しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「クロノス・ジョウンターの伝説(新編)」 梶尾真治  

2005年12月23日 | 読書
クロノス・ジョウンターと言う『物質過去射出機』で過去の跳んだ3人の物語。
クロノスは時間を司る神。ジョウンターはジョウントする、空間から空間へ跳ぶ状態。
同じ機能を持った機械がSF小説『虎よ虎よ』に出て来るので、SF愛好家の開発チーフの野方が命名したとの事。
クロノス・ジョウンターで過去に送られた物は数分で未来にはじきとばされる。
「吹原和彦の軌跡」
1995年、事故で死んだ、恋しい人・蕗来美子を助ける為、開発メンバーの一人だった吹原は無断でクロノスを作動させ、過去へ向かう。
しかし救出は失敗。1年8が月後の1997年に飛ばされた吹原はそこからまた過去へ行く。
2度目の失敗で飛ばされたのは5年後の2002年。3度目は2058年。
博物館に保管されたクロノスを見つけもう一度過去へ向かう。ここから飛ばされるのは6090年。しかし吹原は諦めようとはしなかった。
「布川輝良の軌跡」
1996年、実験データを取る為にクロノスで跳ぶ志願者を打診された布川は、
建築家・廣妻隆一郎の最後の建造物を見たくて承知し、5年前の過去に跳ぶ。戻るのは2026年の予定。
固定装置が開発され、過去にいられる時間は3日ほどに延びていた。
布川はそこで枢月圭と出会い、お互いに一目惚れをしてしまう。
布川は圭にすべてを話す。未来に引き戻される時、圭が「必ずまた会える」と言う。
布川は予定通りの2026年に戻った。しかし、クロノスの開発は取り止めになっていた。
寂しく年を過ごした7年後の2033年、布川の元に別れた時と変わらない姿で圭が訪ねて来る。
「鈴谷樹里の軌跡」
1980年、11歳の時に病院に入院していた樹里は同じく入院患者の青年・青木比呂志と出会い、恋をする。
しかし比呂志は難病で死んでしまう。
1999年、医者になりその難病の治療薬を手に入れた樹里はその薬を持って、比呂志を助ける為に過去に跳ぶ。
見合い相手と知り合った野方から、偶然クロノスの事を聞き、脅迫半分に頼み込んでの事だった。
比呂志を助ける為、過去の留まろうとした樹里は2035年まで跳ばされる。
樹里は本棚に、青木比呂志の本を見つけ、比呂志が助かった事を知る。
そして、その比呂志が訪ねて来る。あの時と変わらない姿で。

「吹原和彦の軌跡」がキャラメルボックスで舞台化したもの。くみこは久美子ではなく来美子なんだ。
登場人物も少なく、ひたすら吹原の思いが伝わる。
初めて人間がクロノスで跳んだので、一番過酷な目にあったのかも知れない。
さすがに6090年は出てこない。
後の2つはハッピーエンド。
3編に共通するのは、究極のラブストーリーだと言う事。
未来に跳んでも、そこは現代とあまり変わらず、ディックの様な戦争中や廃墟になった怖い未来ではなくて、よかったねと思う。
輝良と樹里は、恋した相手が自分と年も変わらずに再会出来ると言う、こんなにハッピーでいいのと思ってしまう。クロノスの性能は2人の場合、かなり正確になって有能になっているから、開発中止にしなくても、使い道がありそうな気もする。
一応、本では、タイムパラドックスも考えられていた。そうだよね。
あとがきに変えた、「時の力と愛の力」も面白かった。
「鈴谷樹里の軌跡」で話された『たんぽぽ娘』は実在のSF小説なんだ。知らなかった。きちんと結末まで知る事が出来てよかった。途中で終わったのか・・・と思っていたので。

私がタイムマシンと言うものに一番始めに触れたのは、手塚治虫先生の『W3』。
3人の宇宙人・ボッコ、ブッコ、ノッコが地球に追放された時、時間をさかのぼって、
調査している自分達と会っていたのだと最後に分かった時、子どもながらにとても不思議な、理不尽な、切ない、なんとも言えない思いにとらわれた事を思い出す。
タイムマシンは、そう言う色々な思いが混ぜこぜなる話になると思う。

命名になった元の『虎よ虎よ』はSFを読み始めた頃に読んでいるが、昔なのであまり憶えていない。あれは、電話ボックスのような形で、星から星へ瞬時に移動出来るものではなかったのかな。
同じ頃に読んだ、ハインラインの「夏への扉」もタイムマシンだった。


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