しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「心神喪失」   ジリアン・ホフマン

2012年05月31日 | 読書
「心神喪失」   ジリアン・ホフマン     上・下巻     ヴィレッジブックス
 PLEA OF INSANITY                吉田利子・訳

「たすけて…おねがい」―朝まだきころ、か細い声でかかってきた緊急通報。
この一本の電話から、マイアミで活躍する若き女性検察官ジュリアの生活は激変した。
それは閑静な住宅街で、母親と幼い三人の子どもに降りかかった悲劇を告げるものだった。
重傷だった父親デヴィッドが犯人として逮捕されたことで、このむごたらしい事件は世の耳目をひき、検察側は花形検察官リックを中心に裁判に臨む。
初の殺人事件で、補佐として大抜擢されたジュリアは、デヴィッドの心の闇に肉迫しようとするが…。
     <文庫本上巻裏カバーより>

「心神喪失につき、無罪を申し立てる」―被告側の思いもよらぬ主張に、ジュリアら検察側は色めきたった。
確かにデヴィッドが犯行当時、心神喪失状態であった可能性はある。
しかし、死刑を求刑されている彼が、罪を逃れんとして狡猾にも病をよそおっているとしたら?
だが、ジュリアはそこに、別のものを見ていた。
この事件は彼女の心の奥底に隠されていたパンドラの箱を開けてしまったのだ―。
遠い昔のおぞましい記憶が甦るたび、ジュリアのデヴィッドへの疑いはぐらついてゆく。
犯罪者とそれを追う者の、真実をめぐる闘いはしだいに加熱してゆくが…。緊迫感あふれるこの裁判の評決は―。
     <文庫本下巻裏カバーより>






妻と3人の子どもを殺した男は心神喪失状態だったのか。
嘘をついて装っているだけなのか。
そんな裁判が中心の物語かと思ったのだが。
確かに裁判が舞台にメインではあるが。
ただそれよりも、ジュリアの心の動きが、物語の全面に出ている。
同じような事件の被害者だったジュリア。
冷静に、事件と向かい合っているとは思えない。
この裁判は、ジュリアがどう考えるかになっていた。
バカラット精神科医が嘘だと判断した行動が、取り上げられることもなかった。
実際にデヴィッド嘘をついていたのかは、はっきりとは書かれていない結末。
ラストにもう少し何かがあるかと思ったが、結局そのままで終わってしまった。

心神喪失だと、人を殺しても無罪。
何年かしたら、病気が治ったとして社会に復帰して、そしてまた人を殺す。
そんなことが実際に起こっている。
病気だったら許されるのか。
過失致死は罰せられるのに。

総合失調症は遺伝もすると言う。
家族に同じ病気の人がいれば発病率は高くなる。
それならば、結婚する時にはそのことを相手に伝えるべきではないだろうか。
もしかしたら、兆候があるかも知れない。
しかし偏見などもあるだろうから、難しいのだろう。

裁判は生きている人のためのもの。
犯罪を起こしても、相手が死んでいれば罪を犯した方が有利になるような気がする。
特に少年や病気の人には。
死んでしまった人は、そこで終わり。
被害者家族は、あきらめるしかないのだろうか。
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