しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ノックス・マシン」  法月綸太郎 

2022年05月04日 | 読書
「ノックス・マシン」  法月綸太郎  角川書店   
4編の中短編集

「ノックス・マシン」  
イギリスの作家ロナルド・ノックスが1929年、アンソロジーの序文として発表した探偵小説のルール集『ノックスの十戒』。
その第五項には「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」とある。
そのことを論文に書いた上海大学のユアン・チンルウは2058年、国家科学技術局の要望を受け、タイムマシンでノックスに会う為に1929年に向かう。
それは、タイムマシンを完成させる為に必要なことだった。

「引き立て役倶楽部の陰謀」
ワトスン博士が会長の『引き立て役倶楽部』は1939年、緊急理事会を開く。
議題は『A・Cの処遇について』。
A・Cの新作『テン・リトル・ニガーズ』には名探偵も、それを補佐する語り手も登場しない。
それは名探偵とその助手のパートナーシップを不動の礎とする『引き立て役倶楽部』への新たな宣戦布告でもあった。
それは、前にもA・Cに『引き立て役倶楽部』は憤慨して、誘拐事件を起こしていたのだ。
その時の作品は『アクロイド殺し』。

「バベルの牢獄」
私の任務は、サイクロプス人の統治下にある惑星ガラテアに潜入し、ガラテア人の独立運動を支援することだった。
しかし、私はサイクロプス人に囚われ、精神分離器にかけられた後、私の意識は出口のない空間に閉じ込められた。
そこに相棒の思念が飛び込んで来た。
相棒とは、サイクロプス人の精神波動走査に対抗する防御手段として作り出された双子の兄弟、鏡像人格だ。
私は途切れ途切れの相棒の思考を読み解き、脱出を模索する。

「論理蒸発―ノックス・マシン2」
2073年、電子図書事業部で、量子化された電子テキストの1部が燃え始める。
精査した結果、熱的攪乱によるが、熱原はエラリー・クイーンの『国名シリーズ』で、最初に燃えたのは『シャム双生児の謎』だった。
原書管理オペレーターのプラティバ・ヒューマヤンは、この本で論文を書いた事があった。
それは消失した「読者への挑戦」について。
やがて、プラティバは、今は都市伝説となっている〈過去に行った男〉ユアン・チンルウとの共通点を思い付く。






エラリー・クイーンやアガサ・クリスティーが好きな法月さんらしい作品。
これはSFということだが、未来から見て、探偵小説がどう捉えられているかの論文のような感じも。
ブラックホールや、量子や電子が出て来て、良く分からない所もあるが。
しかし、その辺りは未来の世界の雰囲気として、あまり考えなかった。
自分もエラリー・クイーンやアガサ・クリスティーが好きでたくさん読んでいるので話には付いていける。
1番分かりやすい「引き立て役倶楽部の陰謀」が面白かった。
ノックス・マシン2は続編で、ユアン・チンルウのその後の物語、でもある。
ユアンはどうなったのだろうと気になっていたので、続きを読めて良かった。
しかし、未来はコンピューターが小説を書く時代になるだろうか。
実際に星新一さんの作風を取り入れた小説が発表されている。読んでいないのだが。
推理小説は面白いから、廃れる事はないと思うが。
しかし時代は驚くほど速く変化している。どうなるだろう。

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