しましましっぽ

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「白い犬とワルツを」  テリー・ケイ

2016年08月04日 | 読書
「白い犬とワルツを」  テリー・ケイ  新潮文庫   
TO DANCE WITH THE WHITE DOG     兼武進・訳

81歳のサム・ピークの最愛の妻コウラが亡くなった日、日記にこう記した。
「きょう妻が死んだ。結婚生活57年、幸せだった。」
それは今まで1番簡単な日記。
足が不自由で、歩行器を使っているサムを子どもたちは心配する。
しばらくは誰かが交代で父親の家にいるようにいていた。
その後は、近くに住んでいる、ケイトとキャリーが頻繁に顔を出す。
娘の気持ちは分かっているが、サムは自分の出来る事はしたいと思っていた。
そんな時、庭に真っ白な犬がいることに気が付く。
そして、犬はいつの間にかサムの側にいるようになる。
サムにはひとつ計画があった。
子どもたちは反対するだろうから黙っていた。
それは60年前に卒業したマディソンの学校の同窓会に行く事。
コウラが、死ぬ前に届いた案内状を見て「行ってみたい」と言ったから。
マディソンは2人が出会った、コウラが好きな街だった。
サムは免許は持っていなかったが、オンボロトラックを運転する事が出来た。






サムの気持ちと子どもたちの気持ち。
お互いに深く思い遣っているのだが、微妙なずれがある。
それぞれ意志がある人間が100%分かり合えることはないのだ。
お互いに流れる時間の感覚も、人それぞれ。
ただ相手が何を思ってそう考えるのかが、年を取ったサムの方が分かっている。
それは人生の経験が長く豊富だからか。
その分寛大にもなれるのだろう。
日記を書くことで、自分のことや相手の事を落ち着いて考える事が出来るサム。
サムの気持ちがより深く分かり、妻を失った寂しさと孤独を強く感じて切なくなる。

そして不思議な白い犬の登場。
まるでサムを見守っているように。
実際、サムのピンチには他の人の目にも触れ助けてくれた。
誰かがいつも見ていてくれるよという象徴なのかも知れない。
それはコウラか、神様なのか。
側にいてくれると分かると落ち着ける存在。
それは真っ当な人生を歩んで来たからなのだろう。
心が穏やかになる物語。
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