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叡智の先導 (方法序説(デカルト))

2006-07-12 00:12:54 | 本と雑誌

Descartes_1  「方法序説」は、デカルトが41歳のときの書です。
 その正確なタイトルは「理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法の話。加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学」だそうです。

 デカルトは、この著作の目的を

(p11より引用) 自分の理性を正しく導くために従うべき万人向けの方法をここで教えることではなく、どのように自分の理性を導こうと努力したかを見せるだけなのである。

と述べています。

 この本は(ラテン語ではなく)フランス語で書かれていることからも、当時の学問に関心を持つ一般人を読み手として意識していたことが窺い知れます。

 そういった読者に対して、デカルトは謙虚な姿勢でこう語ります。

(p11より引用) この書は一つの話として、あるいは、一つの寓話といってもよいが、そういうものとしてだけお見せするのであり、そこには真似てよい手本とともに、従わないほうがよい例も数多くみられるだろう。そのようにお見せしてわたしが期待するのは、この書がだれにも無害で、しかも人によっては有益であり、またすべての人がわたしのこの率直さをよしとしてくれることである。

 また、デカルトは、自分の学問の探究に自信を抱いていました。しかし、それは決して独りよがりの慢心ではありませんでした。

(p83より引用) ところでわたしは、これほどに重要不可欠な学問の探究に全生涯を当てようと企て、わたしの見いだした道が、人生の短さと実験の不足とによって妨げられさえしなければ、その道をたどって間違いなくその学問が発見されるはずだと思われたので、この二つの障害に対して次のこと以上によい策はないと判断した。それは、自分の発見したことがどんなにささやかでも、すべてを忠実に公衆に伝え、すぐれた精神の持ち主がさらに先に進むように促すことだ。

 ひとりの能力を重んじ礼賛するのではなく、全ての人が、それぞれの学究の成果を提供し、協力し合い、叡智を結集して前進することを望んでいたのでした。

(p84より引用) その際、各自がその性向と能力に従い、必要な実験に協力し、知り得たすべてを公衆に伝えるのである。先の者が到達した地点から後の者が始め、こうして多くの人の生涯と業績を合わせて、われわれ全体で、各人が別々になしうるよりもはるかに遠くまで進むことができるようにするのである。

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