しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「荊の城」 サラ・ウォーターズ 

2006年04月06日 | 読書
19世紀半ばのロンドン。17歳になるスーザン(スウ)・トリンダーは、下町・サザークのラント街でスリを生業にしていた。
スウの母親はスウが赤ん坊の時に人殺しの罪で絞首刑になっていた。
スウは盗品売買や孤児の斡旋をしていた、イッブス親方やサクスビー夫人に大切に育てられていた。
そのスウに、詐欺師・リチャード・リヴァーズ、通称〈紳士〉がある計画を持ちかける。
田舎の城館・ブライア城に伯父と使用人だけで住む、スウと同じ17歳の令嬢・モードと〈紳士〉が結婚して、その財産を奪い取ろうと言うもの。スウの役目はモードの侍女としてその結婚を助ける物だった。
結婚した後は、モードを気狂い病院に閉じ込める計画だった。
侍女としての特訓を受け、スウはブライア城に向かう。
モードは伯父の辞書編集の手伝いや、本を読み聞かせる仕事などで拘束され、自由な楽しみもなく孤独に暮らしていた。
そんなモードとスウは、段々親しくなっていく。モードは〈紳士〉の事を、愛していなかったが、城からの脱出を望んでいた。スウは苦悩しながらも、計画の手伝いをして行く。


先の展開が読めず、次が気になり、どんどん読み進めてしまう面白さだった。
なぜ、スウとモードを取り替えなければならなかったのかが謎だったが、こんな過去があったとは、スウやモードと共に驚かされる。そして、納得。
この話の中で、1番の悪人がこの人だったなんて・・・。これは大きな年月をかけた計画だったのだ。
そして、やはり「血は水よりも濃い」のかと考えずにはいられない。
しかし、サクスビーのスウに再会してからの心の動揺は、心は打算だけ動かない事を教えてくれる。それは、スウにも、モードにも言える事か。
スウ側とモード側と交互に書かれ、二人の心の内がよく分かる。
綿密な計画に人間性が割り込んで、物語をより面白く、複雑に、そして濃いものにしている。
登場人物も、個性的。映画にしてもよさそうだ。

これは「このミス」の2005年海外の1位だが、文庫本のあらすじを読んだ時は、この話が面白いのかと半信半疑だった。あらすじの書き方がよくない?・・でも、ネタばれは困るから、難しいか・・・。
他を読んでないので(ダヴィンチ・コードが4位になっている。これもまだ未読)1位とは断言出来ないが、1位でも相応しい、面白さだった。

ブライアが荊。原題の「Fingersmith」(フィンガースミス)はスリと言う意味。
スリのスーザンがこのスミスを偽名にして、スーザン・スミスとしてブライア城へ赴く。



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