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「十二国記 華胥の幽夢」(再読)  小野不由美

2019年10月15日 | 読書
「十二国記 華胥の幽夢」(再読)  小野不由美  講談社文庫  

5編からなる短編集。
「冬栄」
泰麒は自分が国や驍宗のために何も出来ないと気にしていた。
そんな時、驍宗から漣国へ使節として赴くことになる。
廉麟には泰麒が蓬莱から戻る時に手助けしてもらっていて、そのお礼もあった。
廉王・世卓は、農夫から王になった人物だった。
宮殿でも畑仕事をする廉王は「王は天から賜った役目、農夫は仕事」と言う。

「乗月」
芳国の王・仲鞭を討った恵州候の月渓は、国を掌握はしても、治めることはなかった。
王がいない国は仮の王朝が立つが月渓は仮王にはなっていない。
周りはそれを望むが、月渓は玉座を望んだ訳ではないと拒む。
そして景王・陽子から親書が届くが、宛名は芳国の王、恵候だった。
陽子は恵候が王になっていると思い、王に宛てるが月渓は受け取ろうとしなかった。
親書の内容は祥瓊の処遇についてだった。

「書簡」
十二国では手紙は鳥に銀の粒を与えて覚えさせやり取りする。
雁国大学に入学した楽俊と景王・陽子と手紙のやり取り。
楽俊は半獣としての苦労は陽子には話していないが、陽子はそれを感じて理解していた。

「華胥」
才国には家宝華胥華朶がある。
宝玉でできた桃の枝、それを枕辺に差して眠れば花開き、華胥の夢を見せてくれる。
不思議な花朶は国のあるべき姿を夢の形でみせてくれるのだと。
采王・砥尚は大学をでるも、先王・扶王の悪政を嫌い野に下り、扶王糾弾の声を上げる。
扶王が倒れた後、昇山して王となる。
砥尚は国のあるべき姿を見据え、正道を貫き誠心誠意務める。
それから20年、何故か国は治まらず、国土は荒み民は困窮している。
そして采麟が失道の病に倒れる。
誰もがなぜそうなったのかが分からなかった。

「帰山」
柳国の劉王の居所、芬華宮がある凌雲山が見える街道の峠。
そこで、奏国の次男、利広と風漢と名乗る男が偶然に出会う。
2人は時々顔を合わせていた。
今回は治世120年の柳国が沈みつつあるとの情報を得ての視察だった。






それまでの物語の続きがあり、興味深い内容が多かった。
「華胥」は始めて語られる才国の物語。
正しいと思ってやっている事が、麒麟の失道に繋がると言う、かなり難しいもの。
国を治めると言うのは、闇雲に正しいだけでは成り立たないものなのか。
王気があるからと選ばれても、それで直ぐに何か出来る訳ではない。
補佐する部下の資質もあるだろうし、それまで続いた国の内情もあるのかも知れない。
長く続いた王が道を外すのは何故だろう。
それはきっと王が王である事に飽きた時ではないだろうか。
そうなったら、民の事など頭から消えてしまうのだろう。
国がどれだけ続くのか、そんな観点から書かれたのが、「帰山」。
400年、500年と続く国もある。
尚隆は自分の国が沈むのは、自分がそうしようと思った時だと言う。
沈ませる前に、引退という方法があればいいのに、と思う。

「華胥」に書かれている砥尚の、次の采王と采麟が鈴と出会っている。
それで、いつの頃か分かる。
そんな繋がりが分かるのも面白い。


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