佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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認定医試験 放射線治療の歴史

2008年09月03日 21時06分27秒 | オンタイム
 治療部の若い技師さんが資料を持ってきてくれたので、ようやく、以前紹介した認定医試験問題の解答が出来ました。

 問題15. 放射線の歴史に関して正しい組み合わせはどれか。
 
 a. Bergonie & Tribondeauの法則     … 1933年
 b. サイクロトロンの発明        … 1953年
 c. リニアックでの初めてのがん患者治療 … 1952年
 d. 組織の放射線感受性の分類(Casarett)… 1988年
 e. 重粒子線での初めてのがん患者治療  … 1995年

 a. Bergonie & Tribondeauの法則は、
 1906年のこと。X線発見からほぼ10年で、ここまで発見されていたのですね。この頃には、Kohlの集光照射法(古典的回転照射法)や、Grayによる膀胱癌の術中照射法が報告されています。

 b. サイクロトロンの発明
 1932年、Lawrenceにより開発されています。確か、第二次世界大戦前後に日本にも既にサイクロトロンがあったような気がしましたが…日本における物理学史で重要な事件があったという曖昧な記憶が残っています。。
 物理学史といえば、湯川秀樹が「中間子の存在」の予言に対してノーベル物理学賞を受賞したのが、1949年です。

 c. リニアックでの初めてのがん患者治療
 年表によると、1953年にHammersmith病院で開始とあります。この年、日本では東芝が国産初のテレコバルト装置を完成しています。
 ほぼ正解かな?

 d. 組織の放射線感受性の分類(Casarett)は、
 Casarett G: Concept and criteria of radiologic ageing, (in) Harris RJC ed; Cellular Basis and Aetiology of Late Aomatic Effects of ionizing Radiations. Academic Press, New York, 1963
 によるものなので、×

 e. 重粒子線での初めてのがん患者治療は、
 1973年、TobiasらがBerkeleyにて重イオン粒子線治療開始とあります。ちなみに、この前年にHounsfieldがX線CTを開発しています(僕の生まれた1979年にノーベル医学生理学賞を受賞!)。

 初めて、放射線関係のまとまった年表を見てみました。本当に、この100年あまりは密度の濃い期間だったのだなあ、と実感することが出来ました。

 教えて貰った参考図書は、こちらです。治療部にあると思うので、一度ご覧になってみて下さい。

癌・放射線療法〈2002〉

篠原出版新社

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