Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.258:記述レポートのコメントに苦慮する日々

2008年01月19日 | teacher Centricな人体実験
最近、今年担当2年目となる熊本大学大学院の「教育ビジネス経営論」のレポート採点とコメントの仕事がピークを迎えております。

授業の概要はこちら
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/master/curriculum/13/syllabus_13.html

筆者が担当しているのは全15回のうち4回だけなのですが、その間、記述式のレポートが3回あります。科目の履修者数はM1の学生全員+科目等履修生で26人ぐらいです。よって26×3=最大78のレポートへのコメントを作成しなくてはなりません。しかし、幸か不幸か私の担当ユニットの前で脱落した受講者もいるため、現在約20人となっています。

20人といえども、色々調べながらコメントを書くため1レポートのコメントを仕上げるのに平均で20~30分はかかります。告白しますと、もう少しあっさり目のコメントにする予定だったのですが、私の前のユニットを担当しているJMAMのS氏が質/量ともに素晴らしいコメントを書いているので、手を抜く訳にはいかなくなっている次第です。

今更ですが、熊本大学側はこういうシチュエーションになることを事前に予想し、あえて組んだオーダーだったのではないかという気さえしています。

例えばこんな会話が熊大内であったのではと・・・

SK氏:「殿、競合のJMAMのSの後では対抗上Sannoの古賀も手は抜けまいという作戦でございます」
KS氏:「SK、オヌシも悪よのぅ。フォッフォッフォッ」

匠IDerの仕事を盗め!
では匠IDerの場合、大量なレポートのコメント回答にどう対処するのでしょうか?実は、ひょんなところから先日、筆者は貴重な添削済みレポートを入手し、その奥義の一端を知ることとなりました。

某国立大学に勤める友人が、放送大学の「人間情報科学とeラーニング」という科目を履修しており、彼から添削後レポートを見せてもらったのです。添削責任者は主任講師であるご存知我等がIDの匠、鈴木克明先生です。

ちなみにこの科目は半端じゃない人数が履修しています。昨年実績では評定した人だけでも381人に達しているそうです。たしか2週間ぐらいのスパンで採点とコメントをしなければいけなかったような事を以前鈴木先生から聞いた記憶があります。たかだか20数人でヘトヘトになっている私などとはレベルが違います。ということで、どうやって鈴木先生はこの添削指導を行ったのだろうかと以前から気になっていました。そして今回友人のレポートを見せてもらい、その奥義を知るに至ったのでした。

個別のメッセージの分量は3~4行とそんなに多くないものの、手書きでした。著名な先生の直筆のコメントというのは、たとえ分量が少なくともWord等で書かれたものと異なり、受講者にとって大変嬉しいものです。私も大学院時代に寺崎昌男先生という大学史の世界で大変著名な先生からの直筆のコメントをいただき「本の著者でしか知らなかったあの先生が私のレポートを読みコメントまでしてくれているのだ」と大変感銘を受けた思い出があります(寺崎先生については下記webサイトを参照のこと)。
http://rihe.hiroshima-u.ac.jp/html/-rireki-terasaki.html

しかし、手書きのコメントは情緒的な満足感は高めてくれるものの、本来の学習目標到達に応じた指導を、単独の講師による直筆や個別のコメントで行おうとすると大変骨の折れる仕事となってしまいます。ましてや400人近くのレポートに対してのコメントを一人の講師が短時間で書くことは不可能です。本学の通信教育事業では、共通の添削基準をもった複数の添削指導講師が担当することで、この問題をクリアしてますが、もし講師が一人しかいなかったらお手上げです。

その問題を解決するため、鈴木先生は「解答に対する総合的な指導・助言」という受講者に共通のペーパーを添付していました。そのペーパーの冒頭には、

「直接お会いすることがない皆さんと講師との貴重なやり取りであることから、「一言」だけの朱書きより、全体的な指導・助言+αという形をとらせてもらいます」

という解説があります。その前書きに続いて出題の意図を説明し、それに伴って解答が有すべき要件(1課題につき3つ程度)を提示しています。そして解答者のレポートで満たされていない要件には×がつくという仕組みになっています。

おそらくWebでの提出/添削であったら、別のやりかたを選択したのかもしれません。そして受講者の人数や添削指導に許された期間によっても異なる指導方略をとられたものと推察します。400人という受講者、限られた時間という制約の中で、きちんとした学習内容の指導と情緒面の満足感を実現する鈴木先生の指導方略はやはり匠の技と実感した次第です。

ちなみに4月からの放送大学の履修申し込みが現在インターネットで始まっています。出願は2月末までです。
http://www.u-air.ac.jp/hp/system/system05.shtml全科生でなく、科目履修生であれば入学金6,000円 、授業料は放送授業の
場合、11,000円とリーズナブルです。鈴木先生の授業以外にもおもしろいテーマの科目がありますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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