ムーミンのアニメは観たことはないのですが、あの柔らかな独特の雰囲気は気になっていました。そんな関心から手に取ってみた本です。
内容は、ムーミンの小説・コミック・絵本などから拾い上げた「フレーズ集」です。
ムーミンやその仲間たちのキャラクターをよく知っている人であれば、もっといろいろな味わい方があるのでしょうが、私の場合はそういった予備知識がほとんどないので、読んでみて ”ちょっと気になったフレーズ” を以下に書き留めてみます。
まずは、ムーミンの言葉から2つ。
(p15より引用) 霧の夜明けでした。みんなは、庭へ駆けだしていきました。八月の、ステキな一日を約束するように、東の空に、バラ色の光がさしはじめていました。
朝日がのぼるのです。新しい門が、開かれます。すばらしい可能性への、扉です。なんだって、やってのけられる新しい一日が、待ってくれています。そう、きみたち、ひとりひとりが、気づきさえしたら!
素直な明るさがいいですね。スパイスの効いた最後のフレーズも印象的です。
そして、もうひとつは、ほんわりと気持ちが和む風景です。
(p36より引用) ひとりぼっちがさびしくて、ムーミントロールは、家中の時計のネジを巻いておいたのです。時間は、わからないので、いろんなふうに合わせておきました。
(うん、これできっと、ひとつぐらいは、合ってるさ)
「ひとつぐらいは、合ってるさ」、ちょっと考えただけで全く役に立たないことに気づくのですが、こういった「ゆるいノリ」にはつい微笑んでしまいます。
つづいて登場するのはムーミンパパ。
(p17より引用) 「この世にも、絶対にたしかなことが、いくつかあるんだよ。たとえば、海を流れている潮流。四季のうつりかわり。朝になれば太陽がのぼること。それと、灯台には、あかりがともっていることだ。」
そして、
(p38より引用) (きっと嵐って、朝日が、そのあとにのぼってくるためだけに、あるんじゃないかなあ)
ムーミンたちに「希望」を与える優しさに溢れた台詞ですね。
さて、ムーミン一家の仲間の代表といえば、やはりスナフキン。ちょっとニヒルで大人びたキャラクタが人気です。
(p140より引用) 「物は、自分の物にしたくなったとたんに、あらゆる面倒が、ふりかかってくるものさ。運んだり番をしたり・・・。ぼくは、なんであろうと、見るだけにしている。立ち去る時には、全部、この頭にしまっていくんだ。そのほうが、かばんを、うんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからねぇ・・・」
束縛されない自然体を愛する、いかにもスナフキンらしい台詞ですね。
そして、最後に紹介するのは、スナフキンの父親 ヨクサルの言葉です。
(p136より引用) 「どこへ行こうが、ぼくは、かまわないよ。ぼくには、どこもみんな、いいところなんだ」
このあたり、親子のDNAを感じます。
さて、本書、私のように、ほとんどムーミンを知らない人でも、何となくムーミンとその仲間たちの和やかな姿が浮かんでくるような、ほのぼのとした内容ですね。
ただ、タイトルの「名言集」というイメージで手に取ると、ちょっとギャップを感じるかもしれません。決して教訓めいた箴言が詰まった本ではありませんから。
ムーミン谷の名言集 (講談社文庫) 価格:¥ 637(税込) 発売日:2014-04-15 |