート・ハインデルという画家は初めて知りましたが、ひと目で独特のタッチに心を奪われ、作品をもっと見てみたいと思いました。現代のドガと称されていると知り、いかにも、と深く納得したのでした。

ハインデルは、1938年アメリカ・オハイオ州生まれ。1960年代頃からバレエやミュージカルを題材にした作品を描き、約1500点を残しました。本展ではその中から約60点の作品が展示されていました。

Pas de deux with floormarks 1984

ハインデルの作品は、舞台の上のダンサーではなく、練習中のダンサーの一瞬の動きをとらえた作品が多かったです。そういえば、ドガが描いたのも、楽屋や練習での踊り子たちだったことを思い出します。

後半は、なぜか練習室の床の線に注目した作品も多く、具象画から抽象画への変遷も感じられました。

The Wall 1987

バレエの練習風景というと、みんながいっせいに同じポーズをしているところを思い浮かべるので、ひとりひとりが違う服装で、それぞれ違う練習をしているのが、なんだか新鮮に感じられました。コンテンポラリーバレエや、ストリートダンスのようにも見えます。

At the Penguin Cafe 1993

こんなお茶目な作品も。ペンギンカフェというバレエを描いたものです。

Red headed Dancer 1998

ダンサーというより、動きそのものを描いているように感じられました。躍動感あふれる作品です。

Dancer from Japan 2000

ロンドンのロイヤル・バレエでプリンシパルを長年務めた、吉田都さんを描いた作品が3点ほどありました。ハインデルの作品は、ダンサーの動きに注目し、顔の表情は曖昧なまま、描かれていないものが多いですが

本作はめずらしく、吉田さんの動きというより、真剣な表情にフォーカスされていて、目を引きました。


モネとマティス もうひとつの楽園

2020年08月30日 | アート

箱根へのドライヴを兼ねて、ポーラ美術館で開催されている「モネとマティス もうひとつの楽園」を見に行きました。

本展では、19~20世紀フランスの画家、モネとマティスにフォーカスにしています。急速な近代化と度重なる戦争で混乱した社会状況の中、2人はそれぞれ現実世界に「楽園」を見出しました。

パリの北西にあるジヴェルニーに終の住処を構え、理想の庭園を作り上げたモネ。そして南仏ニースに居を構え、室内に理想の空間を作り上げたマティス。

本展はコロナの影響で会期を変更し、海外からの作品の借用も延期になったそうですが、ポーラ美術館の充実した所蔵作品の他、国内外からの借用作品、私が訪れた時にはマルモッタン・モネ美術館の作品も到着していて、見どころいっぱいの企画展でした。

モネ「ポール=ドモアの洞窟」1886 茨城県立美術館

フランス北西部・ノルマンディ地方を旅して、各地の風景を描いたモネ。いつかモネが描いた絵の舞台を訪ね歩く旅がしてみたい。

モネ「ジヴェルニーの積みわら」1884 ポーラ美術館

モネの数ある積みわらの中でも、この作品は明るい色彩とくっきりした輪郭に力強さを感じました。なぜかモンブランが食べたくなりました。

モネ「小舟」1887 マルモッタン・モネ美術館

5年前のモネ展以来の再会です。水草のうごめきを中心に据えた大胆な構図。やっぱり好きな作品です。

モネ「水連の池」1899 ポーラ美術館

浮世絵に心酔し、川を自邸の庭に引き込んで池とし、太鼓橋を架けて、柳を植えたモネ。「水連の池」はいくつものバージョンがありますが、この作品は緑に染まった初夏の日差しが輝くほどに美しい。

モネ「水連」1907 アサヒビール大山崎山荘美術館

この作品は、大山崎山荘美術館で見て以来、6年ぶりの再会です。安藤建築の水連の展示室を思い出しました。モネの水連もいくつものバージョンがあり、今回7点ほど出品されていましたが、この作品のブルーの美しさに吸い込まれそうになりますした

パリのオランジュリー美術館と同じように、水連の展示室が楕円形に区切られていたのも心憎い演出でした。

マティス「鏡の前の青いドレス」1937 京都国立近代美術館

ファッションやテキスタイル、装飾品の好きな私には、マティスの室内画にも心惹かれます。

マティス「リュート」1943 ポーラ美術館

鮮やかな色使い、インテリア、小物のレイアウト、ドレス、全て好きです。まるで雑誌 VOGUE の1ページのよう。

「リュート」に描かれたドレス マティス美術館、ル・カトー・カンブレジ

作品に描かれたドレスも展示されていて感激しました。絵では「K」の模様がピンクで強調されていますが、実物はレースの模様になっています。華奢で楚々としたシルエットも愛らしい。

