しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「彼方の微笑」  皆川博子 

2011年10月03日 | 読書
「彼方の微笑」  皆川博子         創元推理文庫

日高環は12歳の冬に、凄まじい幻視体験を持つ。
空が赤く凝固した空が砕け黒々とした空洞になる。
その空洞が心を鎮める美しい青になり、その青に光が溜まって微笑している。
そんな体験を一浪して入った美術大学の1年の時、もう一度する。
そんな時に出会った大学の先輩、大島公彦の誘いもあり、環はフレスコ画を学び始める。
数年後、大島の助手として、聖堂学園の礼拝堂の壁画制作に取りかかっていた。
その礼拝堂が、学生によって爆破される。
自分たちの壁画が、暴力にはなんの力もなかったことに、ショックを受ける。






環という名の主人公は、『冬の旅人』と同じ。
はやり絵画に魅せられ、革命直前のロシアに留学する。
同じ名前なので、係りがあるかと思ったのだが。
芸術を学び、その為に外国に行くというのはあるが、それだけ。
日高環は、芸術に魅せられているかと言えば、そうとも言えない。
内容的は、あまりストーリーらしい感じはなく心情と言うか、魂がどう動くかというもの。
この社会に馴染めない3人の魂がそのメイン。
日高環、北森燔也、辻冬斗。
しかし、それぞれの心の中に深く入る感じもあまりなく、物語に深く入っていけない。
3人とも自家中毒を起こしているような感じ。
環の幻視体験も、その後の生き方に影響があったのか、分からない。
それが、死を親しく感じることにつながるのだろうか。
いまひとつ、自分には馴染めない世界だった。


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