しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「鏡の背面」  篠田節子

2019年07月15日 | 読書
「鏡の背面」  篠田節子   集英社    

軽井沢にある十数人が暮らせる『新アグネス寮』は、あらゆる問題を抱える女性を分け隔て無く受け入れる施設だった。
施設を立ち上げた小野尚子は、歴史ある老舗出版社の娘だったが、離婚などからアルコール依存症となる。
立ち直りの助けとなったのが、クリスチャン系「白百合会」の『聖アグネ寮』での暮らしだった。
その施設と多少違う思考から、独立して作ったのが『新アグネス寮』。
代表は中富優紀だが、尚子は事実上の施設長で、資金面の支えでもあった。
30年余り過ぎ尚子が67歳の時、『新アグネス寮』が落雷から出火し、入居者を助けて、尚子と立ち上げの時からのスタッフ榊原久乃が焼死する。
2人のお別れ会も終わり、入居者たちの身の振り方も決まった頃、優紀は警察から思いも寄らない事を知らされる。
小野尚子と思われた遺体は別人だった。
2年前、雑誌の取材で小野尚子を2日間インタビューしたライターの山崎知佳。
あることが切っ掛けで、優紀から遺体が別人だったとの話を聞く。
手元に残っていた今と昔の尚子の写真を専門家に解析してもらうと、自分がインタビューしたのは尚子とは違う人物だった。
やがて警察は歯の治療記録から、死んだのは半田明美と判明したことを知らせて来る。
尚子より6歳年下の明美はかつて連続殺人事件の容疑者としてマークされていた人物だった。
知佳と優紀は、2人がどこで入れ替わったのか、その理由はなにかを調べ始める。







小野尚子と半田明美。
生まれも育ちも全く違う2人。
与える人生と奪う人生。
尚子も決して幸せな生き方をして来なかったのだが。
半田明美がいつの間にか、尚子として存在していた。
それは何故、そしてどうして起こったのか。
それを探る物語。
半田明美と言う人物について書かれた記事を、鵜呑みにしない優紀。
優紀の描く、明美のストーリーに、明るい展開も期待出来た。
途中で、“これはホラー”と思い始めた時もあった。
「新アグネス寮」に居る人達の人生。
色々考えさせられながら、テンポよく物語が進む。
ただ1番気になっていた事ははっきりしなかった。
それで納得してしまうには、少々無理があるような。
もっと誰もが納得出来る、何かがあるのかと思っていた。
火事で亡くなった榊原久乃の『そうはさせませんよ』の言葉がもっと何かあると予感させたのだが。
そう言えば、久乃はどんな風に考えていたのだろう。
「羊飼いの役目」と言うのはあったが、もう少し詳しく知りたかった。


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