この他「リュート」を原画にしたタペストリーも2作品あり、いろいろな角度からこの作品の魅力が味わえました。


開校100年 きたれ、バウハウス

2020年08月13日 | アート

東京ステーションギャラリーで開催中の「開校100年 きたれ、バウハウス―造形教育の基礎―」を見に行きました。

1919年、ドイツのヴァイマールに開校した造形学校バウハウス。ナチスの弾圧を受け1944年までのわずか14年という活動期間でしたが、実験精神に満ちた革新的な造形教育から生まれたデザインは、現代のアートとデザインに大きな影響を与えています。

私もバウハウスのモダンで機能的なデザインが好きで、カンディンスキーやクレーが教壇に立った独特の造形教育にも興味があり、過去に何度か展覧会を訪れています。

バウハウス・デッサウ展 @東京藝術大学美術館
バウハウス・デザイン バウハウス・キッチン @パナソニック電工 汐留ミュージアム

今回は開校100年を記念して全国を巡回した回顧展で、バウハウスで行われた基礎教育に注目しているほか、その成果となるさまざまな作品、またバウハウスで学んだ4人の日本人についても紹介しています。

(撮影不可のため、画像はいずれもネットからお借りしたものです)

私が特に興味をもったのは「バウハウスの教育」のコーナーです。入学した学生たちが最初に学ぶ基礎教育が、各教官ごとに紹介されています。写真はカンディンスキーの授業風景の再現です。端正に構成される道具たちは、その佇まいだけで美しい。

私が一番気に入ったのは、ヨゼフ・アルバースの授業です。色彩構成で知られるアルバースですが、切込みから生み出される立体のおもしろさに、飽きることなく見入ってしまいました。

フォントが好きなので、シュミットのレタリングの授業にも興味を持ちました。

「工房教育と成果」のコーナーでは、バウハウスで学び後に教官となったマルセル・ブロイヤーのワシリー・チェアのコレクションが圧巻でした。

同じくブロイヤーのトレードマークでもある、金属パイプを使ったネストテーブルや、テーブル&チェアー。

東京ステーションギャラリーは、東京駅丸の内駅舎の中にあり、八角形のドームや、古い赤レンガを生かした展示室も魅力。ここではバウハウスデザインのキッチン用品の数々が、ドームに合わせた八角形の大きなテーブルの上に展示されていたのが心憎い演出でした。

広告の授業の習作。こういう身近なものから、当時のドイツの暮らしぶりがうかがえるのも楽しいです。

なお、当展はコロナ感染予防で密を避けるために、事前にインターネットあるいはローソン、ミニストップでの予約が必要です。ネットは入館時間の3時間前、ローソン、ミニストップでは30分前まで予約可能です。詳細はホームページをご確認ください。


もつれるものたち & MOTコレクション

2020年08月09日 | アート

オラファー・エリアソンを見に東京都現代美術館を訪れましたが、チケット売り場でポスターに惹かれ、あわせてこちらも見てみることにしました。

カディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展 もつれるものたち
(コロナの影響により日程変更 6/9~9/27 開催)

カディスト・アート・ファウンデーションは、パリとサンフランシスコを拠点に、社会性のある現代美術の作品の収集と展示を行っている組織だそうです。本展では、12人/グループの若手アーティストが参加し、作品を通して現代社会の問題を提言していました。(写真撮影可)

トム・ニコルソン「相対的なモニュメント(シェラル)」2014-2017

第1次世界大戦時に、オーストラリア兵がガザから持ち帰ったシェラル・モザイクが、オーストラリア戦争博物館に展示されているそうです。オーストラリア人アーティストのニコルソンは、新たなシェラル・モザイクを作り、ガザに返還するという展望を持っています。

岩間朝子「ピノッキオ」2020

第2次世界大戦時、日本軍が松の根から航空燃料を得ようとした史実を知った岩間氏は、開発方法や、ドイツやフランスでの松の木の利用について調べ、採取に使用する道具や蒸留装置、人間と松の木をテーマにした作品を作り上げました。

磯部行久「不確かな風向き」1998

風のエネルギーの流れによって絶えず変容する環境を表現したコラージュ的な作品。

磯部行久「国土庁調査 大阪湾 耐震土地条件図」他 1976

地図好きの私の目をとらえた作品です。ペンシルベニア大学で地質学などを学んだ磯部氏は、国土庁から委託され、大阪湾と六甲山のエコロジカル・マッピングに携わりました。科学と美術を織り交ぜた地図作成によって、環境問題への提言を行っています。

