しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「三島屋変調百物語七之続 魂手形」 宮部みゆき

2024年03月25日 | 読書
「三島屋変調百物語七之続 魂手形」 宮部みゆき  角川書店  

「火焔太鼓」
語り手は若い勤番武士。
国許では、火の見櫓に小さな盥ほどの太鼓がぶら下げてある。
その太鼓を火事場に持ち出せば、どんな火事も収まってしまうと言う。
太鼓は一種の神器だったが、大きな秘密があった。
ある時、その太鼓が損なわれ、大変な事が起きる。

「一途の念」
三島屋の富次郎が気に入って通う、団子屋の屋台。
営むのは16歳の娘、おみよだったが、ある日おみよが取り乱して泣き叫ぶ。
怒りとか恨みとか悲しみとか、一つの言葉では言い表せないものを吐き出しながら。
「おっかさんが、死んだんです。やっとぉ、死にました。楽になれるんだぁ」と。
富次郎は白黒の間の事をおみよに話し、おみよは母と家族のことを話しに来る。

「魂手形」 たまてがた
語り手は鯔背な爺様。吉富と名乗る。
話のきっかけに浴衣が出て来るので、と浴衣を着て来る。富次郎の分も持って来ていて、富次郎も浴衣姿になる。
吉富は木賃宿を営んでいたと言う。
「その宿に正真正銘のお化けが泊まった」と言う話だった。
お化けを連れて来たのは七之助。迷える魂を鎮めるのが役目の魂番だった。






今回の3人の語りは、あまり深みがない感じがした。
事実だけを言って、それでどうした、みたいな。
実際にありそうにない話でも、気持ちが納得するものと、それはないだろうとのめり込めないものがある。
「火焔太鼓」はどうやって生身の人間がそうなるのか、そこの所が何も書かれていない。
「一途の念」は、特にラストの種明かしのような事はないだろうと思ってしまう。
小さな子どもの頃ならいざ知らす、大人になって自分の社会が広がれば、母の念だけでは保てないだろう、と。
「魂手形」の方も、迷える魂を救うには人が足りないだろうな、と。
それでも、この解決方法は良かった。

メインの語り手の物語の前後に、富次郎の思いや、絵にする為の試行錯誤が書かれる。
それが以外と長く、全体が間延びしている様に感じてしまう。
おちかのおめでたに関しても、あんなに大騒ぎで細々書かなくてもと思ってしまった。
そして、富次郎がおちかが江戸に出て来た理由をあのようにとらえていた事に驚く。
真相はもっと複雑で全然違うのに。
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