しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「烏賊ホテル」 創造集団トパーズ第3回公演

2006年10月31日 | 観劇
2006.10.20(金)~24(火) 俳優座劇場

<ストーリー>
 ある男のもとに1通の手紙が届く。
「いかホテルに来て下さい。お母さんん会いにきて来て下さい」と言うものだった。
そのイカホテルと呼ばれる古い家は売りに出ていて、その日も不動産屋さんとお客さんが訪れていた。
手紙をもらった男がやって来て、3人が同じ手紙をもらっていた事を知る。文面は同じ物。と言う事は3人は兄弟なのか。
そこに第4の男が登場、3人を兄さんと呼ぶ。
真相を知っていたのは、その母からすべてを聞いていた最後に来た男だった。
客として訪れたのが長男の西貝一之介、大学教授45歳。
不動産屋さんが次男の亀田二郎、40歳。
手紙を持ってやって来たのが三男の長岡隆、刑事35歳。
最後に来たのが四男の小泉正太、ホスト30歳。
長男は母親の思い出を大切にしていて、次男は捨てられたと恨みにも思い、三男は母親は死んだと聞かされ会った事もないが、ずっと母親を思いひとりで育ててくれた父親を尊敬していた。                 
その母親が病気で、死ぬ前に兄達に会いたいとの母親の希望を叶えるべき、まとめ役をする四男。                    
母親からすべてを聞いて、それを兄達に伝える四男と、それに合わせて自分の記憶や思い出を語っていく。
4人の母親、小泉とわの人生が明らかになっていく。          
そして、4人の思いが段々「おかあさん」と言う思いでひとつになっていく。

<感想>
 ストーリーを読んだ時は、4人の異父兄弟の誕生の話が、「えっ」と言う感じで、結構きわどい話なのかと思ってしまったが、原作があのジブリの「おもひでぽろぽろ」の人、岡本蛍さんと言う事で「ん?そんな話なの?」とよく分からず観に行った。
実際はとても気持ちが温かくなるハートフルコメディー。
頂いたパンフにある様に、「親と子」「兄弟」「家族」の事を大切に考えられる作品だった。
 それは母の生き方を知り、自分の事をずっと思っていてくれた事を知り、自分も母親を求めてる事に気が付いていったからだろう。         
そして、それぞれ過酷な境遇を生きて来た兄弟にも共感して行く。仲間意識が芽生える。仲間ではなく兄弟だから尚更か。
「おかあさん」と4人が思う気持ちが優しく伝わって来た。
その場にいない、小泉とわの存在が大きく感じられる舞台だった。

心が温かくなる、愛情の溢れるストーリー。
その愛情に気が付いて行く過程がとても丁寧に演じられている。
台詞で伝わって来る部分もあり、沈黙の中で空気で伝わってくれる事もある。沈黙のシーンがとても雄弁だった。
コメディーで笑う所も多かったけれど、しんみりとジーンと来るのをじっくり感じられる静かな舞台でもあった。
台詞の内容もやり取りも面白かった。

4人の空気感がとてもよく、すごく馴染んでいた。
すごくいい話で、個性的な4人がとても良くて、演技というか4人兄弟のやり取りに引き込まれて観ていた。
1時間40分の公演だが、小泉とわの生き方に触れて、話を聞き終わった時には、なんだか気持ちがいっぱいで、「はぁ」と一緒に疲れた感じがした。とても良かった。
こういうのは好きだ。

<個人感想>
*渋谷哲平 西貝一之介(長男)
 真面目な大学教授で、穏やかな感じだが、母親を崇拝していた。だから、結婚出来なかったのかな。人付き合いは苦手な感じ。
穏やかだけれども、母親を侮辱される様な事を言われると激怒する。
元アイドルの渋谷さん、結構大きくがっちりとした人。
舞台で歌った歌は渋谷さんの持ち歌なのですよね、きっと。
汗を拭くのに、青いハンカチを使っていたのは、ハンカチ王子の影響でしょうか。

*越川大介 亀田二郎(次男)
 ちょっとやくざな性格の役だけれど、頭が良くて、ひとの気持ちもよく分かって、結構人間的には出来た人物という感じの次男。
笑顔が子どもの様に可愛くて、ちょっとむっつりしている時とのギャップがいい。
木馬に乗った時とか、そのまま子どもの頃が想像できそうだった。
自分を捨てた母親と言いながらも、最初から愛情は感じられた。

*朝広亮二 長岡隆(三男) 
 他の3人は母親に対する愛情が見えるけれど、隆には見えない。それはそうだ、一度も会った事がないのだから。隆が愛情を持っているのは父親。父を通して母をみていた、それがちゃんと感じられるのが凄い。
人の良さそうな刑事さんはきっとお父さんと同じなんだろう。
でも、刑事になった時は厳しさも出せるし、メリハリがあった。

*及川健 小泉正太(四男)
 及川さんが演じると、何を見てもこの役は及川さんにぴったりと思ってしまう所が凄い。それだけそのキャラクターになっていると言う事だと思う。
今回の正太の役は明るくお調子者。とんでもないお父さんの性格も受け継いでいるというのが分かる。そして、可愛いらしく、守ってあげたくなる愛すべきキャラクター。これは他でもあるが、あまり頭がよさそうに見えなかったのは始めてかも知れない。
同じ様な性格の役でもちゃんと違う人になっている。
今回は見ていて、及川さんというより、小泉正太として見ていた。

及川さんのブログが始まり、舞台を見ながら裏話(?)も聞く事が出来て、より面白かった。
ご本人の言っていた通り、今までで一番明るい脳天気な青年だったと思う。
職業がホストというので、また衣装はフリルブラウスかなとちょっと思っていたが、衣装は全く職業とは関係なかった。なんと書けばいいのだろうと思っていたら、二郎さんが言ってくれた。「釣りキチ三平」って。     
デザイン学校に行ってグラフィックデザイナーを目指していたと言う設定は、及川さんに合わせてそうなったのかと思ったら、そうではなく、これには及川さんも驚いたそうだ。

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