2010年1月31日放送のNHKスペシャル「無縁社会~“無縁死”3万2千人の衝撃~」を書籍化したものです。内容は、当時の取材メモや関連放送等をもとに大幅に加筆されています。
身元不明でなくなった方は、官報に「行旅死亡人」という呼称で告知されるとのこと。その数は年間32,000人にも上ります。
(p73より引用) 「単身化」、「未婚化」、「少子化」といった家族のあり方の変容が、「無縁社会」の拡大を推し進めている現実が見えてきた。
この現実を、取材班は地道な調査と関係者へのインタビューで掘り下げ、以下の7つの章で詳しく紹介していきます。
- 第一章 追跡「行旅死亡人」----わずか数行まとめられた人生
- 第二章 薄れる家族の絆----「引き取り拒否」の遺体の行方
- 第三章 単身化の時代----「生涯未婚」の急増
- 第四章 社縁が切れた後に----疑似家族に頼る人々①
- 第五章 "おひとりさま"の女性たち----疑似家族に頼る人々②
- 第六章 若い世代に広がる「無縁死」の恐怖----ツイッターでつぶやく将来の不安
- 第七章 絆を取り戻すために----二度の人生を生きた男
本書を読んで衝撃的だったことは、“無縁死”した方々に、頼るべき家族・親戚・縁者が全く無かったわけではないということでした。
(p130より引用) ・・・ふと湧き上がる孤独感。・・・
それでも、ひとりで暮らし続ける高齢者たち。そこには、「迷惑をかけてはいけない」という家族への切ない優しさと、孤独や不安に立ち向かおうとする懸命な姿があった。
兄弟姉妹や独立していった子どもたち、そういった家族にもそれぞれの暮らしがある、「迷惑をかけられない」と思いやり独居に耐える高齢の方々。そして、その結末としての「孤独死」「引き取り拒否」・・・。
さらに、こういった世情は、雇用環境の悪化に伴い30代から40代の世代にも広がりつつあります。
(p236より引用) 「現実社会では、人間関係もあってホンネは言えない。ツイッターの私がホントの私」
「無縁社会が他人事ではない・・・」とツイッターでつぶやく三十代、四十代の人たち。・・・そのやりとりを見ると、「誰かに聞いてほしい、誰かに気づいてほしい」という若い世代の心の叫びのように私たちには感じられた。
先に読んだ藤森克彦氏による「単身急増社会の衝撃」で示された現実もそうですが、デモグラフィックス上近未来に発生する蓋然性が高い課題について、どれだけそれに正対し「我がこと」として捉えるか、「リアイティへの真摯さ」が益々重要になっていると感じます。
冷静に考えると、短期間で今のデモグラフィックスの傾向を変化させることは不可能です。「家族の絆」を復活させると唱えたところで、具体的な良案があるわけではなく、また、それで全てが解決するわけではありません。
「無縁死」の増加は一つの表象であり、より根本的な問題は、将来における「人間の共同体のあり方」でしょう。そこには、「感性」に拠るものもあれば、まさに「社会の仕組み」として構想すべきものもあります。
本書の中で著者の一人である記者も忸怩たる思いで語っていますが、この重い課題は、未だ「解決」に向けて動き出しているとは言えない状況です・・・。
無縁社会 価格:¥ 1,400(税込) 発売日:2010-11-12 |
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