***

このあと、館内のカフェ「二階のサンドウィッチ」で軽くお昼にしました。

個性的なサンドウィッチが何種類もあって、どれもおいしそう! 私はチキンを使ったバインミーをいただきました。

食後はせっかくなので、美術館所蔵作品も見ることにしました。

MOTコレクション いま―かつて 複数のパースペクティブ
(コロナの影響で日程変更 6/2~9/27開催)

東京都現代美術館は、戦後美術を中心に約5500点を所蔵しています。今回は、3年間の改修期間に寄贈された400点の中から、180点が展示されています。(一部を除き撮影不可)

1階展示室の入口空間に展示されている、アルナルド・ポモドーロの「太陽のジャイロスコープ」。以前は屋外に展示されていたそうですが、この度の美術館改修を機に、修復してこの場所に移設されました。

中世の天球儀から着想を得たというこの作品は、太陽と地球、地球と月、朝と夕という対比が、時の移ろいとともに位置関係を変化させていく様子を表現しているそうです。

松江泰治「JP-13 02」2017
(画像はサイトからお借りしました)

コレクションの中で特に心をとらえたのは、松江泰治さんという写真家です。アンドレアス・グルスキーのような作風で、東京の風景を切り取っています。上の作品は、東京の木場を空撮で撮影したものです。


オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

2020年08月08日 | アート

東京都現代美術館で開催されている「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」(Olafur Eliasson - Sometimes the river is the bridge) を見に行きました。 

オラファー・エリアソンは、デンマークとアイスランド出身の現代美術家。光や水を使った大がかりなインスタレーション作品で知られています。私が初めて彼の作品に出会ったのは2008年のニューヨークです。

夕暮れのバッテリーパーク♪ (2008-09-02)

この時はエリアソンの名前すら知りませんでしたが、突然現れた巨大な人工の滝に度肝を抜かれ、後でニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズというインスタレーションだと知りました。

また金沢21世紀美術館で、屋外の常設展示でエリアソンの「カラー・アクティビティ・ハウス」という作品の中に入ったことも、旅の思い出のひとコマとなっています。

本展ではサステナビリティ(再生可能性)をテーマに、エリアソンの作品17点が展示されています。科学の不思議を取り入れた体験型インスタレーションは、アートの枠を超えて楽しめました。(写真撮影可)

太陽の中心への探査 2017

展示室の中心に大きなガラスの多面体が吊るされています。ソーラーシステムによって周囲に映し出される幾何学的な光の模様が次々と変化し、まるで万華鏡の中に入り込んだような気分を味わいました。

あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること 2020

この展示室にあるのは3色のハロゲンランプだけですが、人が通り、動くことによって、壁に3色の影が映し出され、重なり合います。作品の主役は私たち鑑賞者なのですね。

サステナビリティの研究室 

ベルリンにあるエリアソンのスタジオで日々行われている、新しい作品を生み出すための実験とリサーチの数々。

中でも私を興奮させたのは、ミウラ折りを使った試作品の数々です。ミウラ折りは東京大学宇宙航空研究所の三浦公亮先生が考案した折り方で、宇宙機の太陽電池パネルなどに応用されています。20年ほど前に日本科学未来館で知り、深い感銘を受けました。

人間を超えたレゾネーター 2019

ガラスのリング状プリズムによって分光した光が、壁に同心円を描きます。このプリズムには、灯台の光が遠くまで届くのと同じしくみが使われているそうです。

おそれてる? 2004

3つの円形ガラスに特定の波長の光を反射し、補色が浮かび上がるよう加工されているそうです。次々と変わる3色のガラスと、投影された3色の影の組み合わせによって作り出される、光の不思議の世界を垣間見ました。

ときに川は橋となる 2020

大きな暗闇のテントの中央に置かれた小さなプールに12のスポットライトが当たっています。水に波を起こすと、周囲に12の波紋が映し出されます。波がやがて静まると、円い影となります。

ビューティー 1993

暗闇の中、霧状の水に光を当てて人工的な虹を作り出す、エリアソンの初期の作品です。この水の中を通り抜けることもできます。神秘的な美しさがあって、私は最も惹かれました。


幻想の銀河 山本基 ✕ 土屋仁応

2020年07月05日 | アート

銀座メゾンエルメス フォーラムを訪れたあと、THE GINZA SPACE で開催されている「幻想の銀河 山本基 ✕ 土屋仁応」を見に行きました。

THE GINZA SPACE は資生堂ギャラリーとは別で、2年前にできた資生堂の新しいマルチスペースだそうです。場所は銀座5丁目のあづま通り、トリコロール本店の並びです。入口はややわかりにくいですが、細いらせん階段を下りて、地下2階にあります。

