弁理士法人サトー 所長のブログ

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大江戸温泉物語!!

2016-12-26 16:52:27 | 知財関連情報(外国)

クリスマスを挟んだ連休では、ワイドショーで「大江戸温泉物語」のパクリ施設が上海で見つかったと話題になっていました。

さて、このような「パクリ施設」は、何も中国において珍しいものではなく、以前から「ディズニー○○○」のパクリっぽい遊園地など、多種多様な設備が発見されています。そして、中国だけでなく、世界各国でパロディなのかパクリなのかわからない設備は相当数存在しているようです。
今回は比較的大規模な施設であったことと、日帰り温泉という、日本固有のビジネスモデルのパクリ施設であったことから話題になったものと思います。
でも、コンビニや喫茶店などは、日本でもチョコチョコと怪しげなお店を発見できますよね。
有名なものに乗っかってやろうという、知財業界用語で「フリーライド」は、いつの時代もところ構わずあるものです。

さて、今回、この「大江戸温泉物語」をとりあげたのは、以前も話題となった「トレードドレス」の問題といえるからです。
以前、「トレードドレス」を取り上げたのは、「鳥貴族 VS. 鳥次郎」ですね。

「トレードドレス」は、お店の造り、カラースキーム、メニュー構成などのように、一見してどこのお店かを認識できる雰囲気のようなものです。しかし、この「トレードドレス」自体は、商標や不正競争といった知財保護に関する法律では十分に手当てできないのが現状です。

今回の「大江戸温泉物語」は、中国で商標権を取得していないでしょうから、商標権侵害で使用を差し止めることは難しいでしょう。仮に商標権を取得していても、使用主義的な考え方を前提とすると、本家が中国で「大江戸温泉物語」を展開していて、顧客に誤認や混同が生じているといった事実がなければ、本家サイドには「実害はない」としてどこまで主張が認められるか疑問です。

商標権は、商標というマークに蓄積された信用を保護することを目的としていますので、中国で本家によって「大江戸温泉物語」が使用されていないと、中国における信用が蓄積する機会がありませんので、仮に商標権を取得しても、完全な保護を求めるのは難しいでしょう。

自動車やテレビなどの工業製品であれば、商品そのものが流通しますので、これに付された商標も商品とともに流通します。ですから、2次産業の製品であれば、流通する現地で商標権を取得することによって、商標そしてその商標が付された商品の保護を図ることができるでしょう。
しかし、商品の流通が考えられない今回のケースのようなサービスの場合、誤認混同を商標権の効力を認めるための要件とすると、様々な問題が浮かび上がってきます。

日本に限らず、世界中で商品に付する商標を拡張してサービスマークも商標的に位置づけていますが、2次産業の製品を保護する「商標」と3次産業のサービス自体を保護する「サービスマーク」とを同一の法律の類似の考え方で保護するのには無理があるように思えます。これは、日本と中国という問題だけでなく、日本国内においても生じうる問題です。以前のブログで書いた「誤認混同」を侵害の要件とする弊害ですね。

外国の問題ですので、日本と同じような解決策は期待できません。
色々と先方の裁判所等への説得はできるかもしれませんが、法律的な観点からの保護は難しそうです。
今のところ有効な対策がないのが実情です。サービスマークやトレードドレスに関しては、国際的な新たな枠組みが必要なのかもしれません。

単なる感想文になってしまいました。

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