放送作家村上信夫の不思議事件ファイル

Welcome! 放送作家で立教大大学院生の村上信夫のNOTEです。

ドラマプロット「沖縄BOYS」連載♯6

2007年08月13日 08時07分10秒 | Weblog
♯6

 藍パパの一言でトレーニングが始まった。
 まずは、玉を転がすトレーニング。
<氷上のボーリング>ともいわれるカーリング、それをイメージし、砂浜でボーリングの玉を押すように転がすのだ。
 玉を狙うコツは沖縄最強のゲートボールチームのエース、糸井シマさん、85歳が指導。
「玉を見てはいかん。玉のシンを見るのじゃ」
「タマだって、タマよ・・・」
 玉という言葉出る度に、応援団のオカマさんが興奮する。
余談だが……。

 藍パパのコーチは異色を極めた。
 ノブ、マコト、タカシ、ジュン、ユカを集めると合唱を始めさせたのだ。
「この競技のポイントは、チームワークのようだ」
 海に向って、大声で歌う5人。
 馬鹿馬鹿しくなってサボろうとしたジュンを藍パパが一喝した。
「仲間と一緒に、なぜやれない。なぜ、野球で勝てなかったのか。わかるか。自分の一人天狗のせいだ。君は、地獄を見たんだろ。何にもできずクズのまま終わるのか!」
 砂浜に戻ったジュンを暖かく迎えるノブ、マコト、タカシ、ユカ。
5人は海に向かい、再び、大声で歌い始める。
 藍パパは、次のステップにゴルフのパターの訓練をさせた。
「玉を転がす距離感の測り方は同じようなものだろう」
 繰り返すパターのトレーニング。
 正確に・・・。
 距離を伸ばし・・・。
 ユカが真っ先に、40mのパットに成功した。
 続いて、ノブも。
 しかし、依然としてカーリングのコーチがいないのは事実である。
 霜田の決めたタイムリミットまで、あと2週間。

 そして、霜田たちの掲げた3つめの条件もあった。
 設立一ヶ月以内で、一勝することだった。
「一勝どころか、沖縄じゃ、練習の相手もいないよ!」
 遠征することも考えた。
 カーング協会の紹介でヨシカが電話したが、経験者0の沖縄のチームとの練習試合など引き受けてくれるチームはどこにもない。
「沖縄の高校がカーリングですか?指導ならしますが・・・」 
一笑されて終り。

 箒の使い方は、アメリカ空軍の滑走路掃除35年の屋敷丈冶さん、55歳が担当した。カーリングのVTRを見た屋敷さん、航空母艦で特殊偵察機用の滑走路を掃くゴムのモップを練習の道具に選んだ。
「腰ですな。ポイントは。そして、後はただ無心に掃くべし。掃くべし」
 廊下、道路、あちこちでモップをごしごしするノブ、マコト、タカシ、ユカ。
 それを横目に、腹筋を繰り返すジュン。

 砂浜でボーリングのボールをぶつける練習も続いた。
 糸井シマさんが、年下の恋人の喜屋武大治郎さん、73歳を連れてきた。
 喜屋武大治郎さんは、ビリアードシニアクラスの沖縄チャンピオン。
「玉と玉をぶつけ、相手の玉を押し出すのはゲートボールだけじゃないわい。あんたとあんたは性格が悪そうだから、まず、これに専念したらどうじゃ」
「おれ?」
「僕ですか?」
 指さされたマコトとタカシが不満そうに答えた。
「マイダーリンは、沖縄一のビリアードの名人じゃ。しばらく、お前らは私とマイダーリンが特別にコーチする」
「マイダーリン・・・?」
 マコトとタカシは同時に噴出した。
 パターの練習をするユカとノブ。
 玉を転がすマコトとタカシ。

 1、2、1,2 砂浜を走るマコトたち。
 その横で、筋力トレーニングを続けるジュン。

 藍パパが東京のカーリング協会のコーチと話している。
「そうですね。ビリアードとパターは基礎訓練としては、いいと思いますよ。流石ですね。それと・・・」
 知らないなりに藍パパ、5人のために一生懸命に動いている。
 偶然、その電話を聞いたジュンは目頭が熱くなった。

※これは、柳浩太郎、遠藤雄弥、城田優のワタナベプロの若手男優と
大島みづきさん、臼井静さん、加賀美早紀さん、谷啓さんが出演
村上信夫原作・脚本の2005年作品「Hice!cool沖縄BOYS2005」
の原作プロットです。(全12回の連続ドラマ)

犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
グラフ社

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ドラマプロット「沖縄BOYS」♯5

2007年08月13日 08時04分57秒 | Weblog
♯5

 霜田と三浦の出した条件2つ目は、コーチを見つけること。
 しかも、全日本クラスの一流のコーチが条件である。
「コーチなしで国体出場など、沖縄の恥を日本中にさらすようなものですからね」
 南国沖縄に、カーリング経験者はまずいない。
 体育連盟に問い合わせても、カーリングはおろか、スキー、スケートといったウィンタースポーツは一つも参加していない。
「沖縄でカーリングですか・・・」
 電話で相談を受けた東京のカーリング協会のスタッフも、絶句したまま。
「やっぱり無謀なのか」

 だが、思わぬところから応援が現れた。
 コザの歓楽街「中の町社交街」の女性たちが応援をかってでたのだ。
 ジュンは母一人、子一人。歓楽街でスナックを経営する母の手で育てられた。
 ドル安、基地の縮小などで、かつての華やかさを失い、さびれかかった「中の町社交街」の女性たちにとって、ジュンの活躍は、希望だった。
 そのジュンが思わぬ怪我で、野球を断念。
 彼女達の落胆も大きかった。
だが、今、カーリングという新しい目標を見つけ、黙々と不自由な足を動かす姿を見て、歓楽街のホステスやダンサー、オカマさんに、ママさんたちは感動。応援しようと立ち上がったのだった。
その中心は、ジュンと姉弟のように育ったユミ(21)。
ユミを筆頭に派手な女性たちとオカマさんが街中を走りまわり、コーチ探しを行なうことになった。
だが、彼女(?)たちはカーリングを見たこともない。
スポーツ事典を開いて、ノブが説明する。
「カーリング氷上遙か先に向けられた鋭い視線。するすると進むストーン。”Yes, Hurry!!”の掛け声、激しく擦るブラシ、はじけとぶ汗。相手のストーンに勢いよく衝突し自分のストーンだけがハウスに残る。そう、このスポーツが、長野オリンピックで一躍脚光を浴びた”カーリング”です。」
「いいわあ、とびちるオトコの汗って」
「……」

※         ※       ※

 カーリングは1チーム4人で、重さ約20キログラムのストーンを約40メートル先のハウスに向かって相手のチームと交互に投げて得点を競い合うスポーツである。氷上のボーリングのように見えるが、相手のストーンとの駆け引きがあるため、氷上のチェスと呼ばれることも多い。
 ブラシで氷を擦るのは、氷の表面にペブルと呼ばれる無数の氷の粒があり、ブラシで氷を擦ることによりペブルが溶けて、ストーンの滑る距離や曲がり方を調節するのである。
 両チームあわせて16個のストーンをなげおわったら、1エンドがおわり、得点をだす。通常、1試合は8~10エンドでおこなわれる。1エンドごとの得点は、ティーの周りの直径3.66mの円の中にはいったストーンのうち、もっともティーに近い相手側のストーンよりさらにティーに近いストーンの数だけ得点となる。
 相手のチームのストーンをねらって円外におしだすことも可能で、おしだされたストーンは、当然無効となる。

※         ※       ※

 玉を転がす。
 箒で掃く。
 玉をぶつけて玉を出す。
 そんな彼女たちの理解から集められたコーチたちは、ボーリング選手に、米軍基地の滑走路の掃除係、ゲートボールチャンピオンに、そして、宮里藍のパパ ……。
「こんなんで、国体なんか出れるのかよ」
 ジュンが怒鳴った。
「おれは、遊びでやろうと思っているわけじゃねえんだよ」
「まあ、似たようなものよ。ねえ」
「しかし ……」
 それまで黙って話を聞いていた藍パパが、口を開いた。
「一芸はどこか通じるもんだ。本物のコーチが見つかるまで、やってみようじゃないか」

※これは、柳浩太郎、遠藤雄弥、城田優のワタナベプロの若手男優と
大島みづきさん、臼井静さん、加賀美早紀さん、谷啓さんが出演
村上信夫原作・脚本の2005年作品「Hice!cool沖縄BOYS2005」
の原作プロットです。(全12回の連続ドラマ)

犯罪心理学者 花見小路珠緒の不思議事件ファイル (グラフ社ミステリー)
村上 信夫
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