私は5年前に銀座の POLA のギャラリーで、山本基さんのインスタレーションと出会い、深い感銘を受けたので、今回の展覧会を楽しみにしていました。コロナの影響により会期が変更となり、8月2日まで開催されています。

【参考記事】山本基展「原点回帰」@POLA MUSEUM ANNEX

今回は山本基さんの、塩を使った「たゆたう庭」というインスタレーションと、木彫作家である土屋仁応さんの「鹿」「月」という作品とのコラボレーションとなっています。

真っ白な空間に鏡の板が敷かれ、山本さんの塩で描かれた繊細な文様が広がっています。その上を土屋さんが制作された木彫りの鹿たちが佇んでいます。

銀河をイメージして制作されたという山本さんの作品と、本来地上にいる動物である鹿の群れとが組み合わされたことで、この世のものとは思えない、美しく、神々しく、幻想的な世界が広がっていました。

そういえば奈良公園では、鹿は神の使いとされていると聞いています。土屋さんが制作された白い鹿たちは、まるで神馬のように、神性が高められていると感じました。

会場にはステップがあり、少し高いところから作品を見下ろすことができます。銀河に佇むように見えた鹿の群れも、上から見ると、神様に導かれ、しっかりと歩みを進めているように見えました。

部屋の隅に1mくらいの高さの台があり、そこにも塩の文様と、立派な角をもつリーダー格の鹿の木彫りが展示されていて、目の高さで間近に作品を鑑賞することができました。

均一な厚みに絞り出された塩は、そのまま形を留めていて、塩だけでできているとはにわかに信じられないほど。手で触って確かめてみたくなりました。

幻想の銀河 - 山本基 × 土屋仁応

本展の紹介ビデオ

山本基(やまもと・もとい)さんのホームページ

土屋仁応(つちや・よしまさ)さんのTwitterアカウント


コズミック・ガーデン サンドラ・シント展

2020年07月01日 | アート

久しぶりに銀座でアート・ギャラリーのはしごをしました。まず訪れたのは、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催中の「コズミック・ガーデン サンドラ・シント展」(Cosmic Garden by Sandra Cinto)です。

コロナの影響で一時お休みしていましたが、再開して7月31日まで開催されています。ブランドには縁のない私もこちらのギャラリーは大好きで、これまで何度となく訪れてきました。

パリのポンピドゥー・センターと同じくレンゾ・ピアノが設計したこのメゾンは、ガラスのブリックでできているので、時間や天気の移り変わりをも取り入れた、この場所ならではの現代アートやインスタレーションが鑑賞できるのが魅力です。

本展のサンドラ・シントは、ブラジル・サンパウロを拠点に活動しているアーティストで、星や結晶、波などをモチーフとして用いたドローイングを主に、空間と関わり合いを持つインスタレーションを数多く手がけているそうです。

エレベータでギャラリーのある8階に上がると、壁に沿ってブルーのグラデーションが続き、その先には空色とも水色ともいえる淡いブルーの世界が広がっていました。極細の白い線やドットで描かれる繊細なドローイングは、島や橋、波を表しているようです。

あるいは、船や飛行機の航跡のようだったり、はえ縄漁業の網のようであったり、空中ブランコのようだったり。宇宙から見る地球は、こんな風に見えるのではないかと思われました。

シントさん自身、このような大きな作品を作るのは初めてのことで、今回は6人の仲間たちと作品を作り上げたのだとか。使っている画材はペンやマーカーなど、どこにでもあるもの。

シントさんは今は個人主義が進んで、誰もがコンピュータ上で自分の意見を言い合う時代だから、と仲間たちと手を取り合うことの大切さを語ります。

朝のスペースからグラデーションの通路を通って...

もうひとつのスペースは、がらりと変わって夜となっています。朝のスペースでは鳥の鳴き声や水のせせらぎが聞こえましたが、夜のスペースではコオロギの鳴き声や鳥の羽ばたきが聞こえます。

漆黒の空に満点の星。まるで宇宙空間に放り出されたようです。床には絨毯が敷き詰められ、クッションがぽんと置かれ、どちらにも星が描かれています。ここでは靴をぬいて、足で絨毯の感触を味わいながら作品を鑑賞します。

私は気がつかなかったのですが、ラベンダーとカモミールの香りも漂っていたようで、まさに五感で味わうアートでした。

2つのスペースをつなぐエレベータホールには、夜空いっぱいに打ち上げられた花火??

作品を鑑賞しながら、白の魅力を再認識しました。自宅の壁にドローイングしたくなりました。^^

EXHIBITIONS | Sandra Cinto, "Cosmic Garden" at Le Forum, Tokyo (1/2)

作品のメイキングと、シントさんのインタビューです。ゆったり語ることばに力を感じました。