この本は、非常に合理的な(淡白な)作りとなっています。各章ごとにひとつの利益モデルを採り上げて、その利益モデルの基本スキームの説明、勘所についてのディスカッション、当該モデルの具体適用例の紹介等がサクッと書かれています。
その点では、内容的に少々物足りない感じを受けるかもしれません。が、本書は、ひとつひとつのモデルの深掘りよりも、まずは、一口に「利益」といってもその源にはさまざまなバリエーションがあることを示し、読者自身による今後の探究の「先導役」を果たすことを目的としているように思いました。
各章ごとの「宿題」や「課題図書」の提示は、「あとは自分の頭で考えなさい」という著者の想いの現われです。
ちなみに、ここで紹介されている課題図書は、必ずしも経営学やマーケティング関係に限定されておらず、他の人文科学系や数学・天文学関係等の書籍も含まれていて、思索を広げるヒントになりそうです。
あと、この本で気になったコンセプトです。
ひとつは、「早期積み込み方式(フロント・エンド・ローディング)」。
(p95より引用) 最初に詰め込むということだ。最後ではなく、最初の48時間で読めるだけ読む。・・・できるだけたくさん、できるだけ速く読む。・・・プロジェクトの一番初めの段階でこれをやるんだ。
すると、どうなるか。不十分ながら非常に力強い知識の骨格を作ることができる。なぜか。のちに実際のビジネスで遭遇するアイディア、あるいは仮説が、その骨格に組み込まれて時間とともに進化していくからだ。
もうひとつは、「シェア・デターミング・セグメント」です。
(p160より引用) 市場シェアを決定するほどの影響を持つ重要なセグメントのことだ。そこで大きなシェアを獲得できれば、それがそのまま市場全体での大きなシェアへとつながるセグメントだよ」
たとえば、医薬品分野の専門家(専門医)・建築資材分野の建築士等がこのセグメントの代表例です。
(p161より引用) 平均的な顧客に5ドルの宣伝費を使うより、シェア・デターミング・セグメントに1ドル使う方が効き目がある
最近のWebマーケティングの世界では、広い意味でインフルエンサの一類型とも言えます。
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