Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

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vol.362:越境から学ぶ

2010年06月04日 | 小ネタ
本年度、コガの所属する産業能率大学情報マネジメント学部に荒木淳子先生が着任されました。東京大学の中原先生や本学の長岡先生と一緒に『企業内人材育成入門』を執筆された方と言えば、企業内教育関係者の方にもピンとくるのではないかと思います。荒木先生はキャリアや学習環境デザイン、ワークショップなど様々な分野で高い業績を残しています。折しも情報マネジメント学部ではキャリア教育や初年次~2年次のゼミの再設計を行っいる最中だったので、本当に心強い方が来てくれたと一同喜んでおります。

さて、荒木先生は「越境」というキーワードで職場を越えた社会人の学びについて素晴らしい研究をされています。
職場を越境する社会人学習のための理論的基盤の検討」(経営行動科学第21巻第2号, 2008, 119-128.)

「越境」というのは、普段自分が所属する「職場」やそれ以外の共同体に参加し、そこから学ぶ事を指すのですが、たまたま今週2つの「越境」する学びの場を体験したのでそれについてレポートします。

■芝の家
すでに様々な方が取り上げているので、「ああ、あれね」と思われる方が多いと思います。芝の家とは慶應大学と港区の共同プロジェクトで、民家というかカフェというか、ちょっとはんなりした昭和テイストの空間を作り、そこを学生や地域の人達に開放し、色々な活動を行っている場所です。昼間は常時開放されており、誰でも立ち寄ることができます。場所等の詳細は下記のブログを参照願います。

「芝の家」Webサイト
大学と地域をつなげる、『三田の家』と『芝の家』」(moonlinx Magazine 2009 6)

コガも以前からその存在が気になっていたのですが、先日初めて「芝の家」に行くことができました。その日はたまたま同僚の長岡先生と一緒だったのですんなり入れたのですが、もし、一人だったら地域の住民でも慶應大学の関係者でもない私が入って良いのだろうかと躊躇してしまったかもしれません。しかしそんな心配は杞憂にすぎませんでした。運営スタッフの方がとても暖かく迎えてくれるので、初めての人でも気兼ねなく入れますよ。しかもドリンクは100円でおかわり自由と超良心的です。

何より驚いたのが、学生を中心としたスタッフの皆さんと地域のおばあちゃんが一緒に昼ご飯を作って食べている家の中の風景です。ほんわりとした会話もはずみ、とても心地よい空間を創っていました。

この場所では、様々なイベントやワークショップを開催しているそうなのですが、むしろそういったイベントを実施していない時間にこそ「芝の家」の本質があるように感じました。なんとなく集まって、「じゃあお昼にチャーハンでも作って食べましょ」というノリ。そこは「外」なのに「家庭」のような不思議な空間でした。越境というと、なにか明示的な「境界」があってそれを「意識的に」越えるイメージがあるのですが、この空間にはそもそも「境」がない。だから「越境」という概念すら当てはまらないのかもしれません。

ちょうど芝の家プロジェクトファシリテータをなさっている坂倉先生がいらっしゃって、「ワークショップとデザイン」に関する大変興味深い話しをお聞きしました。最近、事前に計画とかを考えず「あまりデザインしないワークショップ」が模索されているそうです。場があって、たまたま集まってきた人同士で、なんとなく即興的に始まるワークショップ。なるほど、こういった空間にいると、そんな自然発生的なワークショップも実現しそうだなあと実感しました。

コガが授業でワークショップ的な事をやる際は、つい「ここで最初のタスクをいれて」「次に振り返りを10分とって」等、事前にあーだこーだと、悶々と計画をたててしまう傾向があります。もっと場に進行を委ねて、あるいは委ねられるような場のムードを創ることをしていかないとまずいんだなあと思った次第です。

■FMICSあざみ野
2つめは、月1回のペースでFMICS(高等教育問題研究会)が開催しているFMICSあざみ野SD(Staff Development)についてです。この会は主に大学職員の人が集まり、各自がそれぞれ何か1品、ネタを持ち寄り、みんなで議論しますというシンプルな形式で開催されます。終わったら近くの中華料理屋で飲み会というこれまた予定調和的でシンプルな流れです。

参加者は様々な大学に勤める大学職員がメインですが、最近は大学職員以外の色々な人が集まっています。NGOで若者の就業力を育成する学校の設立準備をしている人、大手新聞社の記者、大学の先生、研究者、銀行員、コンサルティングファームの社員などなど。さらに大学職員を目指す現役の大学生の参加も最近増えており、4月の会合では、彼らが書いたエントリーシートを参加者みんなで指導したりとなかなかユニークな活動も行っています。

会場は、東急田園都市線あざみ野駅近くにある横浜市の地区センターの会議室を借りています。区の施設なので会議室料金は格安(1時間480円)です。あまり肩肘はらず色々な大学の職員さんと情報交換することができ、コガも毎回授業改善に役立つヒントをいただいております。

今回コガは、大学職員になりたいという本学の3年生(男子)を連れて参加しました。他大学の大学職員と話す機会を通じて彼なりに色々と得るものがあったようです。普段の学生同士というコミュニティーから、オトナの学びの場に「越境」体験することで成長して欲しいと願っていたので、連れて行った甲斐がありました。

「FMICSあざみ野」は「大学」というものに興味を持つ人であればどなたでも参加できます。日程、参加方法等の詳細は主宰者の出光さんのBlogを参照願います。

■境界を越えることのメリット
eラーニングのメリットの一つが「いつもの場所(職場や自宅)で学習できる」ことであるのに対し、こうした越境型の学習は「異なる場」に物理的に移動すること自体に大きな意味があると考えます。ちょっと面倒かもしれませんが「場所を変えて・・・」の効果は絶大です。普段の場をちょっと離れることで、違った視点から仕事や自己を見つめ直す機会を与えてくれるからです。

ただ、伊勢原の山のふもとに勤務していると、人の集う場所まで出掛けるのはなかなか大変ですね。前述のFMICSの会合も、授業が18:30に終わり、それから急いで会場に向かい、到着したのが20:00でした。そうした不便さがあっても「集う」価値や楽しさがあるから通いつづけるのでしょうねえ。
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