しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「検事の本懐」 柚木裕子 

2022年05月11日 | 読書
「検事の本懐」 柚木裕子  角川文庫   

検事・佐方貞人を主人公にした連作短編集。

第一話 樹を見る
ガレージや車が燃やされるなど17件続いた放火事件。
険悪ムードが漂う捜査本部は、16件目の現場から走り去った人物に似た男を強引に別件逮捕する。
取調を担当することになった新人検事の佐方貞人は「まだ事件は解決していない」と唯一被害者が出た13件目の放火の手口に不審を抱く   
<文庫本裏カバーより>

第二話 罪を押す
54歳の小野辰二郎は微罪の常習犯で何度か刑務所に入っている。
今回は出所した当日に、窃盗で現行犯逮捕される。
本人も認めているが、担当した佐方は不起訴もあり得ると言う。

第三話 恩を返す
佐方の高校の時の同級生、天根弥生から連絡を受ける。
年賀状はやり取りしていたが、12年振りの再会をする。
弥生は結婚を控えていたが、昔の事で強請られていると言う。その相手は警察官だと言う。
佐方は弥生に返さなければならない恩があった。

第四話 拳を握る
政治家が関わる贈収賄事件が大詰めに入り、各検察庁から応援が駆り出される。
佐方もその1人だった。
そして、金の受け渡しに係わったと見られた重要参考人の葛巻が、事情聴取の最中、失踪する。
葛巻の行方を探す為に、家族や親類縁者を読んでの事情聴取が始まる。
佐方は伯父の担当となる。
佐方と組んだ、山口地検の事務官の加東は、苛めとしか思えない家族の事情聴取を見守る。

第五話 本懐を知る
ニュース週刊誌「ピックアップ」の記者、兼先。
次のネタを、14年前弁護士が実刑判決を受けた事件と定める。
弁護士は警察に逮捕されても、示談や起訴猶予になり実刑になることは非常に珍しいと言えた。
その弁護士は佐方陽世、47歳で、業務上横領で懲役2年の実刑判決だった。
しかし佐方陽世は、出所を目前に病死していた。
兼先は関りのあった人物に話を聞くが、その1人が息子の佐方貞人だった。








佐方貞人が主人公だが、周りにいる人々が佐方貞夫と言う人物を言葉にしていて、本人の気持ちはない。
そして、事件を通して、これまでの佐方の生い立ちが語られて行く。
父親が犯罪者と言う、その真相が明らかになる。
事件よりも、佐方がどんな人物なのかを知らせるような短編集。
事件その物は佐方が優秀と言うより、警察の怠慢と思えるものがある。
そして上に立つものの横暴さも。
それでも人情物なので後味は悪くない。
第五話の真相も種明かしの前に気が付く。
社長がもっと考えてお金の対処をしていたら、こんな事にはならなかっただろうに。
佐方貞人が魅力的かと言えば、まだ分からない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「冷たい檻」 井岡瞬  | トップ | 「魔の山」 ジェフリー・デ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事