しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「暗黒館の殺人」 綾辻行人 

2006年01月15日 | 読書
1991年9月23日秋分の日、母親の49日の法要に九州熊本に来ていた江南孝明は
法要の席で叔父から聞いた、熊本の奥地にある中村青司が立てたと言う「暗黒館」を目指して車を走らせていた。
しかし、途中で地震に合い、車は車道を外れ木立にぶつかり壊れてしまう。
江南は歩いて「暗黒館」に向かう。
暗黒館は影見湖に浮かんだ島に建つ、外界から隔絶された舘だった。
なんとかボートで島に渡った江南は、何かに導かれる様に近くにあった4階建てほどの塔に登る。
テラスから舘を眺めていた時に、再び地震が起き、江南は塔から落下してしまう。
運よく軽いケガですんだ江南は暗黒館の住人に助けられる。
しかし、江南は落ちたショックで記憶と発声を失い、思い出したのは自分の姓「江南」だけだった。
暗黒館には、9月24日の〈ダリアの日〉の為に、人が集まっていた。
当主・浦登柳士郎の息子、玄児も友人の中也を伴い東京より戻っていた。
〈ダリアの日〉の〈ダリアの宴〉に招かれた中也はそこで、得体の知れない肉を口にする。
その24日の夜、殺人事件が起こる。殺されたのは、使用人で大ゲガをして助かる見込みがなかった蛭山だった。
暗黒館では18年前の9月24日にも殺人事件が起こっていた。
殺されたのは、暗黒館を建てた初代当主・浦登玄遥、92歳。そしてその息子・卓蔵、58歳が同じ日に自殺していた。
その後も続く殺人。嵐で孤立した暗黒館で犯人を探す、玄児。
中也は犯人捜しを手伝いながら、隠された暗黒館の謎と〈ダリアの宴〉に心が騒ぐ。
そして、神か悪魔か、この館で起こっている事を自由な視線で見ている目がある。
  
上下巻、総原稿枚数2500枚の大作。新書版2段組で上巻654頁、下巻646頁との方が分かり易いかな。
綾辻さんの言葉に「無駄に長い訳ではありません」とある様に、殺人犯を捜すだけではなく、色々な謎が織り込まれた作品で、一気に読ませてしまう面白さだった。これだけの長さなので、一気と言うのもなかなか大変だが・・・・・。

何故、もう直ぐ死ぬと思われる人を殺さなければならなかったのかの問題も然る事ながら、一番興味深かったのは、〈ダリア〉の謎。ダリアとは何者で、守るべき教えとは?
少しずつ明らかになっていくのが、楽しかった。
でも、〈ダリアの祝福〉はいりません。
玄児と中也には、萩尾都望さんの『ポーの一族』のエドガーとアランを重ねて見たのだが。
アランは消滅してしまったが、この惨劇を生き延びた中也のその後を、もっと詳しく知りたいと思う。
物語は人魚伝説、吸血鬼伝説、黒魔術も絡み、暗黒館がなぜそうなのか段々明らかにされていく。
登場人物も個性的で、私は美魚と美鳥の双子の姉妹が好きだった。
そして、こんな形で中村青司とまた出会える事になるなんて思ってもいなかったので、驚きだった。
しかし、犯人を探偵役が想像して謎解きをしてくれた後、もう一度犯人が回想として振り返り、真実として読者に明らかになるのだが。
佳境に入って先に進みたい読者としては、その回想はまた戻って繰り返している感じがあって、まどろっこしい。
何故なら、思いも寄らなかった真実が次々と出て来て先が気になっている最中だから。
何から何まで明らかにしなくても、少しは謎のまま残してもいい様な気がするが、それは本格派としては許されない事なのだろうか。と、ちょっと思った。






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