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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

MRIの歴史 その3 1990年~

2010年05月05日 21時32分02秒 | ホームページ MRIについて
連休を利用して、MRIの歴史を振り返ってきました。
今回が最後です。

○1992年
Hajnalら 反転回復法を利用したfluid attenuation inversion recovery : FLAIR法を考案
Ogawaら blood oxygen level dependent (BOLD)効果による脳機能MRI(functional MRI)が提案

○1993年
Jonesら keyhole撮像法を提案

○1994年
Basserら MPGを複数の方向からかけて得られたDWIからテンソル解析を行って拡散の異方性を表すパラメータを画像化する方法を発表

○1997年
Patelら single shot fast spin echo (SSFSE)法とhalf Fourier法を組み合わせたhalf Fourier acquisition single shot turbo spin echo(HASTE)法を開発
Sodicksonら simultaneous acquisition of spatial harmonics (SMASH)法を提案
Reinchenbachら 磁化率強調画像(susceptibility-weighted imaging : SWI)によるMR venographyを発表

○1999年
Pipe priodically rotated overlapping parallel lines with enhanced reconstruction (PROPELLER)法を提案
Pruessmannら sensitivity encoding (SENSE)法を発表

○2003年
Tsaoら k-t broad-use linear acquisition speed-up technique (k-t BLAST)を開発

○2004年
Takaharaら short TI inversion recovery-echo planar imaging (STIR-EPI)を用いて全身のDWIを撮像するdiffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression (DWIBS)法を開発

参考文献をもとに、時系列でMRIの歴史を振り返ってみました。MRIはシンプルに考えると、どのように信号を励起させて、k空間に格納していくのかという技術だと思うのですが、工夫次第で様々な生体情報が得られる奥の深い画像診断法です。現在のMRI撮像法の基礎となる技術が生まれていった過程を見ると、今後は一体どうなっていくんだろう?とワクワクします(マニアックかな…?たぶん、そうなんだろうな…)。

ぜひ、以下の文献もご覧下さい。ちなみに、この巻は全ての記事がオススメです。

参考文献:村瀬研也 日独医報 2007(52)336-343

MRIの歴史 その2 1980年代

2010年05月04日 21時27分36秒 | ホームページ MRIについて
MRIの歴史 その2
1980年代の発達を見ていきましょう。

○1980年
MRIによる人体の断層像が発表
Edelsteinら スピンワープ[グラディエントエコー(Gradient echo : GRE)]法が提案。
*傾斜磁場を使ってFID信号を呼び戻す、ということでGradient-recalled echoとも言うようですが、どちらが正しいのかわかりませんでした…

○1982年
Crooksら マルチスライス法の開発

○1984年
Dixon 共鳴周波数の差に伴う位相のズレを利用して水と脂肪を分離して画像化する方法を提案

○1985年
Haaseら 化学シフトを利用して水又は脂肪の信号強度を抑制するchemical shift selective (CHESS)法を考案
Bydderら 反復回復時間(inversion time : TI)を利用したshort TI inversion recovery : STIR法を提案

○1986年
Henningら 高速スピンエコー法(fast spin echo : FSE)の基礎となるrapid acquisition with relaxation enhancement (RARE)法を開発
:多数の180度パルスを用いて高速にSE像を撮像
Frahmら フリップ角を小さくしたGRE法 fast low angle shot (FLASH)法を発表
Oppeltら fast imaging with steady state free precession (true FISP)法 (=balanced-SSFP)を提案
Ahnら スパイラルスキャンを提案
Dumoulinら 位相法による血管撮像法(phase contrast magnetic resonance angiography : PC MRA)を提案

○1988年
Laubら 飛行時間差を用いた血管撮像法(time of flight magnetic resonance angiography : TOF-MRA)を提案

 1980年代は、グラディエントエコー(GRE)系の撮像法が提案され、一気にMRI撮像技術が進歩していったのがわかります。GRE系の技術、特に横磁化成分をスポイルするFLASHやSPGRなどが出てきたことで、派生技術としてTOF-MRAも出現しました。TOF-MRAについては、グラディエントエコーの信号強度を求める式から理論的にMRAが撮れる理由を導き出した面白い論文があるのですが、それはまたいつか。
 そしてFLASH/SPGRでスポイルする横磁化成分も使ってやろうということで、true FISPも提案されるようになりました(この頃は機械が追いついていなかったようですが…)。true FISPってこんなに前からあったんですね…同様に横磁化成分を利用するCISSやDESSについても、いずれ。
 また、1986年には高速スピンエコーのRARE法の開発の他に、画期的な技術が複数発表されています。この年は何かあったのかな…?
 
 重要なMRI撮像技術の一つである、脂肪抑制法もこのころに様々な方法が提案されるようになりました。比較的新しいSPIR法やSPAIR法、IDEALなどを理解するために、もう一度見直しておきたい理論です。
 
 それでは次回は最後。1990年~200年代前半です。

参考文献:村瀬研也 日独医報 2007(52)336-343

MRIの歴史 その1 1946年~1977年

2010年05月01日 22時34分25秒 | ホームページ MRIについて
MRIの歴史、第1回。まずは、MRI(核磁気共鳴画像)の基礎となるNMR(核磁気共鳴現象)の発見から、NMR現象を用いて、画像を取得することができるようになるまでです。

○1946年 
スタンフォード大学Bloch(水の陽子の核磁気誘導信号を観測)
ハーバード大学Purcell(固体パラフィンの陽子のNMR信号を観測)
らにより、NMR現象が発見される
→1952年にノーベル物理学賞
”Blochの方程式”

○1950年
イリノイ大学のHahnにより
自由誘導減衰(free induction decay:FID)が観測
二つの90度パルスによるエコーを観測
Dickinsonにより
化学シフトが発見

○1951年
Gabillard
静磁場の不均一性がNMR線の形に反映されることを発見
→勾配磁場を用いた位置情報取得の原理に応用

○1954年
ハーバード大学Carrら
90度、180度パルスによりSpin echoを観測

○1959年
カリフォルニア大学のSinger
NMR現象が血流測定に応用される

○1965年
Stejskalら motion probing gradient : MPGを加えて水の拡散係数を計測する方法を発表

○1970年
Damadianにより、ラットの腫瘍組織に含まれる水の陽子の緩和時間が正常と比較して延長していることが発見される

○1972年
ニューヨーク州立大学 Damadian
静磁場を任意に変形させてNMR信号を測定する磁場焦点法の特許申請

●1973年 HounsfieldによりX線CT の開発●

○1973年
Lauterbur 均一な静磁場と線形な磁場勾配を用いて二次元の核磁化分布を求める方法を開発

○1974年
Garroway 励起用のラジオ波と勾配磁場を同時に加えて、特定周波数に対応する部分を断面として取り出す、選択励起法を開発

○1975年
Kumar 位相エンコード、周波数エンコードによりk空間を充填し、Fourier逆変換を用いて画像再構成を行う方法を提案

○1977年
Mansfield エコープラナー(EPI)法を発表

次回は僕の生まれた1979年から、じゃなくて初めて人体のMR断層画像が撮像された1980年からです。

参考文献:村瀬研也 日独医報 2007(52)336-343