しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「顔なし子」  高田侑 

2015年01月24日 | 読書
「顔なし子」  高田侑    幻冬舎   

39歳の美笹修司は妻と5歳の息子を連れて、故郷の寒村に戻って来る。
大学から東京に出て会社に勤めていたが、東京での生活に見切りを付けてのUターンだった。
実家には70歳になる父親が一人暮らしをしていた。
修司が中学生の時ある事件があり、それが故郷を重いものにしていた。
それは、母親が亡くなり喪の明けぬ内に父親が再婚すると言い出した事から始まる。
父親が連れて来たセリという綺麗な女性は、修司より少し年下の男の子、桐也を連れていた。
その時生きていた祖母は反対し、喪が明けるまではとセリと桐也は近くのタケイシ住宅に住む事になる。
そして、セリ親子に不幸が訪れ、桐也は村人を憎むようになる。
桐也は3年くらい前から消息を絶っていた。
やがて村で事故が起こり、桐也の姿を見たという噂が立つ。







2人の子ども、修司と桐也が係った人生。
それが大きく、大人になっても影響している。
過去の事件が、今の事件を通して桐也の存在が、暗く影と落とす。
真相が分からなかった時、とても不気味に得体の知れない者となっていた。
勝手に妄想が膨らんで手に負えなくなって行くように。
それが、真相が分かるとガラリと姿を変え、空気さえも違って感じる。
闇に光が射したように。
思い込みで、こんなにも変わってしまうのかと思うほど。
辛い過去には、また違った現実があった。
人生は複雑で、辛くて、悲しい。
それでも時が経ち、力強く生きて行くことが出来る。
そんな事を感じさせてくれる物語。
しかし、セリの最期はあまりにも桐也に残酷だ。
普通の精神状態ではなかったから、なのだろうけれど。
自分の子どもにどれほどの苦痛を与えてしまうのか。
それまでの事と合わせても、桐也の試練が過酷だ。
だから、ラストで少しは救われた気持ちになれた。


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