しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「無痛」 久坂部羊 

2008年07月01日 | 読書
「無痛」 久坂部羊    幻冬社

神戸で開業する47歳の医師の為頼英介は、見ただけで病状や予後が分かる。
それは、病気特有の兆候が為頼には見えるからだった。
為頼はふとしたことで臨床心理士をしている27歳の高島菜見子と知り合う。
菜見子は為頼に自分が勤める六甲サナトリウムという精神障害児童施設に入所している南サトミについて相談にくる。
サトミは14歳で、境界型人格障害で自閉症もあり、菜見子とだけ携帯メールを通じてやり取りをする。
そのメールで、8ヶ月前に起きた、教師一家4人が殺された事件は自分がやったと言ってきたという。
一方、教師一家殺害事件の捜査にあたった灘署の早瀬順一郎刑事は、犯行の異常さから人格障害が疑われることに沈痛な気持ちになる。
刑法39条が適応されれば、犯人逮捕が虚しくなる。



医学と刑法39条がメインになっている物語で興味深い。
刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を軽減する」
何故この法律が出来たか、被害者側と当事者側からの考えなども丁寧に書かれている。
そして、病気に対する治療の考え方も。
為頼の様に判断が出来る医師は存在しているのだろうか。
治療をしなくても、治るものは治るというのも分かる気がする。
世に中には白黒をはっきり決められない、どちらが正しくどちらが間違っているとは言えないこともある。
難しい問題だ。
しかし、日本の刑法は加害者の方に甘いとは思う。
考えさせられることが多いが、かなりグロテスクな内容もあり、読んでいて少々疲れる。
そして、冒頭に通り魔事件が起こるが、それが先日の秋葉原の事件と似ていて怖い。
そういう犯罪を起こしそうな人が分かると為頼が言うが、もしそうなら対応が凄く難しくなるだろう。何しろ今は事件が起こらなければ動かない、動けない警察だから。
近未来のSF小説でもある素材だ。
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