河合隼雄さんの著作を読むのは久しぶりです。
本書は新潮社の季刊誌の連載を書籍化したものです。
神話を読む際の入門書ですが、学問的な解説ではなく、主としてユング心理学を背景とした河合氏なりの神話の「読み解き方」のヒントが紹介されています。
ただ、本書を読み通しての感想ですが、その国・地方の「神話」の解釈をもってその国・地方の人々の“心理的な特徴”を語るのには少々違和感を抱きました。
その神話が生まれた時代においては、神話の内容とそれを伝承する人々には何らかの心理的係属があったであろうことは想像できますが、その神話が生まれてからそれこそ数百年の年月を隔てた現代人の思考や行動にも、その神話の心理的解釈を関係づけるというのは、あまり説得力を感じないですね。
とはいえ、もちろん、河合さんの想いを伝える大切な言葉にも出会うことができました。
(p23より引用) 私は心理療法家として、苦悩している他の人たちの支えに自分がなる、などということはできないことをよく知っている。その上で、辛抱強く、希望を失わず、ともに苦しんでいると、このようにして、その人を支える存在が生じてくるのである。
私よりも一本の木のほうが、ある人の支えとしてはるかに十分に機能するのである。そして、それはきわめて個人的なものでありながら、どこかで普遍的なものにつながっている。
その道の専門家の至言です。しっかりと覚えとして書き留めておきましょう。
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