児童心理治療施設「青森おおぞら学園」施設長 鳴海明敏さんが答えて下さいます。
「チャイルドラインあおもり」で子どもの声を電話で受ける活動もされている鳴海さんのお話は、とてもわかりやすく、私たちの疑問や質問にいつもやさしく寄り添ってくださいます。
Q 小学校3年生の息子は人見知りで、一緒に遊びたくても声をかけられず、思っていることもなかなか表現できません。息子の態度や表情で、悩みがありそうなのですが、私も上手に聞き出せません。どのように聞けばよいでしょうか。
A息子さんのことを、とってもよく理解されているお母さんだなあと思いました。その息子さんが、何か悩みを抱えている様子、なんとか手助けしてあげたい、でも、どんな悩みなのか分からないので、何をどうしてあげたらいいか分からない。それで、どのように聞きだせばいいのか、いい方法を知りたいということですが、このご相談を受けて、私が最初に思ったことは、「方法は、教えようと思えば教えられるけど、親は、子どもの成長のチャンスを奪ってはいけない!」ということでした。
困っている人を見たら助けたくなるのは人情ですし、ましてそれが我が子となれば、親の心は穏やかでは居られないと思います。でも、ちょっと待ってください、“いらないお節介、余計なお世話”という言葉もあります。私は、困難や課題の前に立ち尽くすことは、子どもが人として成長するために、とても大きな意味があると思っています。子どもが成長するチャンスだと思っています。
立ち尽くした後で、前に進んで困難や課題にむしゃぶりついていくことを選択するのか、それとも、振り向いて誰かに助けを求めるのか、私はどっちを選んでもいいと思っています。「どちらかに、決断するまでの時間」にこそ意味があると思っています。外側からからは見えませんが、子どもは、この立ち尽くしている間に、目の前に立ちふさがる困難や課題の大きさについていろいろ思いを巡らせながら、自分の力を見極め、自分にはこの課題をクリヤするだけの力があるのかということを、自分一人で見極めようとしているのですつまり、「自分のことを自分で決め、その結果を自分で引き受ける力」を育んでいるのです。まさに、人間として成長している瞬間なのだと思います。
私が子どもの頃、家の近くに水門があって、川から水を取り入れていました。その水門部分の幅(1m~2mくらい)を飛び越せるだろうか、ということが小学校高学年のある時期、私が直面していた課題の一つでした。勇気を出して飛べば、飛び越せそうな気もしますが、失敗して水に落ちてしまいそうな気もします。全力で走れば飛び越せそうな気もします。飛び上がる角度も関係がありそうです。あまり高く飛び出し過ぎれば、距離が伸びずに落ちてしまいそうです。着地したとき足首をくじいたり、膝をすりむいたりはしないだろうか怖かったし、自分には勇気がないのではないか、クラスメイトから臆病者といわれるのではないと心配もしました。
結局、私は飛び越えることにチャレンジしなかったのですが、今でも、この課題を一人で抱え続けた自分を懐かしく思い出します。
子育て四訓では、「少年は、手を離せ、目を離すな」と言っています。「手を離す」とはどういうことでしょうか。「目を離さない」とはどういうことでしょうか。
それぞれの生活の中で、十分時間をかけて見つけて欲しいと思っています。
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